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尊敬している父親は殺人鬼⁈『クローブヒッチ・キラー』の感想〜

点数 : 4点(5点満点)

ストーリー : 信仰を重んじる小さな町で貧しくも幸せな家庭に暮らす16歳の少年タイラー。ある日、タイラーはボーイスカウトの団長を務め、町でも信頼の厚い父親ドンの小屋から猟奇的なポルノや不穏なポラロイド写真を見つけてしまう。不審に思ったタイラーが調査を進めていく中で、父親が10年前に起きた未解決事件"巻き結び(クローブヒッチ)連続殺人事件"の犯人ではないかとの疑念を深めていく。タイラーは同じく事件を追う少女キャシーに協力を求め、真相を究明しようとするが…

監督 : ダンカン・スキルズ
出演 : チャーリー・プラマー、ディラン・マクダーモット、マディセン・ベイティ

感想

殺人鬼よりも信仰心が厚い保守的な町の方が怖いのは意図的?

思春期真っ只中の少年が殺人鬼を探す というストーリーからどうしても『サマー・オブ・84』と比較したくなる作品でしたが、良くも悪くも似て非なる作品だということをまずは最初に言っておきたい。

本作の脚本を書いたクリストファー・フォードはジョン・ワッツ監督の『クラウン』や『COP CAR/コップ・カー』、そして『スパイダーマン ホームカミング』の脚本家であり、それらの作品に共通するところは基本的に主人公は少年のジュブナイル物ということ。その無垢で無邪気な少年がある日、"怖い大人"と出会い、大人のダークサイドに触れてしまう… そしてその"怖い大人"は少年のせいで破滅する… というジョン・ワッツ監督の過去の作品と本作『クローブヒッチ・キラー』は共通するところが非常に多いです。

もし本作をクリストファー・フォードの盟友で長年組んできたジョン・ワッツが監督していれば、殺人鬼の恐怖がストレートに描かれた、もう一つの『COP CAR/コップ・カー』みたいな作品になっていたかも…

しかし本作は殺人鬼をしっかりと恐ろしく描いた上で舞台となるアメリカのケンタッキー州に位置する、とある小さな町の閉鎖的な住民たちや彼らの宗教観自体が危うい存在であり、これ以上ないほど薄気味悪く描かれている。

調べると"バイブル・ベルト"という聖書を字義通りに信じるキリスト教原理主義や福音派など"敬虔なキリスト教信者"たちが多く住んでいる地域。本作の登場人物たちは聖書に記されていること以外は"罪"という考えなので、ポルノ写真を見たり、持つことはその聖書の教えに反しているとされる。

主人公タイラーが父親に黙って車でガールフレンドとデートしていると、車内から緊縛された女性の写真をガールフレンドがたまたま見つけてしまったことから振られてしまい、挙句に次の日には噂話が学校中に知れ渡る… 普通なら女の子たちからは気持ち悪がられても、男友達からは笑い話にされると思う。しかし本作では親友からも距離を置かれ、まるで"罪人"を見るような目で睨みつけられる。

何よりも恐ろしいのが日曜日の礼拝に参加しない少女キャシーを"異教徒"として忌み嫌い、彼女は"改宗させるべぎだ"とまで… それを当然のように平気で言う。

そういう場面を見ていると次第に殺人鬼よりもこの町の方が不気味で異常に見えてくる。またそのような厳しい教えを守り、自分が持つ欲望を抑えすぎてしまったからこそ殺人鬼のような怪物が生まれてしまったのでは?と考えさせられました。

結末が賛否両論のようですが、個人的にはあえて多くを説明しないところがめちゃくちゃ不気味で、この重たい余韻が残る結末、とても良かったです。

強いて言うなら最後の主人公タイラーの決断について。タイラーに協力する少女キャシーはタイラーの決断に納得しているの?だって彼女は… どうしてもそこだけが腑に落ちなかったです……


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