【5分小説】 侵略計画 #9
1話5分ほどで読めるエンタメ連続小説です。サクッと読める内容になっております。
それでは肩の力を抜いてどうぞお楽しみください。
3cmの生物が地球侵略を目論むお話です。果たして成功するのか!?
第一話から読みたい方はこちらから!↓↓
_________________________________
9、ミネチャン救出
床に叩きつけられる!機体が粉々になる!
ギュッと目を瞑った途端、いきなり機体がふわっと浮いた。
・・・なんだ?何が起こった?でもとりあえず助かったようだな・・・。
何が起こったか分からずに窓の外をキョロキョロと眺めていると、機体の上に巨大な傘状の布が見えた。どうやら安全装置が作動してパラシュートが開いたようであった。機体はそのままゆっくりと降下し、ガツーンと砂埃を舞い上げながら着陸した。
シートベルトを外し、恐る恐る外に出た。ミネチャンが横たわっているのが見えた。
「ミネチャン!」私は彼女の名前を呼びながらそちらへ駆け寄ろうと足を踏み出した。
「そこで止まれ!動いたら機体と同じようにレーザーで撃つぞ!」
聞き覚えのある、いつもならばダンディで低い声が、遠くから叫んでいるからか普段より高い音で私の耳に届いた。今一番聞きたくない声。私は口元を歪めながらゆっくりと振り向き、声がしてくるのはどこかと探した。
「こんな時にどこへ急ごうってんだ?」遥か上空にある、普段ポテトチップスのしまってある棚の戸が少し開いている。ヒゲマメの部下が少し開けて抑えているようだ。そしてその隙間からヒゲマメがメガフォンを用いながら叫んでいた。目を半月のように鋭く細め片側の口角をキュッと上げているのがかろうじて見えた。悪と化したヒゲマメに向かって私はありったけの力で叫んだ。
「騙したな!!故郷の星は全然滅びてなどいないではないかー!」
「何が騙した、だ!マメ聞きの悪いことを言うな!」ヒゲマメは目を見開いて凄んだ。「お前こそ騙したも同然ではないか!この星の征服を企んでいたのはお前の方ではないか!仲間を募っていたのもお前だろう!それを見つけて私は遥々ここまできたまでだ。どれだけの労力と資金を注ぎ込んできた事か!なのにきてみればお前は征服を渋ってやがる!」
「確かに、ヒゲマメ殿のいうとおりだ。この星征服は私が言い出した事。ここにいる間に当初とはだいぶ考えが変わったのも認める。しかし、そうだとしてもだ、嘘は酷いじゃないか!」
「何をいうか!それくらいしなければ、成分を聞き出せないじゃないか!現にお前はすぐにしゃべった。同士が危険に晒されていると思った瞬間にな!」
「にしてもやり方が汚いぞ!」
「汚いもへったくれもあるか!むしろあれくらいの事も見破れないお前が、征服なんてできるわけがない!だから大人しく我々に従えー!」
ヒゲマメの言葉は鋭利な刃物のように私に深くズブズブと刺さっていった。彼のいうとおりだ。私が元凶だ。私が全てを呼び込んだのだ。言い出しといて、やっぱりやめましょうと言える立場でも段階でもない。罪悪感が一気に私を支配した。
「私の思い描いていた征服はこんなものではなかった・・・。」俯いたまま私はボソリと呟くように言った。
あ?なんて言った?とヒゲマメ殿は叫んだ。
「最初は確かに征服を企んでいた。しかし、犠牲者を出してまでとは・・・。」
え?だから聞こえんのだ。もっと声を張り上げろ!と叫ぶヒゲマメを非常に小うるさく感じた。
「ヒゲマメ殿の言うとおりです。これは私が企んだことです。」私は再び声を張り上げた。
「お、やっと聞こえるぞ!少しは話が通じるようになったか?」
「そこで、提案があります!」
「はあ?提案だと?」
「ヒゲマメ殿に・・・。」
「なんだね?そんな『タメ』なんていらん!」
「いえ!これは私の一大決心なので簡単に言えるようなことではありません!なのでタメは必要なん」
「さっさと要件を言えー!」
あぁ・・・、そうだな、くっちゃべってる場合ではない。私はかつてミネチャンのタブレットで見せてもらったボクシング試合の選手のようにファイティングポーズをとってみせた。
「ヒゲマメ殿!ガチンコ勝負だ!殴り合いで勝った方がこの星を頂く!負けた方は帰る、でどうだ!降りてこーい!」
ヒゲマメ殿はゆっくりとメガホンをおろした。少し考えるように間をおいた後に冷たく言い放った。
「撃て。」
私は逃げる間もなくレーザー波を浴びて意識を失った。
「・・・マメさん、ソラマメさん、ソラマメさん!」
ハッ!
私は久しぶりに酸素を味わったかのように大きく息を吸い込み目を覚ました。ハナマメが眉根を寄せて心配そうに私を覗き込んでいた。
「ソラマメさん、気が付きましたか?」
どうやら私は再び母船に連れ戻されたようであった。起きあがろうとしたら頭に鈍い痛みが走った。
あ、動かない方がいいわ、とハナマメが私の体を抑えた。「ヒゲマメ殿を呼んできます。」去ろうとするハナマメの手をすかさず掴んだ。しかし掴んだ自分の手を見て私は驚愕した。私の手首からチェーンがぶら下がっていたのだ。
「なんだこれは!?」チェーンはベッドに繋がれていた。それを引きちぎろうと激しく手を振るもあたりに冷たくガチャガチャという金属音が鳴り響くだけであった。
「ハナマメさん、このチェーンを外しては貰えませんか?」私は喉の奥から絞り出すように言った。「このままではダメなんだ。このままでは・・・。」
「ごめんなさい。ヒゲマメ殿から、あなたは長年の孤独で狂ってしまったからいうことを聞いてはいけないと言われているの・・・。」ハナマメは痛めつけられた子犬でも見るかのような視線を私に送った。
ヒゲマメめ・・・。
ハナマメは私の手をそっと振り解くと扉に向かって歩き出した。
「あなたのお子マメも・・・、この星に来てますよね?」ハナマメは足を止めゆっくり振り向いた。相変わらず不安そうに私を見ている。私はさらに捲し立てた。
「この星の生物は非道で駆逐されるべきだと、ヒゲマメ殿はそう言ったのかもしれない。でも、それは間違いだ。確かに最初は危ない目に遭った。しかし心優しい子供の巨大生物が救ってくれたんだ。私は6年間、その子に守られ生きてきた。孤独など一時たりとも感じた事はない。
そんな心優しい子を、真っ先にヒゲマメは空っぽにしようとしているのだ。
確かにママは私を排除しようと怖いことをしてきたが、今思えばそれは子を守るための行動ゆえ。私にとってにっくきママでも、ミネチャンはママが大好きなのだ。そんな形でママに苦しみを味わってほしくない。
貴方ならば、子を失う辛さがわかるでしょう?自分の子が空っぽにされたら許せないでしょう?」
ハナマメは俯いたまま黙っていた。
「巨大で別の種族だからって、私たちが彼らの生活を、星を脅かしていい理由になんてならないんだ。」
ハナマメは怯えた目で私を見ながら口を開いた。「でも殺されそうになったんですよね?」
「そうだが、状況が変わったのだ。今では」
「じゃあ、なんで最初からそれを言わなかったんですか?ここの星を奪うべきではないと、征服はするべきでは無いと。そもそも、今乗っ取ろうとしている巨大生物の事は隠していましたよね?なんでですか?」
「そ、それは・・・。」
ハナマメの目には、怒りとも取れる色が滲み始めていた。
「貴方こそ、何か良からぬ事を企んでいるんじゃ無いんですか・・・?」
「そんな事はない・・・。私はただ、自分がすごい奴だと認めてほしくて・・・。でも同時に、ミネチャンを傷つけてほしくなくて・・・。」
ハナマメは完全に疑いの目で私を見ていた。助けてくれ、と言おうと口を開けた瞬間に扉が開いた。そしてヒゲマメ殿が部下を連れて入ってきた。
「目が覚めたか、裏切り者め。」
「私を離せ!」
私のカッコ悪い姿を嘲笑うかのようにヒゲマメは鼻でふんっと笑った。
「明日の正午、あの巨大生物の体内で毒が完全に回り切った頃、コントロール隊を送り込む。そして最後の仕上げに脳内にコントロール受信機を埋め込めば、完全にこちらの物だ。
ハナマメ、引き続きこのモノを監視していろ。
そしてソラマメ、お前はそこで指を咥えてその様子を見ていろ!あとでモニターを持ってくるように手配しといてやる。はっはっはっ!」
やめろー!と叫ぶ私の声も虚しく重たい扉はガチャンと閉じられた。
__________________________________
お読みいただきありがとうございました!
いよいよ次回は最終回!!・・・の予定!
小説は毎週火曜日と土曜日に更新!!