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登山ブランドができるまで!MAMMUTの歴史を深掘りしてみた
「皆さんは普段、登山に出かけるとき、どこのメーカーのザックを背負って山に登っていますか?、またどこのメーカーの靴と共に山を歩いているでしょうか?」
山道具を選ぶ理由は、ただ「かっこいい」という理由かもしれません。
しかし皆さんが持っているその道具の一つ一つは、僕たちが気づかないほどの深い歴史や創業者の情熱が込められています。
この記事では、皆さんが普段何気なく使っている登山ブランドがどのようなストーリーを経て、今のように多くの人に愛されるブランドに成長してきたのか、その背景を紐解きながら紹介していきたいと思います。
この記事を読み終わる頃には、きっとあなたの登山道具に対する愛情が深まり、「これ、すごいんだよ!」と人に自慢したくなると思います。その道具がどれだけ特別で、素晴らしいものなのか、きっとその魅力に気づくはずです。
ということで第一回の今回は、山好きなら知らないはずはない。
「MAMMUT」の歴史を紐解いていきたいと思います。
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マムートの歴史を紐解いていくその前に、皆さんはMAMMUTの製品を愛用しているでしょうか。
僕は、レインウエアをMAMMUTの商品を愛用しています。
このレインウェアとの出会いは、僕が大学生の頃。当時ワンダーフォーゲル部として活動を始めたころで、何かかっこいい登山道具が欲しい!と探していました。
大学生でお金もない中、山には絶対持っていくもので、登山用品でないといけない(Tシャツやザックのように街でも使っているもと代替出来ない)ものと考えている中で目をつけたのがレインウェアでした。
レインウェアというとそんなに出番はないのでは?と思われる人もいるかと思いますが、当時の僕は雨の日以外でも、早朝のひんやりした空気の中での登山や、強風の日の暴風の時などの防寒着としても着用していました。
もうこのレインウェアと出会って8年が経ちますが、今も日帰り登山、お泊り登山、どの登山にも持っていく相棒のような存在になっています。
#皆さんもお気に入りのMAMMUT製品があったら教えてください
話が脱線しましたが、それではMAMMUTの歴史を紐解いていきましょう!
マムートの創業と歴史
MAMMUT(マムート)は、1862年にスイス・ディンティコンという村で誕生しました。
創業者はカスパー・タナーというスイス人の男性です。
マムートが創業した1862年(19世紀後半)というのはイギリスで産業革命が進展し、ヨーロッパ各国では鉄道や工業化が進み、都市の発展が加速。スイスも工業化が進み、職人技術の向上が求められる時代でした。
また、ヨーロッパアルプス登山が人気を集め、「アルピニズム」という考え方が世の中に浸透し、イギリスの登山家エドワード・ウィンパーがマッターホルンに初登頂するなど、多くの登山家がスイスに訪れてきていた時代でした。
そんな中、カスパー・タナーはドイツを中心に3年間のロープ製作実習を経て、ロープ製造の技術を活かして農業用ロープの製造会社を立ち上げました。これがマムートの始まりとなります。
創業当時のロープは登山専用ではなく、農業用の荷物の運搬などにも使われるものでした。しかし、登山が盛んになるにつれクライミング用ロープの需要が高まっていきます。そこで元々製造していた農業用ロープがとても頑丈であった事から登山家の中で評判になります。登山の発展とともに、ロープを使うシーンが増えてゆき、評判が評判を呼んで、ついにブランド名にもなっている「マムート」と名のついたロープが発売されます。それがマムートザイルです。
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登山用のロープメーカとして成長
1950年代に入ると、登山用ロープの素材に革新が起こります。
それまで主流だった麻のロープに代わり、ナイロン製のロープの登場したのです。
何か革新的だったかというと、とにかく軽量かつ強度が高いこと。
特に長距離を移動するアルピニストにとって、装備の軽量化は大きなメリットになりますし、何よりロープは命を預けるものなので、強度が圧倒的に向上することで、登山やクライミングでの安全性が格段に向上しました。
そのほかにも、耐水性(耐湿性)が向上し、悪天候でも安定した性能を発揮できるようになりましたし、伸縮性(衝撃吸収性)が向上したことにより、適度な弾力でクライマーが落下した際の衝撃を吸収できることで落下時の負担が大幅に低減しました。
このナイロンロープはヨーロッパの登山界で急速に普及し、マムートはこの新技術を積極的に採用したことで数多くの登山家がマムートのロープを使用するようになりました。
1960年代から1970年代にかけて、マムートはさらに進化を遂げます。
UIAA(国際山岳連盟)の安全基準を満たす高性能なクライミングロープを開発し、アルプスのみではなく、ヒマラヤ登山でも広く使われるようになりました。
この時期に「マムートザイル」というブランド名が確立され、ロープメーカーとしての地位を確固たるものになりました。
アウトドアブランドとしての拡大
1980年代以降には、マムートはロープ製造だけでなく、登山用ウェアやギアの開発にも乗り出します。特に、1990年代にはゴアテックスを採用したシェルジャケットが登場し、耐久性と防水性に優れた製品が多くの登山家に支持されるようになりました。さらに、1995年には「Extreme」シリーズ(マムートの最高峰コレクション)を発表し、アルピニスト向けのウェアラインを強化しました。
この頃からマムートはスイス国内にとどまらず、ヨーロッパ全土や北米、アジア市場へと進出。2000年代には日本でも本格的に展開され、皆さんの目につくところにマムートの名前が広がっていき、多くの登山愛好家に知られるブランドとなっていきました。皆さんがマムートのことを知ったのはこの時代からだと思います。
2010年代以降は、最新技術を活用しながら、登山ギアの進化を続けていて、特に、軽量化(UL:ウルトラライト)を意識した製品開発が進み、より機能的で快適なギアがさまざま登場しています。
マムートのWE CARE とは
また、マムートは持続可能な社会と環境の実現を目指す取り組みとして「WE CARE」というコンセプトを掲げています。
WE CAREとは4つのコンセプトの活動の頭文字から成り立っています。
①Clean Production(クリーン・プロダクション)
②Animal Welfare(アニマル・ウェルフェア)
③Reduced Footprint(リデュースド・フットプリント)
④Ethical Production(エシカル・プロダクション)
①Clean Production(クリーン・プロダクション)とは
有害な化学物質の使用を削減し、環境に優しい製品の製造を推進していくということです。
マムートの製品繊維素材のうち60〜70%はブルーサイン・プロダクトになります。衣料品は従来、その製造過程でたくさんの薬品が使われてきました。
しかしマムートの製品は化学薬品をできる限り使用しない製品を作る方針で製品を設計しています。
②Animal Welfare(アニマル・ウェルフェア)とは
動物福祉に配慮し、倫理的に調達された動物由来の素材のみを使用するということです。
雪山や冬の普段の生活でも欠かせないダウンなんかは、鳥の羽が使用されているので、ダウンの製造過程で鳥たちに酷い扱いをしていないかなど、責任のある接し方で製造しています。
③Reduced Footprint(リデュースド・フットプリント)とは
温室効果ガス削減の取り組みです。どうしても製品の製造には温室効果ガスは発生してしまうものですが、豊かな自然を守るために、環境に配慮した製品を製造してくという方針です。
④Ethical Production(エシカル・プロダクション)とは
労働環境の改善や公正な労働条件の確保への取り組みになります。
マムートの製品は全て自社で製造しているわけではなく他社の工場でも製造しています。製造過程が安全で働く人々に対して企業として責任を果たしていくという方針になります。
マムートのブランドロゴの変遷(歴史)
MAMMUT」は、その歴史とともにロゴデザインも進化してきました。
創業当時はブランドロゴというものはなく、ブランドロゴが登場したのは1980年代でした。
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今の赤と黒のデザインではなく黒と白のシンプルなシルエットでマンモスが円形の枠の中に配置され、ブランド名「MAMMUT」が文字として添えられるデザインでした。
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2000年頃からはロゴデザインがより洗練され、皆さんがよく見たことのある赤と黒を基調としたマンモスが採用されます。
よく見るとマンモスの色が変わっただけではなく、マンモスが向いている向きが左向きから右向きに変わっています。
これは、企業名である「MAMUUT」は右から左に読むのに対して、マンモスも右向きにすることで、「未来に向かって進む」という意味を込めて向きを変えたと言われています。
最後に
今回の記事では、登山ブランド「マムート」について紹介しました。
この記事を書く前はマムートのことを全然知らなく、「赤と黒のマンモスののブランドでしょ?」という認識しかありませんでした。ですが、調べれば調べるほどマムートのことが好きになり、これまで使っていた製品に対する愛着も深まったと感じます。
現在愛用しているのはレインウェアですが、今後ロープを使ったクライミングをする際には、マムートのロープを使おうと思います。