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展覧会レビュー:MOA美術館「岩佐又兵衛 極彩色ワールド 重文"浄瑠璃物語絵巻"」

前から行きたかったMOA美術館に初めて行きました。そこでの美術館全体や展覧会の感想を書きます(約3,200文字、写真約50枚)。

結論から言うと、最高でした!おすすめ度は★5です。
1)ロケーションが気持ち良くリフレッシュできる。2)展示方法のこだわりが尋常でない。3)作品のキュレーションもよく今までにない示唆を得られる。4)人も多くないため、ストレスフリー
MOA美術館に行くために熱海に行っても違和感ないと思いました!

アクセス

MOA美術館へは熱海駅からバスか徒歩で行くことができます。
私は、行きは徒歩、帰りはバスで行きました。
結論から言うと、往復ともバスを使った方がいいです。徒歩で約20分の距離ですが、坂道や階段が急なため、美術館に着く前にかなり疲れました。
バスは、熱海駅の左手にあるバスロータリーの8番乗り場から出ています。

バス案内所でMOA美術館のチケットが1,300円で買えるので必ず立ち寄るべし
徒歩では、ものすごく急な階段を登ることになります。後悔しても後の祭り
迷わないように看板が出ているのは親切
やっと入り口へ着きました…(ヘトヘト

MOA美術館について

何よりロケーション、建築が素晴らしいと思いました。きっと未就学児でもワクワクすると思います。
また、2017年に杉本博司がリニューアルを監修したのですが、彼のイズムを随所に感じると同時に、それがMOA美術館に見事にマッチしていました。
ここから見る海がまさに杉本博司の作品そのものでしたし、展示スペースで随所のこだわりに圧倒されました。ここまで展示の仕方にこだわっている美術館は中々ないです。まさに展示スペースそのものが静かなアートでした。

ちなみに、MOA美術館のMOAとは、「Mokichi Okada Association」の略称です。岡田茂吉とは新興宗教の「世界救世教」の教祖で、この美術館の元の名前は「救世熱海美術館」だったそうです。
私はてっきり「Modern Art of Atami」なのかな、と勘違いしていました。
世界救世教について調べてみると、紆余曲折あるようです。しかし、MOA美術館を設立、運営してくれることに感謝しかないです。

岡田茂吉の説明
美術館へ向かうエレベーター。設計・施工は竹中工務店と鹿島建設
円形ホールが見えてくると胸が高鳴ります
万華鏡作家の依田満・百合子夫妻による世界最大級の万華鏡が投影
寝そべるためのベンチ置かれており、自由に鑑賞が可能
ここは全員が自然と撮影します
エレベーターを抜けると、ヘンリー・ムア「王と王妃」
自然と美術館が見事にマッチ。ムアスクエアの草原ではコロコロ転がる子供もいて最高
私も写真撮影
アントワーヌ・ブールデル「アポロンと瞑想 走りよる詩神たち」
杉本博司と室瀬和美「片身替漆扉」。入り口の扉も作品です
入ってすぐ杉本博司デザインのソファ。部屋全体がミリ単位で幾何学的に設置されており美しい
ソファの脚にはガラスが置かれている。吉岡徳仁の作品かな?と思ったが無関係のよう
まさにここから見る景色は、杉本博司の”海”そのもの
階段ホール。窓に嵌められた木曽檜の角材が杉本博司らしさを感じる
能楽堂。実際に見学できる
「黄金の茶室」。桃山時代の文献資料に基づき設計されたらしい
「茶の庭」。見逃しそうだが、必ず見たほうがいい場所です
丁寧に手入れされていて本気度が伝わります。お金かかってそう
お茶や蕎麦などをいただけます
シャッタースピード優先モードで撮影

「岩佐又兵衛 極彩色ワールド 重文"浄瑠璃物語絵巻"」

重要文化財の浄瑠璃物語絵巻(第1〜12巻)がメインに展示されています。約400年前の作品と思えない美しい状態で保存されているのは驚きでした。
絵巻の特徴として、本とは違い、場面が徐々に切り替わります。コマ割りがないだけで、日本文化である漫画の起源がここにあると感じました。
描き込みが凄まじく、日本人の細部へのこだわりを再認識しました。
絵巻は両手を使ってくるくる回しながら徐々にページを「めくります」。そのため、壁に掛けることはできないし、すぐに見たいページも見られない。見れる人が限られるメディアである絵巻を使って、このような大作を描き切った奥ゆかしさが日本人らしいな、とも思いました。

絵巻を繰ることができるスペースもあります

杉本博司のこだわりを展示方法の随所に感じました。反射が少ないガラス、照明の使い方、均等な線を意識した作品の配置、作品の"間"。現代アートで使われる合理的なホワイトボックスとは違った、ここまで繊細な展示スペースに出会ったのは、私は初めてかもしれません。

杉本博司のこだわる反射を抑えたガラス。背後に黒漆喰を使うことでガラスの存在感を消している

なお、苦言として、1)キャプションに出品目録と連動した番号をキャプションに振ってほしい。探す手間が省けます。2)展覧会名にある「重文」は重要文化財の略ですが、普通の人は分かりません。
苦言ではないですが、紅白梅図屏風の展示はなかったです(毎年2月ごろに展示)。国宝や重要文化財は法律で展示期間が制限されることは、東京国立近代美術館の「重要文化財展」で学んだため理解がスムーズでした。

岩佐貞雲「源氏物語屏風(若紫・夕顔・野分) 」。畳(!)の上に設置されています
作り込みが丁寧。1巻につき約12メートルもよく描けるな、と感心します
展示室の風景。ガラスがクリアで見やすい
文字もすごい。間違わずよく書けると、見ているこちらが緊張します
着物や階段などの書き込みの精緻さ
(国宝)野々村仁清「色絵藤花文茶壺」。明暗の表現、空間演出に感動
コミカルなおじさんが面白い。セクハラ、パワハラの横行
金持ちだけでなく庶民の姿も描いており、当時の風俗がわかる。文化的価値が高い
雨を線で表すのが日本的と本で読んだことがあります
展示室の風景。中央から見て屏風が均等に3点見えます
みんなが今にも動き出しそう。まるでジブリ!
岩佐又兵衛勝以「柿本人麿・紀貫之図」。ゆるかわ
「阿弥陀如来及両脇侍坐像」。若干俯いているのが恭しく感じます
空間の間は黒で仕切ってシャープに明暗をつけている点にもこだわりを感じます
横山大観「春雨」。雨をもやもやしたタッチで表現している
「すごい」と声が漏れた杉本博司の部屋。照明、世界感に怖いほどのこだわりを感じる
杉本博司「海景 熱海」
板谷波山「彩磁椿花香炉」。置き方で見方がずいぶん変わる。ちんまりしていて可愛い
板谷波山「彩磁瑞花祥鳳紋様花瓶」。同じ作者と思えないほど威風堂々としている

今日の美術館飯

美術館の中には5つ飲食店があります。その中でも一番ライトな「ザカフェ」で休憩しました。他にトシ・ヨロイヅカのカフェなどもありました。

ザ カフェ - 熱海だいだいシフォンケーキ (¥500)、カフェラテ (ホット) (¥430)
「ザ カフェ」の風景。景色が最高過ぎる

まとめ

いかがでしたでしょうか?この美術館はロケーション、建築、美意識の徹底した館内など「こだわり」に尽きると思いました。景色も最高に良いことから非日常感もあってリフレッシュできること間違いなしです。熱海に来たらMOA美術館はマスト。MOA美術館のために熱海に来ても違和感なしです!

補足

展覧会名:岩佐又兵衛 極彩色ワールド 重文「浄瑠璃物語絵巻」
場所:MOA美術館
おすすめ度:★★★★★
会話できる度:★★★★☆
ベビーカー:ー
会期:2023.03.17(金) - 2023.05.23(火)
アクセス:熱海駅から徒歩約20分(バス約7分)
入場料(一般):1,600円(バス乗り場で1,300円で購入可)
事前予約:不要
展覧所要時間:2〜3時間
混み具合:休日でもほぼストレスフリー
展覧撮影:おそらく1点を除いて撮影可能
URL:https://www.moaart.or.jp/events/joruri2023/

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