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なんちゃって役者 本番、とにかく乗り切れ!

これは、なんちゃって役者をしていた時の記録。役者を辞めた後、確かに何も残らない。残らなかったけれど貴重な経験を沢山させていただきました!出会った方達、経験、かけてもらった言葉達、全てに感謝を込めて。ちょっとアングラな世界へようこそ。

・・・とか偉そうに書きながら実際はへっぽこエピソードのオンパレードです。楽しんでいただければ本望です!

※実体験を元に書いておりますが、エンタメ性を高めるために事実よりも盛った内容になっております。

Here we go!!
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①『なんちゃって役者 爆誕
②『なんちゃって役者 悪魔の本読み
③『なんちゃって役者 いざ稽古突入
④『なんちゃって役者 「ねえ。」の猛特訓』の続きです!

いよいよ迫ってきたビッグデイ、本番3日前!午前中1時間だけ稽古場にて練習をし、その後にみんなで劇場に向かう算段となっていた。私も気合は十分に入れて早めに家を出る。常に「ギリギリ行動」のクイーンなのにこういう時だけは早く行動するタイプだ。遠足の日は一番に集合場所へついている、クラスに一人はいる、あの子だ。

本番が近づいているが故にドギマギやら、ヤキモキやら、ヒャッホイやらが入り混じった気持ちを抑えられずに稽古場へと向かった。しかし、ここで思わぬ事態が発生した。私の悪い癖が悪魔のようにじわじわと出てきた。それは突然前触れもなく最悪の事態を考え出してしまうこと。

稽古場にて一回は「芝居が良くなって来たね」とは言ってもらえたが、それも一瞬の出来事であった。残りの稽古期間中はやはり基本的に「ダメ」が続いた。

稽古開始時間役45分前。最寄りの駅のトイレに入った瞬間に考えてしまった。稽古場に入った瞬間に、全員が「何でお前はここにいるんだよ」とアンウェルカムな空気が漂うのではないか。本当はみんな、私なぞいなくなった方が喜ぶのではないか。はたまた本番の日には、自分が舞台上に出た瞬間に大転けして空気が凍てつく様、セリフが一個も思い出せなくなり時間が止まる様、つまづいて舞台から転げ落ちる様、衣装が何かに引っかかって幕に引っ込もうとしても引っ込めずにモタモタする様、何でだか知らないが一人だけ異質な存在になってしまい観客も共演者もしらけきってしまう様、そんなものがとめどなく溢れた。

とにかくそんな類の想像だけは次から次へと滝のように流れてくる。そして気づいたら私の目頭が熱くなるなんてもんじゃない程に、ドバドバと液体を放出させていた。そう、駅のトイレで、稽古開始30分前に。(一応個室には入っていました。)

ここで帰ろうか。大きな迷惑をかけることにはなるけれど、もう芝居をするなんて馬鹿な真似は二度とせずに、消えゆこうか。なんて考えがよぎる訳だ。しかし、すでにへっぽこ故の迷惑は信じられないほどかけているので、そこに被せてドロンはまずい、流石に不味すぎる。それくらいは私でもわかっていた。

何とか目頭を落ち着かせ、目の腫れが引かぬままに稽古場へ向かった。

到着30分遅れ・・・。家は早く出ているんですがね、現場は遅れるという、あ〜らま七不思議!(いや、ただトイレにこもっていただけなんですがね。)恐る恐るドアを開けると、案の定怒号が飛んできた。

・・・わけでもなく意外にも冗談めかしに全員が、「おいー!遅刻すんなよ〜、アハハ。」「社長出勤の20代!偉そうだな〜!」と軽い口調でそれぞれに言った。和やかなムードに拍子抜けする私。何をそんなに怯えていたんだろうか。

そんなこんなで、稽古を終わらせ劇場へ。

大好きな舞台の世界が詰め込まれている劇場!その扉を開け一歩入るとそこは・・・!スタッフが一生懸命にセットを組み、照明さんが灯りを作り、音響さんが音作りをして、舞台監督さんが全体の指揮をとる、そんな裏側の世界がそこには広がっていた。表の世界も輝いているが、裏の機械仕掛けを見られるのも何とも言えぬ高揚感をもたらすのだ。自分がプロジェクトの一部に携われている感じが心地いいのだ。

楽屋作りをしたのちに舞台上の準備が整ったのでステージへと足を運んだ。そう、ここに立ちたかったんです、スポットライトを浴び、みんなの注目を浴び、拍手喝采を浴び、ライトの元で滝のように出てくる汗を浴び・・・。そこの劇場は天井の低い作りになっているらしく物凄く熱かった。

稽古場では、どんなに頑張ってもどうせ自分は上手くできないだろうと、自信喪失をしてしまっていたのだが、舞台に立つだけでテンションがじわじわと上がってきた。下腹部あたりがらエネルギー玉がだんだんと大きくなっていっているような感じとでも言うべきだろうか。

場当たりと言って立ち位置などを確認する作業がスタートした。シーンを細切れにしてやるのだが、立ち位置を確認するのが目的なのでぶっちゃけ誰も芝居は見ていない。そこで、それをいい事に私は今まで言われた「ダメ」をこの際一切忘れて芝居をした。どうせ誰も見ていないんだから。

でもこれが、めちゃめちゃ楽しかったのだ。上手くできなきゃいけないという、自分に課していた一切をポーイと捨てた瞬間に、芝居が恐ろしい程に楽しくできた。もちろん、だからと言って格段に芝居が上手くなった訳ではないが、枷が外れたのは確かだった。現に楽屋に戻った後に、両隣に座っていた役者さん達が「今までで一番良かったよ。」「あの調子で行けば全然問題ないよ。」と言ってくださった。小さな豆粒ほどの自信が芽生えた瞬間だった。

さて、次の日。少しの自信を得た私は、いけるかもしれないと、本番に対する恐怖よりも楽しみが勝って来ていた。しかし、長くは続かなかった。

あるシーンで音楽に合わせて動くシーンがあった。この音楽がまた何とも分かりづらい曲でテンポが提示されずに、ビィーーーーーーーーーッ、はい!と言う具合にいきなり、「はい!」の合図が入るのであった。私はどうしてもそれが掴めずに一人だけ早く飛び出してしまっていた。一応音楽は小さい頃から慣れ親しんできた身としても、掴めない事により一層ショックを感じた。何度聞いても、何度練習しても合わせられなかった。

そして、あれよあれよという間に本番の日が!

しかし、ステージマジックはとても偉大なのである。どんなに気分が落ち込んでいてもライトが点ると気分メーターは自然と上昇した。

子供のような発想だが、ここまできたのならばいくら足掻いても、見違えるような変化はもたらせない。ならば、とにかく一生懸命にやる事にした。間違えてもいい。見にきてくださっているお客さんが一人でもいるならば、どんな理由でもへっぽこでも劇団の方が選んでくれてプロジェクトに加えてくださった事に感謝して、120%の力を出して出して、出し切る事に集中するのみだ。

4日間、7ステージ。とにかく落ち込むことは考えずにやった。完全に力技だ。

音楽はタイミングがわからないので共演者の背中をガン見してその人が動いた瞬間に一緒に動いた。

セリフに変な訛りがついてしまっていたのだが、それは他の共演者に読んでもらったり、常識的に考えたらどんなイントネーションで言うだろうかと考えながら発した。

中身の詰まったセリフを。とにかく中身が何なのか、丁寧に考えろ。

そして全ステージ終わった。下手ながら、自分の出せるものは全て出したと思う。

最後に「やればできるじゃん。」との言葉も頂けた。

さて、お気づきの方もいらっしゃるだろうが、私はかなりの「悲劇のヒロイン」な人間であった。

私はとにかく自分を責める人であった。「自分を責める」という行為は中々厄介な奴なのだ。

自分の子供の頃からの生きてきた軌跡を考えると、私は「自分を責める」と言うことは小学生になった頃からすでにやっていたのではないかと思う。

宿題を忘れてきた。ああ、なんで宿題を忘れるんだ、私の馬鹿。
発表会で振り付けを間違えた。ああ、なんで間違えたんだ、私の馬鹿。
カレーを作ろうとしたのに分量を間違えて不味くなった。ああ、なんでカレーすら作れないのだ、私の馬鹿。
寝坊した。ああ、なんで朝の一つも起きれないのだ、私の馬鹿。

自分にネガティブな言葉を投げかけまくるような瞬間は多々思い浮かぶ。その言葉たちは、垂れながされている真っ黒な絵の具のように、全身をネガティブ色に染めていくのだ。そしてやがて表面が固まり、前に進みづらくなるのだ。いや、むしろ固まって進めなくなる。

ネガティブな思想の中には、じゃあどうすれば良いのか、という解決策は一つもないのだ。自分を責めると言う行為は、光を奪い、思考停止へと向かうのだ。

そんな沼にはハマりたくないのに、ネガティブ思考は不思議とやめづらい。なぜかといえば、悩んでいる風の事をしているので、自分は苦労していて、「こんなにも頑張っているんです感」を出せるし、そんな「頑張る自分」ほど陶酔的で甘美なものはないのだ。でも全ては幻想であり、実際は何も成し遂げられていない。おまけに周りは非常に迷惑を被るわけだ。

自分が「ネガティブ陶酔の国のヒゲキノヒロ子ちゃん」だと気がついたのはだいぶ後であったが、「劇団 飛べ飛べブラザーズ」(仮名)に携わらせていただいた経験は後々、それの大きな気づきにつながったのは間違いない。感謝が尽きない限りである。

きっと稽古中に浴びた言葉の受け取り方を「私個人への攻撃」と知らず知らずのうちに変換しまっており、さらに私はその言葉を自分自身へとナイフのように突き刺した。きっと、受け取り方を変えていれば、今頃ハリウッドで引っ張りだこだったんだろうな〜。え、飛躍しすぎ??

その後は一切関わりがなくなってしまったが、今でも活動を続けていらっしゃる様なので、今度こっそり見に行ってみようかなと企んでいるところだ。

しかしバレたら気まずい。どんな顔をしていればいいのかとんと見当もつかないのだ。やはり今だに小心者なのは変わらないのだ。トホホ。


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