たった2センチ、されど2センチの重みを感じたライブ
これから書くのは藤井フミヤさんについてですが、きっと歌うことを仕事にしている人すべてに、通じる部分があるんじゃないかと思っています。歌っている人を推している方々に読んでいただけたらうれしいです。
デビュー40周年を迎えた藤井フミヤさんのアニバーサリーツアーが開催中です。昨年9月から始まったこのツアー、全国47都道府県を回り、6月まで続きます。
3月23日の神奈川県民ホールでの公演に参加してきました!10月の大宮ソニックシティ、12月のLINE CUBE SHIBUYAに続き、3回目の参加でしたが、これまでとはまったく違った気持ちで、今回のライブに臨んでいました。
ライブに向かう気持ちを大きく変えたこと、それを受けてのライブの感想を書きたいと思います。
1987年から2024年に戻ってきた
今回のセットリストは、大きく4つのパートに分かれています。「第一部:チェッカーズ」、「第二部:弟の尚之さんとのユニット F-BLOOD」、「第三部:ソロ」、「第四部とアンコール:ミックス」という構成です。
第一部には、チェッカーズ時代の大ヒット曲が並んでいます。そのなかには、今月初めに観たチェッカーズのライブ映画で歌われた楽曲もありました(ライブ映画の感想はこちら)
チェッカーズを知らない人のために、1曲貼っておきます!
37年の時を超えて聴くチェッカーズの曲。
歌い方が違っていました。ひとつひとつの言葉を噛みしめるように、丁寧に届けようという気持ちが伝わってきます。
昔から歌詞がはっきりと伝わるような歌い方だったけれど、さらに進化していました。
元祖フェロモン系と言われたチェッカーズの郁弥くん。歌声にも、ふとしたしぐさにも色気がありました。
郁弥くんが歌うラブソングの中のヒロインは、いつも私(と思っている女子が日本中にいた)。突き放したかと思えば、優しくなぐさめてくれる。ふれたらやけどしそうで、振り回されて傷つけられそうで、それでもやっぱり好き!身もだえながら聴いていました笑
現在61歳のフミヤさん。今もその色気は健在ですが、優しく包み込むような穏やかさがあります。
昔は恋愛ソングにしか聴こえなかった歌が、今では親子の愛を歌ってるようにも聴こえました。同じ歌でも、時代を超えて、歌い手と受け手、それぞれの心情や状況によって変わるんですね。
フミヤさんはよく「歌はタイムマシンだ」と話していて、まったくそのとおりだなと思います。これまでのライブでは、チェッカーズの歌を聴いて瞬時に、中高生だった頃に飛んでいました。
でも今回、私の中では、チェッカーズのライブ映画から続いていたから、逆に現在に戻ってきた感じがしたのです。今のフミヤさんが歌うチェッカーズの歌を、今の自分で深く味わえました。
わずか2センチにすべてがかかっている
もうひとつ、ライブの見方を変えたのは、3月9日にNHK-BSで放送された、フミヤさん密着のドキュメンタリーでした。
ツアー前、セットリストを考えるフミヤさんの様子から始まり、プロデューサー、バンドマスターとの打ち合わせなど、こんなところまで見せてくれるの!と小躍りしたくなる密着具合でした。
しかし、今まで見たことがないフミヤさんの姿を見ることにもなりました。
若いと言われるフミヤさんにも、年齢による衰えは否応なく襲ってきます。なかなか疲れがとれない、身体のあちこちに痛みも出ます。なかでも歌い手として致命的なのが、喉の不調です。
番組の中で、フミヤさんが言っていました。
「たった2センチほどの声帯に、自分と家族とスタッフとファンのすべてがかかっている」
実際、昨年10月には、一度はステージに上がったものの、喉の不調を理由に、本人から公演中止を申し出たこともありました。
後日、「プレッシャー以外のなにものでもない。でも前に進むしかない」と話していました。代えがきかない存在だから、最終的には自分がどうにかするしかない。プロとしての強い覚悟を感じました。
ステージ上で光を浴び、歓声を集めている裏で、孤独な戦いを続けているのです。
フミヤさんはこれまで、弱みや努力しているところを一切見せない人でした。いつも華麗で軽やかで、なんでも器用にさらっとできちゃうんだろうなと思っていたから、見てはいけないものを見てしまった気がしました。
第三部のソロの楽曲は、ミディアムバラードが中心です。その中でも特に、力強く歌い上げる「Go the Distance」を聴きながら、フミヤさんが背負ってきたものの大きさを感じたとき、歌う姿がにじんで見えました。
ライブに行けるのは当たり前ではない
フミヤさんは、デビューしてから毎年のようにライブツアーを開催してきました。私の記憶では、ツアーがなかったのは、チェッカーズが解散した翌年の1993年だけだったと思います。だから、ライブがあるのは、当たり前のことでした。
だけど、全然当たり前じゃなかった。フミヤさんの強い覚悟とたゆまぬ努力があるから、こうして私たちはライブに行けるのです。あぁ〜なんて幸せななことだろう!
ドキュメンタリーで観たフミヤさんの姿に思いを馳せながら参加したライブは、これまでとはまったく違って見えました。
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