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「彼女」は幸せになれたのか?「彼女の出来事」(松川ジェット)についての考察

1年ほど前から、「LACCO TOWER」さんというバンドを推している。「ドラゴンボール超」エンディング主題歌を担当した、群馬県発の狂想演奏家さんで、「IROCKS」というロックフェスとかもしていてメジャーデビュー6年ほどで2022年で結成20周年を迎えるそう。早口でもっとたくさん説明したいことはあるが、それよりサクッとこちらを見てほしい。

で、今年7月28日に、Vo.松川ケイスケさんとKey.真一ジェットさんが2人で「松川ジェット」さん(旧称:松川ケイスケと真一ジェット、通称:松ジェ)として、さらにメジャーデビュー&同日に発売したのがMajor Debut Cover Album「彼女の出来事」。

このアルバム。概要を説明すると、

美空ひばりを始めとする日本を代表する女性シンガーによる昭和~平成に生まれたエバーグリーンな名曲を、令和時代へと歌い紡ぐカバー10曲が収録される。(松川ジェットオフィシャルサイトより)

とのこと。ちゃんと予約してオンラインでサインをもらい、予約特典映像で腹筋がねじ切れそうなほど爆笑し、このアルバムをドライブのお供にし続けて早2か月。気になったことがある。

「この”彼女はハッピーエンドを迎えられたのだろうか」

なぜこんなことを気にするかというと、アルバム名が「彼女”の”出来事」だからだ。「彼女”との”出来事」でも、「彼女”達”の出来事」でも無い。ちなみに、LACCO TOWERさんのファンクラブ「猟虎塔」向けにCD予約特典(LACCO TOWERさんのメンバーがライブしたりカラオケを披露したりというファン向けの内容)があったのだが、それは「ラッコとの出来事」というタイトルにされている。つまり、彼らは当たり前だが”の””との”を明確に使い分けている。かつ、複数のインタビューで、今回のアルバムでは歌詞も重視されている表現が見受けられた。
よってこのアルバムは1人の”彼女”に起こった出来事と見て問題無いのではないだろうか。
この記事では曲順が時系列になっていると仮定し、歌詞を順に見て”彼女”がどうなっていったのかを考察してみようと思う。
※注※以降あくまで一人のファンが歌詞を並べて読み取るひとつの仮説以上でも以下でもありません。
※以降、くどいので敬称はざっくりで。

1.真赤な太陽

1967年の楽曲で、歌詞カードには美空ひばりさんをオリジナル歌手として明記している。言わずと知れた名曲。歌詞を見てみよう。

まっかに燃えた 太陽だから
真夏の海は 恋の季節なの
はげしい愛に 灼けた素肌は
燃えるこころ 恋のときめき
くちづけかわし 永遠を誓った
愛の孤独 海にながして
はげしく 身をまかす

なるほど。”彼女”の恋の始まりは真夏。焼けるような波打ち際でキャッキャうふふしちゃうリア充さんですね。爆発するといい。
「彼女の出来事」が”彼女”の身の上に起こったことを時系列で並べているとすると、きっとまだこの楽曲は若い頃。おそらく10代から20代前半なのではないだろうか。
とはいえ、幸せ一辺倒ではない部分も。

いつかは沈む 太陽だから
涙にぬれた 恋の季節なの

「いつかは沈む」「涙にぬれた」と見ると、恋の終わりも見据えたうえで、ひと夏の恋をエンジョイしているように思える。

2.人魚

1994年の楽曲。私はこの楽曲をこのアルバムで初めて聞いた。

アカシアの雨にうたれて泣いてた

と始まるこの楽曲。アカシアの雨というのは一般的にアカシア+雨ではなく、アカシアの花が散る様子を指す模様。この「アカシア」がアカシアなのかニセアカシアなのかでちょっと捉え方が変わるが、アカシアの場合開花は3~4月でニセアカシアの場合は開花は4~5月。

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これがニセアカシア。

春風の中で月がのぼるまで

と続くためアカシアなのかと思ってしまうのだが、色々ネットで見ると「アカシアの雨」と表現された場合はニセアカシアの白い花弁が散る様子を指している、とする説が多い。まあ、最初の燃えるような恋が夏だったことを考えると、翌年以降の春、つまりそれなりに時間がたっていると考えられる。

その笑顔をしぐさをいとしくて
本気で思った 抱いて抱いて抱いて

こう続くので、「抱いて抱いて抱いて」と思ってしまうほど親密な関係にいたっているのかと思いきや、

つめたい夜は 子供のように
ふるえて眠る 奇跡を待って

この歌詞で「想われている」相手を「奇跡」と呼んでいるのであれば、おそらく結ばれてないのではないだろうか?そして楽曲後半では「本気で愛した」と過去形になり、

その激しさ その声 その胸が
消えてしまった 抱いて抱いて抱いて

消えてしまっている。なお、ここで松ジェの「人魚」のMVを見てみよう。

冒頭に戻るが、この「アカシア」がもしもニセアカシアではなくアカシアだった場合、花言葉は「秘密の恋」。そしてVo.松川氏が花瓶にさしているのは黄色いミモザの花…つまりは「アカシア」。なんだか怪しくなってくる。つまりは、松ジェの解釈はそういうことなんですね…(個人の意見です)

3.少女A

ここで、衝撃的な事実が判明する。

いわゆる普通の 17歳だわ

”彼女”、17歳だったんかい!!!!!!!!!!!
いや、歌詞を読むと文脈的に相手が17歳、とも読めなくもないけど、どちらにせよ「少女」と呼べる年代だったことが判明する。ということは、少女と呼ばれる年代でひと夏の恋をして秘密の恋をして…早熟すぎじゃないのか…?

そして、

蒼いあなたの 視線がまぶしいわ

蒼い瞳の方と恋愛…?なるほど。そして、この曲は「人魚」での奥手な感じとは打って変わってガンガン”彼女”が相手を誘惑していく展開となる。

早熟なのは しかたないけど
似たようなこと 誰でもしているのよ
黄昏れ時は 少女を大人に変える
素肌と心は ひとつじゃないのね
ルージュの口びる かすかに震えてるわ…


似たようなこと…あれですね、テキストにできないようなことですね。わかります。

じれったい じれったい
結婚するとか しないとかなら
じれったい じれったい
そんなのどうでも 関係ないわ

いや、どうでも関係なくないと思うよ…?もっと慎重に考えて…!?
と思うようになった私、年をとったなぁと感じます。確かに若い頃はあんまり考えてなかったような気がする…
そんな少女、もとい”彼女”は次の舞台を横浜に移す。

4.ブルーライト・ヨコハマ

1968年の楽曲。超有名な曲なので、特に説明はいらないと思うが、

あなたと二人 幸せよ
いつものように 愛のことばを
ヨコハマ ブルーライト・ヨコハマ
私にください あなたから
あなたの好きな タバコの香り
二人の世界 いつまでも

歌詞からは満たされた喜びしか伝わってこない。少女(もしくは、そこから時を経て女性になった”彼女”)がタバコを嗜む(ということは20歳以上の)方と幸せになったんだ…良かった…

5.イミテイション・ゴールド

この楽曲、元々原曲がめちゃくちゃ好き。かつ、このアレンジも超絶かっこいいので全人類ぜひ見てほしい。マジで。そんな私の感想は置いておいて…

シャワーのあとの髪のしずくを
乾いたタオルで拭きとりながら

冒頭。情事の前なのか、後なのか、それともすでに同棲していて生活の中なのか。この後すぐ彼に話しかける展開が待っているので、明らかに深い仲。

若いと思う 今年の人よ
声が違う 年が違う 夢が違う
ほくろが違う
ごめんね 去年の人と又比べている

ああああああああああああああ!!!!!あんなに幸せだった!!!!ブルーライト・ヨコハマの彼!!!!!!!比べられてる!!!!!!!!無常すぎる…いつまでも続くはずだった二人の世界は去年のうちに崩壊して、新しい彼との爛れた生活…まあ、それが”彼女”の選択なので”彼女”が幸せなら良しとするしかない。曲の中では去年の人を振り返りながら「まだ縛られてる」と言及。そうよね、幸せだったもんね…
そして曲の最後は、

まっててほしい今年の人よ
日が当たれば 影が違う 色が違う
光が変わる
ごめんね 去年の人を忘れるその日を

と結ばれる。去年の人を忘れて、今年の彼とちゃんと幸せになれたらいいね…?

6.東京は夜の七時

この楽曲については、原曲がリリース以降歌詞を考察している人が散見されるが、公式見解は(私は)見つけられなかった。ただ、作詞者本人が当時交際中の女性を思って書いた、という記載は見つけた。
「東京は夜の七時」から25年 小西康陽と野宮真貴が明かす創作秘話
この記事を読まなかったとしてもウキウキと”彼女”が相手に会いに出かけていく情景や、楽曲中に登場する「あなた」が彼女を愛していて、バラの花を抱えて待っている様子は目に浮かぶ。
とはいえ、

ぼんやりTVを観てたら
おかしな夢を見ていた
気が付いて時計を見ると
トーキョーは夜の七時

ここから始まるこの楽曲。夢から覚めた、起きた、という表記は最後まで一度も登場しない。この「気が付いて時計を見ると」を目が覚めて気が付いて、と解釈するかどうか次第で、ずっと夢の中のおかしな世界を”彼女”が漂い続けているという解釈も出来てしまうのだ。
なぜなら、

TVを見ていた

夜の7時の待ち合わせのために、朝からドレスアップした

待ち合わせのレストランについたが、レストランはつぶれてしまっていた

タクシーの窓を開けて会いに急ぐ

留守番電話が「突然ひとりで廻り始める」「ひと晩中喋り続ける」

交差点で信号待ちしてる最中に今日も少し遅刻してることに気が付く

と楽曲が経過していく。流れが少しおかしくないだろうか?気合を入れてドレスアップした結果、TVを見ながら油断して寝てしまったから遅刻した、だけならわかる。タクシーでの移動や交差点で待ってる描写も、歌詞の中で順序が変えられているだけならわかる。だが、決定的なのが

バラの花をかかえたまま
あなたはひとり待ってる
夢で見たのと同じバラ

の後に続く言葉が

早くあなたに逢いたい

なのだ。どうして逢っていないのに、彼がバラの花を抱えているのがわかるのだろう。そして

とても淋しい あなたに逢いたい

逢いたいと何度も繰り返しているのに、この”彼女”は最後まで彼に会えていない。なので、夢の中の夢を見ているんじゃないか、と私は勝手に思っている。”彼女”はこの日、幸せな夢の中に居たのだ。

7.駅

1986年の楽曲。アルバムに入っていたことで初めて聞いた曲その2。さて、歌詞を見てみよう。

見覚えのある レインコート
黄昏の駅で 胸が震えた
はやい足取り まぎれもなく
昔愛してた あの人なのね

元カレ見つけちゃったよ…!これは「昔愛してた」という程度に時間が経っている、ということはブルーライト・ヨコハマの彼、と見ても良いのではないだろうか。

二年の時が 変えたものは
彼のまなざしと 私のこの髪
それそれ待つ人の元へ
戻ってゆくのね 気づきもせずに

イミテイション・ゴールドの彼とは交際を続けている(1年~2年)けど、ブルーライト・ヨコハマの彼を見つけ、ついひとつ隣の車両に乗ってしまった、と。

今になってあなたの気持ち
初めてわかるの 痛いほど
私だけ 愛してたことも
あなたがいなくても こうして
元気で暮らしていることを
さり気なく 告げたかったのに……

あああああ…きっと喧嘩別れだったり誤解による別れだったり、きっと何か心残りがある別れだったんですよね…悲しい…
ただ、松ジェのMVを見ると、切符は「幸福行き」。”彼女”が幸福になれると良いのだが…

8.人形の家

顔もみたくないほど
あなたに嫌われるなんて
とても信じられない
愛が消えたいまも

ぜんっぜん幸福に向かってない!!!!!!!!!!!

待ちわびて
泣きぬれる部屋のかたすみ
私はあなたに命をあずけた

待つ女になっちゃったよ…少女Aの時の積極性どこに行った???
いや、駅で遠目に見たブルーライト・ヨコハマの彼を思い出して、イミテイション・ゴールドの彼とちょっと仲がこじれてしまった結果、こうなった…?昔の男の話、確かに聞きたくないし、口に出さなかったとしてもなんだか物思いにふける彼女と口論になってそこから…的な…?
先行きに暗雲が立ち込めてきた。

9.悪女

さて、フラグ立ちまくっているところに来ました、「悪女」。

マリコの部屋へ 電話をかけて
男と遊んでる芝居 続けてきたけれど
ホテルのロビーも いつまで居られるわけもない
帰れるあての あなたの部屋も
受話器をはずしたままね 話し中

…男と遊んでる風に見せかけてる?でも帰りたい気持ちもある、と。在宅確認をしたいのに、電話はつながらない、と。

悪女になるなら 月夜はおよしよ
素直になりすぎる
隠しておいた言葉が ほろり
こぼれてしまう 「いかないで」

ん?????引き止めたいけどその気持ちを隠して悪女のふりをしている、と?男と遊んでる芝居して?さらにはこの後、男モノのコロンを深夜の喫茶店でうなじにつけて、(寒い思いして)朝帰りして捨て台詞。おおう、「悪女」のふりをしてると。で、その理由は…

あなたの隠す あの娘のもとへ
あなたを早く 渡してしまうまで

いや。いやいやいや。
別の女がいるからって自分が「悪女」のふりをして身を引いてあげるの、物分かり良さ過ぎじゃないですか???もしかして電話してつながらなくて帰宅しなかったのって、女連れ込んでるんじゃないかって予想したからでは…?イミテイション・ゴールドの彼は「若いと思う」と言われてるぐらいだから、もしかして年下で遊びたい盛りなのかもしれないけど。にしても不誠実。わりとお付き合いも長めになって同棲もしくは半同棲ぐらいまでしてて、”彼女”がある程度の年齢になってると仮定すると…え、この段階でお別れとか…割と地獄では…?

10.ラヴ・イズ・オーヴァー

アルバム最後の楽曲。タイトルでもう嫌な予感しかしない。

Love is over 悲しいけれど
終わりにしよう きりがないから

お互いに結婚はしない主義であればいいけど、そうではないなら同棲・半同棲を続けていても…たしかにきりがないかもしれない。

Love is over 若いあやまちと
笑って言える 時が来るから
私の事は 早く忘れて

そう。彼は「若い」から。”彼女”からすると自分を忘れて「悪女」に出てきた「あの娘」のところへ行けばいい、そっちで幸せになれよ、と言ってるわけだ。

わたしはあんたを忘れはしない
誰に抱かれても忘れはしない
きっと最後の恋だと思うから

まって。ちょっと待って。”彼女”、自分の幸せ考えて無さ過ぎでは…???
この楽曲、この後も彼のことを慮る内容ばかりが続いていく。ようは物分かりの良い”彼女”が、「貴方には別に良い人がいるはずなんだから、私なんか切り捨てて、早く出てって幸せになりなさい。」という話だ。

え?”彼女”の幸せは…???????

総括

結局、
①真っ赤な太陽:真夏の海で出会った「ひと夏の恋」
②人魚:憧れるだけで終わった「秘密の恋」
③少女A:早熟な「”彼女”主導の恋」
④ブルーライト・ヨコハマ:年上の彼といつまでも続くかと思われた「幸せな恋」
⑤イミテイション・ゴールド:若い『今年の人』と紡ぐ「大人の恋」
と来て、
⑥東京は夜の七時:幸せな夢(相手はおそらく『今年の人』)
⑦駅:ブルーライト・ヨコハマの彼を見つけて物思いにふける
⑧人形の家:『今年の人』との不和
⑨悪女:『今年の人』の浮気に気付き、身を引こうとする
⑩ラヴ・イズ・オーヴァー:身を引く
と考えると、”彼女”の幸せは、ブルーライト・ヨコハマがピークだったように思う。もしくは、「東京は夜の七時」のあたりか…
結論として、ハッピー”エンド”、ではないと思う。”彼女”は納得して身を引いているので、ぎりぎりメリバ(メリーバッドエンド(主人公視点は「幸せ」もしくは「最善」だけどまわりとしてはなんだか納得できない、完全に手放しでハッピーエンドではない))といった感じ。各種インタビューを見ていると、次は「彼氏の出来事」かも、等という話題も出ているけど、ハッピーエンド大好きな自分的にはぜひ次回作を「彼女の出来事2」にして彼女を幸せにしてあげて欲しい。
…と言いながら、LACCO TOWERさんの楽曲を聞いていると「めっちゃハッピーエンド!!!!!幸せ!!!!!」という楽曲は体感少なめなので、この”彼女”の物語はこれで完結なのかもしれない、とは思っている。

     =完=

というわけで、この記事を読んで「実際の楽曲を聞いてみたい!」と思った人に朗報。記事を見ていてお気づきかもしれないが、実はアルバム収録曲全曲、YoutubeにMVが上がっている。

[収録曲]
1.真赤な太陽 作詞:吉岡治/作曲:原信夫/オリジナル歌手:美空ひばり
2.人魚 作詞:NOKKO/作曲:筒美京平
3.少女A 作詞:売野雅勇/作曲:芹澤廣明
4.ブルーライト・ヨコハマ 作詞:橋本淳/作曲:筒美京平
5.イミテイション・ゴールド 作詞:阿木燿子/作曲:宇崎竜童
6.東京は夜の七時 作詞・作曲:小西康陽
7.駅 作詞・作曲:竹内まりや
8.人形の家 作詞:なかにし礼/作曲:川口真
9.悪女 作詞・作曲:中島みゆき
10.ラヴ・イズ・オーヴァー 作詞・作曲:伊藤薫
公式より

良い!と思った人はCDもどうぞ。一緒に推しましょう。

なお、松ジェの2人が所属するLACCO TOWERさん、もうすぐ新しいアルバムが出ます。良かったらこっちも一緒に推しませんか(布教)

以上、key.真一ジェットさん推しで「松ジェだと!MVに真一さんがいっぱい映ってる!!!」(LACCO TOWERだと1/5だけど松ジェだと1/2)とテンション高めの私(初心者ラッ子)がお送りしました。

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