『クワイエット・プレイス DAY1』の感想
ストーリー
飼い猫のフロドとともにニューヨークに暮らすサミラ。大都会ゆえに不寛容な人もいるが、そんな街での日々も、愛する猫がいれば乗り切ることができる。そんなある日、突如として空から多数の隕石が降り注ぎ、周囲は一瞬にして阿鼻叫喚に包まれる。そして隕石とともに襲来した凶暴な“何か”が人々を無差別に襲い始める。何の前触れもなく日常は破壊され、瓦礫の山となった街の中を逃げ惑うサミラは、路地裏に身を隠して息をひそめ、同じように逃げてきたエリックという男性とともにニューヨークからの脱出を計画するが…
監督 : マイケル・サルノスキ
出演 : ルピタ・ニョンゴ、ジョセフ・クイン、アレックス・ウルフ、ジャイモン・フンスー
感想
6月28日より公開されている人気シリーズ『クワイエット・プレイス』の第3弾、『クワイエット・プレイス DAY1』観ました!
ジョン・クラシンスキーが監督を務めた
1作目『クワイエット・プレイス』は個人的にはかなり不満が多い作品で、当時は周りにボロカス文句を言ってた覚えがあります笑
しかし続く2作目『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』では1作目でダメだったドラマ、アクション、ホラーなどの要素が改善されており、とても面白かったです。
またキリアン・マーフィーが演じたエメットというキャラクター。普段から悪役を演じることも多いキリアンが演じたことにより、彼は良い人なのか悪い人なのかが分からない緊張感が生まれており、この絶妙なキャスティングなど個人的には2作目は1作目と比べてかなり良くできていたと思います。
そして最新作『DAY1』は1、2作目と話が続いてきたのに対して、今回はそれの始まりの物語。タイトル通り、DAY1=1日目から始まります。2作目のオープニングでも1日目の様子は少しだけ描かれましたが、今回は大都市ニューヨークを舞台に世界が崩壊していく様子を3日間に渡って描かれます。
当初は『テイクシェルター』や『マッド』などのジェフ・ニコルズが監督を務める予定でしたが、今年の秋に日本公開が予定されている『The Bikeriders』の撮影に集中するために降板。代わりに白羽の矢が立ったのが、あの傑作『ピッグ』のマイケル・サルノスキ監督。
この『ピッグ』で心を掴まれた身としては
マイケル・サルノスキが監督するなら、なにがなんでも絶対に観る!と公開を心待ちにしていました。
今回が長編映画2作目となるサルノスキ監督ですが、監督だけではなく、脚本と原案も担当。撮影監督も『ピッグ』と同じパトリック・スコラが起用されているなど初のメジャー映画にしては珍しいほど、サルノスキ組の体制で製作が進められたという本作。
結論を言えば、良い意味でこちらの予想を裏切ってくれたマイケル・サルノスキならではの『クワイエット・プレイス』でとても面白かったです。
ジョン・クラシンスキー監督の1、2作目とは作風がかなり異なり、今回はよりドラマ重視の作りなので賛否は絶対に分かれると思います。予告や宣伝で売りにされている世界が崩壊していく場面もそれがメインというよりもあくまでジャンル映画的なサービスに近い。 1、2作目はアクション要素があるパニックホラーでしたが、今回はパニックホラー要素のある人間ドラマという、これは"ニコラス・ケイジ版ジョン・ウィック"と思いきや、実はそういう映画ではなかった『ピッグ』と同じ印象です。
本作はそういうディザスター的な派手な見せ場より、場面としては地味で静かな場面の方が面白い。
ルピタ・ニョンゴ演じる主人公サミラは末期癌という設定。彼女にとって世界が崩壊しようがなかろうが、どのみち先は長くない。どうせ死ぬなら、自分の好きなところで死ぬ。だから彼女の目的は街からの脱出ではなく、思い出のピザ屋でピザを食べる という… ピザ屋のあるハーレムへと向かう旅の過程で自分と向き合う というストーリー。これってまんま『ピッグ』ですよね?
そういう意味で本作は『ピッグ』にも出演していたアレックス・ウルフの言葉を借りるなら、"もう一つのピッグ"。
"喪失と再生"という同じテーマ。大切な人を亡くして絶望しても人生は続いていくし、人はそれを乗り越えて生きていかないといけない。しかし本作は『ピッグ』のその先を描いているような気がします。たとえ自分が再生できないとしても、自分以外の人に生きるように勇気づけ、文字通り"生"を託せるという。僕はある場面でまさかの落涙しそうになりました…
『クワイエット・プレイス』シリーズとしてはかなりの変化球。思っていた映画と違うと言う人もいるかもしれませんが、本家とは違った魅力に溢れたこういうスピンオフは全然アリ!
強いて言うならアメリカ軍の強力な戦力を前にしてもエイリアンたちに太刀打ちできなかった場面があっても良かったと思う。そこは確かに物足りない部分でもあるけど、恐らくマイケル・サルノスキが描きたいのはそこではないと思う。
シリーズご愛嬌の突っ込み所もあるし、前日譚だからと言ってもエイリアンたちの全てが分かる訳でもないので、細かいことを気にする人には向いてない。そもそもエイリアンたちの目的とかを描く必要ある?仮に明かされたところで意味あるの?そもそもこのシリーズは格調高い映画というよりも比較的お金のかかったB級ジャンル映画なので、それくらいのスタンスで観るべき。
サルノスキファンとしてはパンフレットが未発売なのが非常に残念。ヒュー・ジャックマンとジョディ・カマー主演で『ロビンフット』をダークに描く次回作にも期待してます!!