【紅麹】薬害に学ぶ
この記事でわかること 【一般消費者・食品事業者向け】
1. 機能性食品の健康被害とその救済
2. 薬害における被害者の救済の歴史
1. 機能性食品の健康被害とその救済
紅麹事件は予想よりも大きく拡大し続け、わが国だけでなく台湾へまで広がっています。台湾ではトクホに似た制度として、”健康食品”があり(下)、政府によって有効性・安全性の審査を受けて認可された商品にのみ、表示ができます。何故か紅麹は”規格基準型(個別の審査は無く届出のみ)”となっているようです。いったいどのような経緯があったんでしょうかね。
食品安全委員会では、これまでにいくつかの食品成分の危害情報についてHPに掲載し、警鐘を鳴らしていますが、現在までトクホや栄養機能食品による重篤な健康被害は起こっていないとの見解です。
現在紅麹関連食品については、回収し原因物質の特定が進むとともに、厚生労働省と消費者庁では電話相談窓口を設けて被害状況の確認を進めています。前回少しだけ触れましたが、機能性食品(機能性表示食品・トクホ・栄養機能食品など)による健康被害が起こった場合、どのような措置がとられるのでしょうか?
2. 薬害における被害者の救済
我が国では戦後、サリドマイド事件やスモン事件といった大きな薬害事件がありました。その反省のもと、医薬品の副作用による健康被害を受けた患者を迅速に救済するために医薬品副作用被害救済制度(創立までには、だいぶ時間がかかっています)。この制度は医薬品を適正に使用したにもかかわらず、入院治療が必要となるような副作用が生じた場合に、救済給付を行う公的な制度です。
それでは、食品の場合どうなるのでしょうか?
その答えは全く分かりません。
例としてビタミンAを挙げてみます。
夜盲症や皮膚粘膜の改善に対してビタミンAは医薬品として用いられます。しかしながら過剰摂取により、頭痛・脱毛・肝障害などの強い副作用が生じることがよく知られています。原則として、医薬品としてビタミンA(例えばチョコラA)を夜盲症や皮膚粘膜の改善を目的として適正に使用し、上述したような副作用が生じた場合には、医薬品副作用被害救済制度の対象となります。一方、サプリメントであるビタミンAを摂取した場合には、これに当てはまりません。
そのため、医薬品と異なり機能性食品摂取による健康被害の救済・補償についての今後の先行きは極めて不透明です。
また医薬品とサプリメントの飲み合わせによる健康被害の可能性は更に高くなります。よく知られている例としては、かんきつ類などに含まれるフラノクマリン類は小腸に発現する薬物代謝酵素であるCYP3A4を阻害します。そのためCYP3A4に分解されることを想定して用量が決められている医薬品(降圧剤やコレステロール低下薬)は、想定通り分解されず、血中の濃度が上昇してしまい、結果的に薬の効果を強めてしまうことになります。そのため、低血圧や過度のコレステロールの低下といった副作用を招く危険性があります。
加えて消費者も、サプリメントや薬局で販売されている医薬品を
・いつから?
・何を(今回の件では、ロットが問題となっていますから、ロットまで)?
・どのように?(どのようなきっかけで?)
服用していたのかという情報を管理する必要があります。
また服用によって何らかの自覚症状や臨床検査値(尿検査・血液検査・超音波診断など)に変化はなかったのかという、記録の保管も重要となってきます。
今回の紅麹事件を教訓として、医薬品のような
・食品版副作用被害救済制度
・サプリメント手帳(医薬品では”おくすり手帳”)
のような制度ができるといいですが、難しいでしょうね。