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失うことと得ること
(プライバシー保護のため、事実を変えて記事にしています)
先日の陪席(外来診療時、医師の隣についてカルテの入力補助等をする仕事)の時の出来事です。
悪性腫瘍の維持療法中、しばらく受診が途絶えていた、ある患者さん。
受付の際の表情が冴えない事に相談担当の認定看護師さんが気付き、「診察の時は同席するので呼んで下さいねー」と私に伝えて下さいました。
その患者さんの診察時。
私から見ても表情が硬く、うつむきがちで、先生からの問いの返事も途切れ途切れ・・という感じです。
そして「実は辛いことがあって」と。ぽつりぽつりと話されました。
友人が自死され、
連絡が取れないのを心配して訪ねていった際に
その姿を見てしまったとのこと。
自分は治療のことでいっぱいいっぱいで
友人が苦しんでいることに気付かなかった。
自分がこんな状態でなければ、何か出来ることがあったのではと。
そのお話しを聞いたとき、何故か反射的に涙が出て
とっさにティッシュを取りに行くように見せて席を外し、
深呼吸して気持ちを落ち着けてから診察室に戻りました。
おかれた環境も経験も大きく違うけれど
今も残る私の心の痛みと大きく共鳴したのだと思います。
「それは辛かったですね、でもね、あなたは悪くない、
自分を責めないで・・」
「ひとまず、私(認定看護師さん)とお話しして、気持ちが落ち着いたらもう一回先生と今後の治療についてお話ししましょうか」と、診察は一旦保留。
1時間後に戻ってきた患者さんの顔は、泣きはらした目をしていたけれど、すこしさっぱりとした、視線を上げた表情になっていました。
プロってすごいなあ。
病が辛いんじゃない。
病によって失われる何かが辛い。
そしてたぶん、失っていると気付かないまま失っていることもある。
病によって得た物もたくさんあると語られることも多いし、
自分でもそう思うけれど、
それは、そうとでも思っていなければやってられないから。