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【5分小説】 侵略計画 #1

1話5分ほどで読めるエンタメ連続小説です。サクッと読める内容になっております。
それでは肩の力を抜いてどうぞお楽しみください。

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 どこの誰か存じ上げないが、これをあなたが読んでいるという事は、私の侵略計画が一歩成功に近づいているということだ。
 そしてこれを読んでいるあなた(人か動物か植物かはわからないが少なくとも文字を読める知能は持ち合わせている『なにか』なのは間違い無いだろう)がこの星の侵略をすることに賛同してくれる事を願う。なぜかというと、私は野望があってここにいるのだ。早い話、一緒に侵略を遂行してくれる仲間を探しているのだ。賛同してくれるものは私のことを何とか探し出してほしいのだ。
 まず、探し出してくれと言った所でここがどこなのかも上手く説明できないし、見つけてもらう方法も提示できないし、そもそも安全が保証できるわけでもない。なので、いわば絶望的な状況と言えるのかもしれないが、それでも私はこの体が最後の一息を吸うまで希望を捨てずに生きたいのだ。そしてあなたに見つけてもらいたい。
 そこで、私の体験記をここに記そうと思う、その中で私の居場所のヒントを得られるかもしれない。それを頼りに何とか私を見つけ出してはくれないだろうか?そして仲間になってはくれないだろうか?
 もちろん仲間になってくれた者には、大仕事をするための契約金をたっぷりと支払うつもりだ。あなたと同じ通貨を私が持っているかはわからないが、万が一違ったとしても何かしらの合意を見つけられるかと思う。

 まぁ、ぐだぐだと書いていても仕方がない。早速体験記を記そう。

 この星に上陸した日

 私自身がどこからきたかというと、とにかく遠くだ。今、目の前にしている文字盤では書き表せられない名の星からきた。ある時宇宙探査をしていた私とそのクルーはいつものように研究のために飛行していたのだ。しかし我々探究者を乗せた宇宙船のエンジンが壊れてしまい、通常飛行範囲から大きく外れてしまったのだ。他の仲間は脱出ポッドから逃げられたのだが、何と私のポッドだけなぜか発射せず、私は船に取り残されてしまったのである。
 何日間漂い続けたのだろう。もう死ぬ、希望もへったくれもない、そんな思いの中でいたある時、突然にドスンと大きな衝撃を感じたのだ。そして物凄い強い揺れを感じたかと思うと再びシーンと静寂が戻った。そして気がついたのだ。重力を感じる・・・。そっと宇宙船の扉を開けた。するとそこには・・・。
 物凄い大きな、見たことも無いような醜い生き物がいたのだ。言葉で説明するのは何とも難しいのでイラストで説明させていただきたい。ちなみに私は非常に精密な設計図を描く能力を高く評価されている。きっと、似ていることだろう。その生き物がこちらだ。

私が初めて見たこの星の生き物。見るに耐えない醜さだ。

 お分かりいただけるだろうか。なんとも醜く、信じられない事にモサモサしたものが頭と思われる部分にちょこんと生えており、目だと思われるものはまあ私と似ているとしても、目の下には二つの穴(きっと鼻なのだと思う)からは謎のネバネバしていると見受けられる液体が垂れ下がっていて何とも気味が悪いのだ。あれは何だというのだろうか。ネバネバしているということはあれで何かキャッチするのだろうか・・・。
 とにかく、不細工なその生き物はしきりに私に向かって「ソラマメ」と言ってくるのだ。それが何かはわからないが、私はそのソラマメとやらに似ているということだろうか。
 とにかくその不細工な生き物から逃げなければと思い私は逆方向に、残り少ない力をありったけ振り絞り走り出した。しかし、すぐに逃亡は失敗に終わるのである。顔面から思い切り何かにぶつかった。私は目の前を見上げるとそこにはガラスが聳え立っているではないか。そのはるかてっぺんに扉がついており、不細工な生き物がそれを開け手を差し込んできた。
 殺される。瞬時にそう思い私は頭を守るように縮こまった。すぐそこまできている、もうダメだッ!
 『その瞬間』を待つ私の恐怖も虚しく待てど暮らせどソレは訪れなかった。代わりに薄目を開けたその先には何やら平たいモノが置いてあった。外の生き物も同じような平たいモノを口に運んでいる。どうやら食べ物のようだ。食べ物だと悟った瞬間に私のお腹が情けなく、ぐぅ、と鳴った。こんな絶望的な状況だ。どうせ死ぬなら空腹で死ぬも食べ物のせいで死ぬも一緒だ。そう思い一口齧ってみると・・・。
 今までに感じたことのないくらいの美味が口いっぱいに広がった。ちなみに後から知ったのだが、これはポテトチップスという名の食べ物らしい。こんなにも美味しいものがあるとは心底驚きだ。その時は余裕がなくてこんな事は考えなかったが、のちに私は誓ったのだ。ポテトチップスなるものを食料としているこの星を必ずや侵略してみせると。製造技術をしっかりと盗まねば。そう、私は結構な野心家なのだ。醜い生物が与えたそのちっぽけな(と言っても私の身長の3倍くらいはあったが)食材が私の世界を180度変えたのだ。
 これが私のこの星での初日であり、そして固く抱いた決意の経緯なのだ。一旦ここまでとしよう。また隙を見て続きを書く。

 ちなみに私の似顔絵も残しておこう。

これが私だ。

 もちろん自分ではこんな事は微塵も思っていないが故郷では、私が容姿端麗だからと周りが放っておいてくれないのだ。

 さらば、まだ見ぬ友よ!会える日を楽しみにしているぞ!

 それまで、サヨナーラ!


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奈緒美フランセス
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