CKD患者さんの過降圧による腎排泄薬剤の排泄遅延リスクを鑑みトレーシングレポートで報告した症例

今回も腎臓関連をテーマに致しました。
腎臓関連のトレーシングレポートしか書いてないかのように思われるかもしれませんが・・・ 実際は他のテーマも書いてるんですよ!
でも・・・ noteに書く内容を考えるとどうしてもこのテーマになってしまう。
疑義するまではないけど、なんかもやもやするし・・・ 
実際どうんなふうに考えて報告するべきなのか、実臨床ではほんとに悩ましいはずって思うから。Twitterをみてても、悩んでらっしゃる薬剤師さんは多いんだろうなって思うし、一つの参考事例として読んでもらえたらなって思うのです。なんかえらそうですよね・・・ すみません。
だけど、こんな事を10年以上は続けているのでちょっと偉そうに言っちゃってます。
何が正解かは正直わかりませんが、患者さんをできるだけ副作用から守って、だけどドクターの期待する薬効も出させたい。なんとかその両方を守るために、とにかく考える。
当局では、心疾患や腎疾患患者さんが多いので、定期的な採血をされているのか確認し、必ず腎機能チェックをしている。
だけど・・・この腎機能チェックが難しいから困るのよ!
ふだん一般採血時に検尿をされていない場合は、メタボ検診時での検尿の確認をしている。糖尿専門クリニックだと必ず検尿されて、連携手帳に尿蛋白の有無やアルブミン尿についても記載されているので、ホントに助かります。この尿蛋白の有無は糸球体の状態を知るのにとても重要なわけです。
話があちこちいってごめんなさいね・・・ 思いついたまま書いていってますので~ お許しを~
尿蛋白は、腎臓が正常に働いている場合、糸球体から漏れ出たとしても近位尿細管でほぼ完全に再吸収されるので、ほぼ検出されません。
尿中アルブミンが30mg/dl以上(尿中アルブミン測定は随時尿で尿中クレアチニン濃度で補正するケース、部分尿の測定、畜尿での1日アルブミン値測定がありますが、糖尿専門クリニックだと部分尿を採用されているケースが多く、腎臓内科専門だと尿中クレアチニンで補正されているケースが多い)の場合、糸球体の過剰濾過等によって糸球体の障害があるのか、近位尿細管の異常で再吸収ができていないのか・・・って事になります。
腎臓の働きを考える時、糸球体と尿細管とを分けて考える事が重要です。
糸球体の障害を進行させないためには、糸球体内圧を下げてやる事がポイントなので、そのためにARBやACEを投与し、尿蛋白が無い=糸球体の障害が無いならカルシウムブロッカーで良いわけです。
そろそろ本題に入りたいところですが~
その前に~まだちょっとだけ・・・
健診の際は体重や身長の測定もあるので、eGFRcreatの算出やCG式でのCCr算出にも役に立つのでチェックしておきたい。
では~
本題に入りますね。
今回の患者さんは、まだ関わって1年ほどの方。
もともとご家族が来局して下さって、そのご家族が紹介して下さって来局して下さるようになったのだ。
リウマチ患者さんで、生物学的製剤投与継続中。
腰椎の疾患もあり、ペインクリニックにも通院中。
大きな病院通院の場合、受診当日に採血や検尿をされてそのデータをもらってるケースが多いので、初診時に必ず検査について確認し、そのデータを必ず確認する。
この患者さんの処方内容ですが、とある大きな病院からは
NSAIDs ARB PPI メトトレキサート2mg フォリアミン5mg 
アルファカルシドール0.5μg
アザルフィジンEN500mg
現在中止だがプレガバリンも投与されていた。
ペインクリニックからは
芍薬甘草湯の屯用
初めて来局された時の採血データでのeGFR<60ml/min
カルシウム値やカリウム値の異常は認めなかった。
尿蛋白の有無は不明だが、低アルブミンは認めず、尿泡はご本人からの聴取で無かった。
まず、リウマチ患者さんなので、メトトレキサートやアザルフィジンはリウマチの治療のため服用継続して頂きたい薬剤。となると、なんとか腎機能を維持させたいわけです。だって・・・
メトトレキサートは尿中未変化体排泄率90%、アザルフィジンはCcr50未満だと急性腎不全やネフローゼ症候群などの重篤な腎障害の報告がある。
となると~ なんとかeGFRを50ml/min以上を維持させたいわけです。
さぁ~ここで問題になるのは~
腎機能評価をどうするかって事です。
一般採血で記載されているeGFRは標準化(体表面積補正されている、だいたい身長170cmで体重63kgの体格だとどの程度か)の数値なわけです。
だとすると、とても小柄の方の場合は、実際の腎機能としてはもっと低い可能性があるわけです。170cmで63kgに近い体格の方なら、その標準化eGFRを参考にしていいわけですが・・・ かけはなれた体格の場合、とくに女性だとその数値を丸々信じるのは危険なわけです。
通常、標準化eGFRはCKDステージの判断のために使う数値であって、投与量を考える時は個別化(体表面積未補正)で考えるべきではあります。
が・・・ ここでも問題が~
今回の患者さんのようにリウマチ患者さんで生物学的製剤まで投与されている場合、筋肉量としては同年代の方より低下しているかもしれません。
ただ、歩き方などをみたり、日常の生活状況を確認して、その活動に問題がなさそうなら、採血でのクレアチニン値をそのまま信用してeGFR算出して良いかなぁ~と考えます。
でも、クレアチニン値が0.6未満ならそのまま算出は危険です。
その場合どうするのか・・・
これはホントにこれからの課題でとても難しい。
可能なら、シスタチンCを調べてもらえたらと思うけども、甲状腺機能低下や薬剤によって変動してしまう事もあって。あとは末期腎不全だと頭打ち。
でも、ステロイド投与されていても5mg/日未満ならあまり影響ないのでは・・・という話もあったり~
今後また色々報告はでてくるのかなぁ~って思っております。
自立歩行が困難な患者さんの場合は筋肉量低下の可能性が高いはずなので、できたらシスタチンCを調べてもらえたらなぁって。
じゃぁ、今どうするのか・・・
体重がわかるなら、CG式で採血でのクレアチニン値+0.2で算出(CG式は体重で左右されるので標準の体重よりかけ離れると過小評価や過大評価につながる)、身長や体重がわかるなら個別化でのeGFR算出だがクレアチニン値はランドアップで0.6として算出してみる。数値に差はあるが、その数値をみて、なんとなくその患者さんの数値として妥当かな?って思うような数値が出てきますから~ 
って・・・ 勘を頼りにするのか!
もう、このなんとなくって感じはわりと重要だったりします。
あとはその推移です。点で見るのではなくその動きを観察するという事が重要だと思ってる。
もうほんとに長くてすみません。語りたい事が多すぎて、どうしようか迷って迷って・・・
大事なのは、今の患者さんの腎機能の状態にその薬剤の投与量が妥当なのかどうなのか・・・ 
正直腎機能の評価は推定でしかないので~
今までその投与量でとくに副作用らしき兆候がないのならば、その時点での心配は無いのかなぁと。
大事なのは、この先の事。腎機能は健常人でも年齢とともに低下していくわけですから、少しでも維持させるために、腎毒性のあるものは避けたいわけです。
なので、この患者さんのケースで一番最初に手をつけたのは、やはりNSAIDsの減量。2錠分2から1錠分1に数ヶ月かけて減量しました。その後、処方元のドクターも患者さんにNSAIDsを止めてみる?
とおっしゃって下さり~
それまでに、何度か減量提案をトレーシングレポートでしていたのだ。1回で何もかも上手くはいかない。減量後も痛みの悪化は認めず。
NSAIDsは腎虚血を招くわけですから、糸球体濾過量が低下し、その結果腎排泄薬の排泄遅延により、その薬剤が蓄積して副作用のリスクが上昇。
そのターゲットがメトトレキサートでありプレガバリンであるわけです。
ARBも服用しているとなったら・・・ 気温上昇で発汗量が増えたり血管拡張で血圧が低下すると~ さらに糸球体内圧は低下するわけです。
だってARBは輸出細動脈を拡張させて糸球体内圧を低下させるから腎保護(糸球体の障害を回避して糸球体から尿細管への蛋白流出を低下させる)なわけです。
なんだけど、それがいきすぎると、糸球体濾過量が減りすぎて、腎排泄薬剤の濾過量が低下してしまう。となると、腎排泄薬剤の副作用のリスクが上昇。
継続させたいメトトレキサートのリスクってなんなのか・・・
色々な副作用がありますが、AKIリスクって事で言いますと、糸球体濾過されて近位尿細管から遠位尿細管や集合管に至るまでにすんごい濃縮されて、溶解度が低いために結晶として析出して尿路を閉塞してしまうんですよね・・・ これが腎後性AKIです。
こうなってくると・・・ 糸球体内圧を下げすぎないことが重要って思いますよね。
そもそも、ARBがほんとに必要なのか・・・ 
患者さんに伺うと、診察時にたまたま血圧が高く「飲んでみる?」くらいの感じで処方されてたみたいで。
自宅での血圧測定や家庭血圧の確認もなく継続となっていた。
気温上昇してくると間違いなく血圧低下するわけだし・・・
実際家庭血圧を測定して頂いたら・・・ 起床時血圧が110mmHgくらいって事がわかった。こりゃいかん。
CKDガイドライン2018に収縮期血圧110mmHg未満への降圧は避けると記載されているし、糸球体内圧を低下させすぎるリスクが高くなるから。
なので~ ARBの減量を提案する事にしたのです~
もし、高カルシウムもあったら、ビタミンD剤も減量提案致しますし~
プレがバリンはすでに中止に至りましたし~
プレガバリンは、ペインクリニックの医師のアシストもあって中止できたんですよね~ ブロック注射もしているから必要ないと思うけど~って患者さんにもおっしゃって下さったから、助かりました。実際一気に中止になったのだけど、全く驚くほど何もなく・・・ 
今回ながいね~
めっちゃ長くなっちゃいました~
ではでは~ 
トレーシングレポートの内容をそろそろ~

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