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【Lyaness ロンドンで最初に働いたカクテルバー】

皆様、ごきげんよう。安部直柔(アベ ナオナリ)です。
現在ロンドンでバーテンダーをしています。
バーテンダーを始めたきっかけは、『海外で暮らし、仕事をして、自分の知らない国でチャレンジしてみたい』という思いからスタートしました。

ここではそんな私のロンドン挑戦への記録やロンドンでの生活、自身のことなどを発信をする媒体として、noteへの投稿を始めました。


前回の投稿で『私の仕事探し』について綴ったので是非そちらも読んでみてください。

ロンドンに来てやっと1年が経ちました、長いようで早く、楽しくも踠き成長できた1年だった気がします。さてここからは、この1年のハイライトを綴ります。

今回は『Lyaness ロンドンで最初に働いたカクテルバー』について

Lyaness ロンドンの名門カクテルバー

ロンドンに来て、約2週間くらいで働きはじめることができました。そのバーの名前がLyaness(ライアネス)というカクテルバー、場所はSouth bankというエリアにあり、Sea Containers Londonというスタイリッシュなホテルの中にあるバーです。バーから、テムズ川(ロンドンのシンボル的な川)を眺められる素敵なロケーション。
面接とトライアルを経て採用が決まり、面接では『ロンドンで何をしたいのか?』『将来どうしたいのか?』など、過去のことより『これからお前はどうしたい?』みたいことを多く聞かれました。トライアルでは、1〜2時間働いたのちに、3種類タイプの違うカクテルを作り、その後に無事採用が決まりました。
Lyanessは、2021年までバーの世界ランキングを決める『World Best Bar』に第55位でランクインしてました。

残念ながら2022年はランク外でしたが、世界的にも有名なカクテルバーです。

Lyanessは、どういったスタイルのバーなのか?

お酒や食材をクリエイティブかつユニークな視点で捉え、カクテルに落とし込み、作り上げていくカクテルバーです。毎年メニューが変わり、その都度コンセプトも違います。カクテルに対して、固定概念に囚われないアプローチをしてます。働き始める前に、新メニューのミーティングに参加したんですが、内容が『人類の進化』『食生活の変化』などなど、そこから何の素材を扱うのか?という話し合いをしていました。
それを英語で聞いていたので、最初は全く内容が理解出来ず、この先の苦労を予感しました。
ですが、メニューをチーム全員で考えていくというスタイルが凄く新鮮で、日本だと基本的にチームというより、責任者レベルの人達が主体で作っていくことが多い印象。全員で考えると、よりチームの一体感やプロダクトへの思い入れが強くなり、お客様へ自分達が作った良いものを伝えようという意欲が生まれるような気がします。

Lyanessの創設者 Mr Ryanとは?

ホテルの中にあるバーなんですが、Lyanessにはホテルとは別に創設者がいます。それがMr Ryan
どういった人物かというと、約10年以上前からサスティナビリティの概念やお酒と材料の自家製加工、生鮮品の使用を避け、プレミックス(事前にお酒を混ぜておく技法)をバー業界に取り入れたパイオニア的な存在です。
彼はエディンバラ大学(名門大学)で生物、哲学で博士号を取っていたり、ショフを経験したのちにバーテンダーになった、異色の経歴の持ち主
最初にHoxtonという場所にWhite Lyanをオープン。そこから大手ホテルと提携し、White Lyanを閉めた後に、Soute bankのホテル内にDandelyanをオープン。Dandelyanはオープンから1年で2018年のWord Best Bar1位を獲得するという快挙を成し遂げてます。その後、3年前にDandelyanをリブランドする形で現在のLyanessをオープン。

彼は現場に立つことは、ほぼありませんが自身のドリンク・コンサルティング会社を経営しており、提携しているホテルにあるバーのプロデュース、レストランなどのドリンク開発などもやってます。もちろん、現在でもLyanessの新メニューのミーティングに参加して、試作の味見などを行い、その都度メニューの方向性を示して、新しいカクテルの最終的な判断をしてます。
彼はここ数年の世界のバーシーンを牽引してきた人物です。

私の担当ポジション

さて、前説が長くなりましたが私の仕事内容をお話ししましょう。面接の時に言われたのが、『バーバックで雇う』と言われました。
正直、その時にあんまりバーバックというポジションを理解できてなかったんですが、バーテンダーではなく、そのアシスタント的なポジションです。何をするかというと、カクテルを作ることは仕事のうちの1割程度でそれ以外は、グラス洗浄&磨き、氷やドリンク類の補充などなど。まさかロンドンに来て下積み時代のような経験をするとは予想してませんでした。
働き始めて1ヵ月目くらいに、『このポジションってどのくらいやるの?』って聞いたらだいたい6ヵ月と言われて、絶望感に浸りました。
バーにもよるんですが、海外のバーはポジションや役職が分かれている場合が多く、特にLyanessは完全に分業性で、シェーカーにお酒を入れる人、シェーカーを振る人、ガーニッシュを付ける人、その全てのアシスタントをする人(私のポジション)とバーカウンターの内側は4人での分業制でした。
実際に私がカクテルを作る機会が多くなったのは辞める1ヵ月前くらいで、それ以外の期間は本当にしんどかったです。正直、カクテルを作るとういことだけであれば何の問題もないんですが、当時のことを振り返ると私の英語力に問題があったと思ってます。お客様、同僚たちとのコミュニケーションを求められるバーだったので、日常会話以上のレベルで英語力が必要でした。当時の私はそのレベルの英語力がありませんでした。悔しい思い出ばかりです。ただ、ロンドンで初めて働いたバーがLyanessで良かったなとも思ってます。クリエイティブなアプローチや、ロンドン屈指の忙しいカクテルバーで働けたのは良い経験でした。苦い経験も考え方でポジティブにできると改めて学びました。

ロンドンで働いて感じた違いと違和感

この点についてはめちゃくちゃあるんですが、3つ上げるとするなら
・フルーツ、野菜を洗わない
・他人人のアドバイスを聞かない
・育成、トレーニング不足
それぞれ解説していきましょう!

①フルーツ、野菜を洗わない

これ衝撃だったんですけど、基本的にめちゃくちゃ食材汚れてたり、土汚れが付いてない限り洗うことはありません。まさかの経験だったんで、他のバーの人達にも聞いたら同じでした。たぶん洗う概念がそもそもないのかも。(そんなことある?)
余談ですが、洗剤で洗った食器を水で洗い流す習慣が無い人もちらほら。まさかのカルチャーショックです。

② 他人のアドバイスを聞かない

全員ではないんですが、傾向として立場が下やリスペクトのない人の言うことは、全く聞く耳を持ってくれません。
謙虚な人が少なすぎるという感じでしょうか。例えば、『それをやるなら、こうした方が良いよ、早いよ、効率的だよ、安全だよ』とアドバイスをすると、『俺はこっちのほうが好きだから、大丈夫』という驚きの返答です。
そういう人ほど、仕事ができない人が多いので、どこの国でも謙虚じゃない人はそこ止まりだなと痛感。

③育成・トレーニング不足

日本の飲食店にも言えるんですが、ロンドンでも育成やトレーニングに対しての取り組みが足りてないなと強く感じました。それも初歩の段階からで、例えば日本だったら提供する商品の知識を最初に学ぶことが多い、いや、当たり前だと思う。ロンドンで働いた場所だと、自分から聞かない限り教えてくれません。それで大丈夫か?って個人的にはなるんですが、彼ら的には大丈夫らしい。
それと、カクテルを作る技術的なことのトレーニングが全くなかった。残念ながら、バーテンディングのスキル不足を色んなバーで感じます。
美味しいより、エンターテイメントを求められるのかなとも感じました。

葛藤の6ヶ月、辞める決断

結果的にLyanessでは約6ヶ月くらい働いて2022年の9月に辞めました。限られた時間の中で何ができるのか?何をしたいのか?何をするべきなのか?そんなことを日々考えながら働いててました。
辞める決断に至った理由は、2年しかないからここだけで留まりたくないという思いが日を増すごとに強くなったこと、それとロンドンに来る以前から2〜3軒のバーで働こうと決めていたのもあります。自分が思い描いていたロンドンのバーテンダーライフとは少し違い、最初はキツイ時間を過ごしましたが前向きに捉えて、次に向けてスタートだ!というかたちで他のバーで働くことに決めました。

次回『大公開/ロンドン バーテンダーの給与明細』

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