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【世界一になったレジェンド・バーテンダーのバーで働く: KWÃNT】

皆様、ごきげんよう。安部直柔(アベ ナオナリ)です。
現在ロンドンでバーテンダーをしています。
バーテンダーを始めたきっかけは、『海外で暮らし、仕事をして、自分の知らない国でチャレンジしてみたい』という思いからスタートしました。

ここではそんな私のロンドン挑戦への記録やロンドンでの生活、自身のことなどを発信をする媒体として、noteへの投稿を始めました。


前回の投稿で『ロンドンに日本のキャバクラが!?黒服として潜入調査』について綴ったので是非そちらも読んでみてください。

今回は『世界一になったレジェンド・バーテンダーのバーで働く: KWÃNT』につい

KWÃNTとは

2023年5月15日、ついに最後の職場となるバーでの仕事が始まった。
バーの名前は『KWÃNT』(クウェント)
仕事が始まるまでに約6ヶ月ほど待つことになったが、その間に色んな経験ができた。レストランのバーで働いたり、先輩と一緒にPOP-UP BARをやったり、ロンドンで唯一のキャバクラで黒服やってみたりとバラエティに飛んだ経験ができた。何故、約6ヶ月も待つことになったのかと言うと、飲食店ライセンスの取得、店舗工事に遅れが生じた為だ。まさに、イギリスらしい理由である。
基本的に、いろんなモノ・コトが遅れるのは日常といっても過言ではない。日本で育った私には慣れない環境で、苛立つことは多々あったが、気づいたら慣れてしまった。
そんな愚痴はさておき、KWÃNTの話しに戻そう。

場所は世界の富裕層が集まるエリア、ロンドンのメイフェア。グリーンパーク駅から徒歩20秒という好立地だ。
実はこのKWÃNT、2019年に1度オープンしている。だがコロナの影響で、2021年に一旦閉店してしまった。今回、リニューアル・オープンというかたちで、場所、メンバーなど全てが新しくなり、そのリニューアル・オープンの立ち上げメンバーとして、光栄にも働く運びとなった。
『KWÃNT』(クウェント)というバーの名前の意味は、珍しいもの古いもの。昔のフランス語で『賢い』という意味もあるらしい。

凄く昔に使われていた単語とのこと。なので読みと発音が難しい。
名前を決めたのは、オーナーであるエリック・ローリンツ。

Erik Rorenz(エリック・ローリンツ)とは

彼は、世界のバー業界で超が付く有名バーテンダー。世界No.1のバーテンダーを決めるDiagio社が主催する World Class 2010という世界大会で優勝し、さらに世界No.1のバーを決めるWorld Best Bar 2017で1位になったバーで、10代目ヘッドバーテンダーを務めていたから。『KWÃNT』は、そんな彼が満を持してオープンしたバーなのだ。

なぜ私がそこで働けたかというと、彼は日本人バーテンダーへのリスペクトがあり、日本のカルチャーが好きだったことと、先に働くことが決まっていた日本人バーテンダーの先輩のゲントさんが彼に私を紹介してくれたから。言わば、ご縁という運に恵まれた。

エリックと一緒に働いて感じたのは、本当に絵になるバーテンダーである。彼がカクテルを作る時は、バーカウンターに全員が息を飲むような雰囲気になる。
彼のことを一言で例えるなら、エレガント。彼に言われて、1番記憶に残ってる言葉がある『もっとエレガントに』この一言が、彼のバーテンディングとサービスに表れている。

たくさんのお客様から聞かれたのは、『KWÃNTの内装は何をイメージしてるの?』
正直、コンセプトは特別に掲げているわけではない。エリックの好きなものとパーソナリティを内装に反映させている。南国的な要素と、日本の和の要素をエレガントに表現している内装だ。使っている家具や什器、設備等含め、高級感のある仕上がりになっている。

これは日中の写真だが、夜はよりシックな雰囲気になる

シグネチャー・カクテルはロンドンで最多?

どんなカクテルを作ってるのかというと、一言では表せない。なぜなら、シグネチャー・カクテル(そのバーを代表するカクテル)が、多い時は約30種類ほどあるからだ。
ある意味どんなお客様でも楽しめるメニューになっていると思う。おそらくだが、ロンドンで最も多くシグネチャー・カクテルをメニューに載せている。約30種類もあるのかというと、いろんなお酒のブランドと契約しているから。超有名なバーテンダーの彼のバーのバックバーにボトルを置いてもらったり、カクテルを作ってもらいたいブランドがたくさんあるということだ。契約内容は分からないが、その契約したブランドを使うことで、安く仕入れられたり、ゲストバーテンダーのスポンサーだったりと特典があるのだ。

私が働いていた時に人気だったカクテルを紹介しよう。

COME AS YOU ARE

酸味、甘味、旨味とスモーキーが一体となっている。

WALLET

セイボリーで旨味、甘味、塩味のバランスがとれた味わいにボディがある。

SEE THE SEA

香りは海、味わいはドライとギャップを感じる。

8ヶ月後のグランド・フィナーレ

残念ながらこの時が来てしまった。そう、退職。いや、卒業と表現したい。
私のイギリスでのワーキング・ビザである、YMSの期限が来てしまったのだ。
2023年12月31日、大晦日が最後の出勤となった。振り返れば、いろんなハプニングがあったが新規店舗の立ち上げには付きものだろう。長いようで、短かったが1番変わったのはメンバーの体重だ。私はスタートして2ヶ月でベルトの穴が2つも絞れるようになっていた。皆んな、ハードワークしていたのだと思う。
私自身、主観的に観てもロンドンで良いキャリアを気づけたのではないだろうか。バーテンダーとして、光栄にも働いた場所は全て有名な場所、多くを学ぶことができ、ロンドンで日本人バーテンダー、初のPOP-UP BARをできた。
ロンドンに来る前、バーテンダーとしての技術だけは自信を持ってやって来たが、それが確信にも変わった。英語も来た当初から比べると、背伸びくらいはした。大変だったが、もちろん楽しいこともあった。約2年のロンドン生活これにて終焉。

お疲れ、俺。


ただこれが終わりではない。私の物語は続く。乞うご期待。

R I P. My friend.

KWÃNTでのラスト出勤を終え、正月を迎えたのだが、突然の悲報が入ってきた。
それはKWÃNTの元同僚の台湾人バーテンダーである、レオが突然亡くなった。彼とは、LyanessとKWÃNTで一緒に働いたなかだ。彼は私より先にKWÃNTを卒業し、台湾へ帰って自分のバーをオープンの準備をする言っていた。そんな彼は志し半ばで、人生を終えってしまった。
久しぶりに身近に居た人が急逝してしまい、改めて命への尊さを考えさせれた。普通に暮らしていても起こってしまう出来事ではあるが、私自身もさらに1日1日を大切にして、周りの人に感謝しながら歩んでいこう。
もちろん彼の分まで。
ありがとう。レオ。

少し悲しい話しだが、私の人生の記録なのでご理解いただければ、ありがたいです。

これにて私、安部直柔(アベ ナオナリ)のロンドンでのバーテンダーとしての生活は終了。
今後は別の場所へと移るので、改めて新天地でのことはお知らせします。
その前にロンドンのオススメのレストランやバーなど、ロンドン在住中に旅行で行った他国のオススメなども投稿していきます。

では、さらばロンドン!ありがとう!

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