実はジェイソン・ステイサムの最高傑作、『ハミングバード』感想〜
点数 : 5点(5点満点)
ストーリー : かつて特殊部隊の軍曹としてアフガニスタンで戦ったものの、ある事情から逃亡兵となり、いまやロンドンの下町に身を潜めながら暗い日々を送るジョゼフ。そこで知り合った少女が何者かに拉致されたことを知った彼は、マフィアの雇われ用心棒となって暗黒街で次第にのし上がっていく一方、善良な若き修道女クリスティナの助けを借りて、少女の行方を捜す。少女が既に惨殺されていたことを知ったジョゼフは、復讐を決意する…
監督 : スティーブン・ナイト
出演 : ジェイソン・ステイサム、アガタ・ブゼク、ベネディクト・ウォン
感想
ジェイソン・ステイサム主演作としてはアクションが控えめで地味とか重苦しい物語などと決して評価が高いとは言えない本作『ハミングバード』。本作が公開された2013年(日本では2014年)のステイサム主演作としては『PARKER/パーカー』や『バトルフロント』などのアクション映画が並んでいることあり、日本公開時もアクション映画のような宣伝のされ方でした。
本作のアクションは中盤にある喧嘩シーンくらいでメインとなるのは戦争で心に傷を負った元兵士と辛い過去があるポーランド人修道女を描いた人間ドラマ。なのでアクションを期待した人が肩透かしを食らったというのは多いと思います。
しかし本作の監督スティーヴン・ナイト。
『堕天使のパスポート』や『イースタン・プロミス』の脚本家ですが、あの2作と本作『ハミングバード』はほぼ三部作だと思います。
言っちゃえば、"裏のロンドン三部作"。
『堕天使のパスポート』は移民
『イースタン・プロミス』はマフィア
『ハミングバード』は帰還兵
どの作品も舞台はイギリスのロンドン。
だけど煌びやかなロンドンではなく、ダークなロンドンです。そしてどの作品も孤独な人たちが描かれています。
なので本作はジェイソン・ステイサムの映画というよりも、スティーヴン・ナイトの作家性が強く出た、スティーヴン・ナイトの映画と紹介した方がいい気がします。
本作のこの"地味"な作風は好みが分かれると思いますが、個人的にはこの渋い仕上がりが最高です。
一部で"主演がステイサムである必要がない"という意見もちらほらとありますが、ステイサムのルーツはロンドンの下町です。俳優デビュー作となったガイ・リッチー監督作『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』や『スナッチ』などこれほどロンドンの下町が似合うイギリス人俳優はいない。
また本作では"俺はアクションだけじゃない!演技もできるんだ!"ということを証明しています。自分のことを知らずに育った娘と会う場面は何度も見ても泣ける。怖い表情で真意を表現した『キャッシュトラック』も素晴らしいですが、本作の演技はステイサムのベストアクトだと思います。
ステイサムばかりに目が行きがちですが、ヒロインである修道女を演じるポーランドの女優さんアガタ・ブゼクの演技・存在感もこれまた素晴らしい。めっちゃ美人というわけではないですが、とても惹きつけられる見事な女優さんでした。
悲しくも余韻の残るラストも完璧。
ちなみにスティーヴン・ナイト監督は当初、ドラマシリーズ『ピーキー・ブライダーズ』でキリアン・マーフィーが演じた主人公トーマス・シェルビー役にジェイソン・ステイサムをオファーしていたそう。残念ながら再タッグとはいかなかったですが、スティーヴン・ナイトとジェイソン・ステイサムは『イースタン・プロミス』の続編的なクライム映画『Small Dark Look』で再タッグする予定らしいです。
ジェイソン・ステイサムはアクションばかりで演技ができないと揶揄する人にこそ観て欲しい作品、それが『ハミングバード』です。
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