分かるなんて言わない、余計なアドバイスもしない(不妊治療の話)
不妊治療をする中で、ある時からずっと思っていることがある。
妊活も不妊治療も人それぞれで、経験していることも人それぞれだということ。
ある時、というのは友人と妊活や不妊治療について話をした時だ。
ちょうど1年ぐらい前の話。
私と彼女は同い年で同じ会社で働いている。
住んでいる県は離れているが、たまにプライベートのオンライン通話で何時間も話す仲だ。
当時、彼女は1人目のお子さんが産まれて半年が経った頃で育休真っ只中。私は2回目の採卵を終えて授精結果を待っている頃だった。
「分かる分かる〜」
「きっと大丈夫だよ!」
彼女自身も不妊治療のクリニックに通った経験があり、経験者として持ち前の明るさで励ましと応援をくれた。
けど、不妊治療に疲れていたこの頃の私には素直に彼女の応援を受け止める余裕がなかった。
通話では「そうやんな〜何とかなるよね」なんて言いつつ、後から彼女の言葉を反芻してはモヤモヤが膨らんでいくのを感じていた。
結局この周期は卵3個中1個しか受精できなかった。しかも受精した1個もあまり状態は良くなさそうだということがわかり、気分は落ちに落ち込んだ。
落ち込んだ心に再び浮かんできたのは彼女の言葉だった。
「分かる」「大丈夫」
一回の人工授精で授かれたあなたに何が分かるの?簡単に大丈夫なんて言わないでほしい。
黒い気持ちが頭の中をグルグルと巡る。
また電話するね、と言って通話を切ったけど、彼女の根拠のない励ましを聞きたくなくてしばらくその気になれなかった。
そして、大好きな友達なのにこんな風に考えてしまう自分にも嫌気がさした。
その後、不妊治療を休憩して新しい趣味を見つけたり、また治療を再開してなんとかやっていくうちに、黒い気持ちもどこかへ行き、彼女ともまた普通に長電話できるようになっていた。
けど、今でもたまにあの時の気持ちを思い出して考える時がある。
もし自分が同じように不妊治療に取り組んでいる人と出会ったら、どう接するのがいいだろう?
考えた結果、私の答えはこれだ。
「分かるなんて言わない、余計なアドバイスもしない」
不妊治療に向き合う人の気持ちはセンシティブだ。
そして不妊治療にはたくさんの選択肢があって、その選択肢の背景には人それぞれの経緯がある。
だから、本当の意味で全く同じ状況の人なんていないと思うし、同じ状況でないなら簡単に「分かる」は使えない。
そして、求められていないアドバイスは控えようと思う。
特に妊活の情報なんて山のようにあって、あっちでは「大丈夫」と言われているものがこっちでは「ダメ」と言われているものもある。
結局、人間の体も妊娠も不確かなことが多いのだ。
方法も情報も摂るものも、その人に合っているもの、信じたいと思うものを信じるのが一番なのではないだろうか。
(それを見つける過程が長くて苦しいんだけどね)
どんな領域でも経験者は語りたくなりがちだけど、相手が悩んでいるならまずは「聞く」だけでいい。
自分の経験談やアドバイスは相手の受け入れ体制が準備できていないと何も刺さらないのだ。
考えすぎじゃない?と思われるかもしれない。でも多かれ少なかれ同じ悩みを経験しているからこそ、相手の悩んでいる心を尊重したいと思う。
なんて言いながら、そのうち私も「分かる」って言ったりアドバイス欲が出てペラペラしゃべっちゃってるかもしれない。
だから、できるだけそうならないようにタイトルの言葉は胸に刻んでおきたい。
リアルでペラペラしゃべらない分、自分の記録のためにもnoteに妊活と不妊治療の経験を残しておきたいと思っています。
それが読んでくださる方の参考になれば嬉しいです。