展覧会レポ:日本橋髙島屋S.C.「高野光正コレクション 発見された日本の風景」
【約3,100文字、写真約10枚】
日本橋髙島屋8階ホールで開催されている展覧会「発見された日本の風景」に行ってきました。その感想を書きます。
結論から言うと、(全く期待していなかった分)予想外に学びが多く、満足度は高かったです。約100年前の日本の風景は当時の外国人が見ても、今の私たちが見ても興味深い風景ばかりでした。展覧会全体を通して、メッセージがシンプルに伝わってきた点も良かったです。
9月6日(水)から25日(月)まで髙島屋 大阪で巡回予定だそうです。関西にお住まいでの方は是非。
▶︎「高野光正コレクション 発見された日本の風景」
高野光正氏とはどのような方か調べました。
会場外に「映像コーナー」(約30分)がありました。その中で、高野光正氏が今回の展覧会を「外国人がどう日本を見たか」「旅を感じる」キュレーションにしてほしいと指示した、とありました。
彼の指示通り、ストーリー(キャプション)や全体のトーンが統一されていたため、メッセージがシンプルに伝わってきました。そのため、学びも多く、(何も期待していなかった分)満足感が高い結果となりました。
明治時代後期(1900年前後)、海外から多くの画家が来日し、各地を旅しました。当時はカラー写真がなかったため、彼らは各地で絵を描いたり、日本人が描いた水彩画を祖国に持ち帰りました。高野光正氏はそのような絵画を中心に買い戻す(里帰りさせる)ことに尽力しました。
「里帰り」させた使命感は殊勝ですが、費用の出所が気になりました。高野光正氏の父親はリコーの時計部門の前身であった高野精密工業のオーナーだった(参照元)ことから、高野光正氏は資産家だったと勝手に推測。
この展覧会は「里帰り」させた約700点のうち、115点が展示されています。壁には「子どもガイド」として、作品の背景や見どころなど、ルビ付きで分かりやすい解説が貼られていました(大人にとっても助かりました)。
どの作品も写実的で美しかったことはもちろん、「作者は何を思って描いたんだろう」とか「たった100年前の日本はこんな風俗だったんだ」と考えることが多かったです。
特に、外国人は日本の名所(富士山、日光など)だけでなく、一般市民の生活風景も多く描きました。日本人は先入観をもって日本の風景を描きますが、外国人にそれがありません。絵を見ていると、彼らは日本のどこに感動したのか、「youは何しに日本へ」的な発見が多くありました。例えば、着物や草鞋などのファッション、遊び、宗教観、洗濯、田植えなどです。
なかでも、外国人が日本を見たとき、子供が赤ちゃんをおんぶして世話する姿(イギリスでは乳母が世話をする。日本の子供が赤ちゃんの世話をできるスキルの高さ)や、身分関係なく花を愛でる国民性(イギリスでイングリッシュガーデンを楽しむのは上級国民だけ)が意外だったようです。描かれた絵から、彼らがそれらに驚いたことがよく伝わってきました。
当時から約100年経った現在、私が見ても同じく新鮮でした。描かれている人物が全員着物であることすら隔世の感がありました。高野光正氏が作品を買い戻したことは、現代の私たちにとって価値があると感じました。
偶然にも、その時に読んでいた『美のジャポニスム』(三井 秀樹)を連想する絵が多く、私にとっては想定以上に学びがあり、楽しめました。
なお、英語のキャプションも可能な限り付けるべきだと思いました。1)展覧会のテーマが日本人だけでなく外国人にとっても有益なこと、2)百貨店はインバウンド売上比率も高まっているなか、買い物だけでなく文化の発信も積極的に担った方がいいと思ったためです。
▶︎まとめ
いかがだったでしょうか?「髙島屋が細々とやっている年配向けの展示だろう」と全く期待していませんでしたが、想定以上に学びがあり、キュレーションが良かったことで満足感もありました。この展覧会のために作られた動画も理解の助けになりました(ありがとうございます)。
▶︎おまけ(髙島屋 日本橋について)
髙島屋 日本橋店のポジションを確認しました。国内百貨店の中では売上高5位にランクインしており、日本を代表する館と言えそうです。ファッションフロアを見るとガラガラでしたが、普通では見えない外商売上が大きく稼いでいるのでしょう。10位内に髙島屋が4つもランクインしています。
(参考:国内百貨店 館別 2022年度売上高TOP10)
1.伊勢丹新宿本店:3億2千万円
2.阪急本店(大阪):2億6千万円
3.西武池袋本店:1億7千万円
4.JR名古屋髙島屋:1億7千万円
5.髙島屋 日本橋:1億4千万円
6.三越日本橋本店:1億3千万円
7.髙島屋 大阪:1億3千万円
8.髙島屋 横浜:1億3千万円
9.松坂屋 名古屋:1億1千万円
10.あべのハルカス近鉄本店:1億1千万円
その結果、企業別(百貨店のみ対象)では髙島屋がぶっちぎりで売上高1位でした。近年、髙島屋はSC化も進めています。時代遅れの百貨店形態の構造改革をリードできるか、少し期待しています。
ただし、構造的にどうがんばっても利益が1桁台しか出ない(外部環境が悪いとすぐに赤字)業態なので、私は百貨店で働きたいとは思いません…。
(参考:国内百貨店 企業別 2022年度売上高TOP5)
1.髙島屋:7,611億円
2.セブン&i(そごう・西武など百貨店のみ):4,469億円
3.三越伊勢丹HD:4,183億円
4.J.フロントリテイリング(大丸、松坂屋など百貨店のみ):3,314億円
5.H2Oリテイリング(阪急、阪神など百貨店のみ):1,314億円