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【トクホ・機能性表示における問題点①】 健康情報におけるエビデンスとは?
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この記事でわかること【一般消費者・食品事業者・機能性食品研究者向け】
1. エビデンスとは?
2. エビデンスレベルと信頼性
3. エビデンスの評価に用いられる実験の種類
1・エビデンスとは?
トクホや機能性表示食品が利用される一方で、”トクホや機能性表示食品はエビデンスが充分ではない”という批判を受けることがしばしばです。
近頃は色々な業界でこのエビデンスという言葉が使われるようになりました。例えば、「今日の会議についてエビデンスが欲しい」とは「議事録」を残しておいてほしいという意味(💦)に使われるそうです。
元々、エビデンスは医療や公衆衛生(栄養を含む)分野において、
「ある治療法(予防法)がある疾患に対して、科学的に有効であることを示す検証結果(主に学術論文)」を示す言葉です。
コロナのワクチンや治療薬のニュースで取り上げられていたような
使い方が本来の意味です。
ビジネスで使われるような ”名刺交換をした履歴”とか
”システムの不具合の証拠”などに比べると、かなり重めな意味となります。
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2.エビデンスレベルとトクホ・機能性表示食品
医学や公衆衛生において使われるエビデンスには、明確なレベルがあります(下図)。
トクホの機能表示が消費者庁に認可されたり、機能性表示食品の消費者庁への届出が受理されたりするには、矢印(点線)のレベル、すなわち
・ランダム化比較試験のメタアナリシスまたはシステマティックレビュー
・少なくとも一つのランダム化比較試験
のいずれかが要求されます。
よくCMで見る「個人の感想です」はどこにも該当しませんね( ´∀` )。
とはいえ、なじみのない言葉が並んでいますので、一つ一つ解説します。
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3.ランダム化比較試験
ランダム化比較試験のメタアナリシスの前に、ランダム化比較試験を簡単に解説します。
ランダム化比較試験(大変わかりやすく言うと人体実験???)は、
試験対象者をランダムに2群以上に割付(わかりにくいですが、分けるときに恣意が入らないということです)して、
介入した後の結果を比較するものです。
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介入とは健康に影響を与えるモノやコト(例えば、医薬品・食品・理学療法・運動など)であればなんでもOKです。
介入が医薬品や健康食品などのモノである場合には、対照群にはプラセボ(見た目では介入群のモノと変わらないけど、不活性なもの)を用いるのが一般的です。
ところが実際には、普段食べているような食品のプラセボを作るのは、
味・匂い・食感などが邪魔をして大変困難です。
ランダム化比較試験の中でもよく使われる方法として、二重盲検ランダム化比較試験があります(盲検については別項で)。
トクホの認可には、このようなランダム化比較試験が必要要件となっています。また機能性表示食品の届出受理の要件の一つとなっています。
4.メタアナリシス
医学の中で最も信頼できるエビデンスに鎮座する「ランダム化比較試験のメタアナリシス」です。
研究の進展に伴い、様々な地域で色々な研究者が「ある治療法や予防法」の有効性について検証を行い、エビデンスとして学術雑誌に報告します。
これらのエビデンスを得るために行った実験の条件は、それぞれ異なります。例えば
・試験対象者(人種・年齢・男女などなど)とその人数
・試験期間
・用量など
です。このため当然のことながら、その結果には差が見られ、
・顕著な有効性を示したエビデンス
・無効あるいは副反応が見られるようなエビデンス
が混在します。
これでは「ある治療法や予防法」を本当に採用してよいのかどうか、専門家であっても判断に困ってしまいます。
そこで、その真偽を問うために、複数の「ある治療法や予防法」の研究結果を集めて、更に統計的に解析する手法をメタアナリシスと呼びます。
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但しこの方法は、質の高いランダム化比較試験結果がある一定数存在しないと実行できないので大変時時間がかかります。
場合によっては数十年かかることもあるでしょう。
また実施するには、高度な統計学の知識が必要です。
機能性表示食品やトクホの届出受理において、メタアナリシスは必須となっていないのは、これらの難題によると思われます。
5.システマティックレビュー
機能性表示食品の届出が受理される要件として、もう一つあります。
それがシステマティックレビューです。
実に機能性表示食品の9割以上は機能性の科学的根拠をシステマティックレビューを用いて説明しています。
システマティックレビューは、介入の有効性について報告されたこれまでの学術論文をくまなく調査して選択・抽出し、再分析するという点では、メタアナリシスとよく似ています。
異なる点としては、
・メタアナリシスは統計処理が必要 ⇒ 質の高いランダム化比較試験結果がある一定数存在しないと実行できない
・システマティックレビューは統計処理を必要としない ⇒ ランダム化比較被験の質は問われず、試験数はいくつでもよい
という点です。
6.トクホ・機能性表示食品エビデンスとバイアス
以上まとめると、トクホ・機能性表示食品の認可あるいは届出受理には
① ランダム化比較試験
② (機能性表示食品に限っては)システマティックレビュー
といった厳密な方法が求められ,、表面上は「しっかりしたエビデンスに基づいて」販売されているはずですね。
それでも何故か、専門家だけでなく一部の一般の方からも
「エビデンスが足りない」という批判を受けるのでしょうか?
その答えは「バイアス」です。
次回はバイアスについて、解説します。