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TOEIC申し込み戦争 with コロナ

時計は11:55をさしていた。

あと5分で申し込みが始まる。

わたしはパソコンの前で息をひそめる。


1ヶ月前の申し込みでは

「ライブの申し込みじゃないんだから」

というTweetをみた。

「ライブの申し込みじゃないんだから」

そうだ、そうだ。
安室ちゃんの引退ライブでもあるまいし。


それでも、これに全てがかかっている。
わたしの日本での再就職は。


だから、獲物を一匹も逃さないような気持ちで
事前に申し込みのシュミレーションを入念にしておいた。


もうかれこれ2時間前からログインを試してみたり、
自分のIDとパスワードを確認してみたりした。
スマホからもログインできるか確かめておいた。


念には念を、
ログイン状態のページ画面を2つ出しておいた。


時計はついに12:00をさした。


今だ!!!


まずは既にログインした画面から試す。
オレンジ色の「インターネットから申し込む」ボタンを押した。

ドキドキした。
まばたきすることも、忘れた。

しかし、画面の上のまるい部分がくるくるまわるだけだった。


もうひとつのログインしておいた画面でも試す。
すると今度も画面の上のまるい部分がくるくるまわった。


焦った。
これは困ったことになった。


TOEICを受験したい。


なぜなら、オーストラリアから帰ってきて3ヶ月経っているというのに
就職先が決まらないからだ。

知らない方のために少しわたしの直前のことを話すと、
2年間ワーキングホリデーでオーストラリアにいたのだ。

コロナとVISAが切れるタイミングも重なり、
3ヶ月前に帰国することとなった。

英語に関しては、

英語力ゼロの状態からわたしなりに工夫した2年間を過ごし、
TOEIC800点くらいは取れるかな?くらいになったのでは
という自信のないわたしの体感で、
実際はもっと低いかもしれないし、ひょっとしたら、高いかもしれない。

要するに
紹介する派遣会社の方や採用するその企業の人からしたら
扱いにくい求職者であった。

この3ヶ月で10社落ちているわたしはさすがに精神的に悲しくなっていた。

コロナで失業者が増え、英語のスキルが高く経験豊富な人が求職している状態らしい。
コロナは海外と取引していた企業の業績をストップさせたのだから無理もない。

「今回予想より多く応募がきてしまったんですって。
だからTOEICの点数で採用させて欲しいと先方に言われてしまって。
海外に実際に行っていた方なのに申し訳ないです」

と丁寧に謝ってくださる派遣会社の方もいれば、

「この求人はスキルと経験を求められているんですね。
ワーホリってねぇ、ちょっと。。。
大学院卒とかならまた変わってくるんだけどねぇ。」

と、鼻で笑いながら”そんなスキルで応募してくんな!”とでも言いたいのだろうと受け取ってしまえるくらいぶっきらぼうな断り方の人もいた。

人はそれぞれの目的のために仕事を任されているので
その人の目的とはかけ離れた陳腐なわたしの経歴でのこのこ応募してきたことが
その人にとってはただ無駄な仕事が増えてしまっただけなのだろう。

ただ、その求人には未経験歓迎と書いてあった。

どこへ向けていいのかわからない
いきなり突き放されたようなこの感情を
経歴に烙印でも押されたような感情を
持て余したまま、就職活動をし続ける。


そんなことにも疲れ果て、
行き着いた先が
このTOEIC受験だった。


だから、今日は神経を研ぎ澄ませた。
この就職活動をスムーズにいかせるために。


でも、
結果は、
「アクセス過多のため、アクセスできません。」


意地になって「TOEIC ログイン」でググって
ログインページにアクセスしようとすることを繰り返して2時間が経過した。


画面は相変わらずアクセスできないままだった。


そしてついに、アクセスできません画面が変わるタイミングがやってきた。


そこには
「本日は申し込みを中止させていただきます」
との文字があった。


あぁ、あの2時間はなんだったのだろう。
今日、TOEICの受験料くらいは稼げるバイトを変わってもらったのに。


ま、そんな日もあるさ。


わたしのワーホリ後の就職先は見つかるのだろうか。


今日、わたしと同じようにパソコンの前で5時間くらい
このTOEIC申し込み戦争に必死になっていた人はどのくらいいたのだろう。


人生は有限だ。


TOEIC申し込み戦争に必死になっていた人が
TOEICで成果を出すか、
TOEIC以外の方法で英語力を示しやすくなるか、
またはもっと素早く正確に英語力を測れる道具なんかが発明されたら
今日の努力も少しは報われるだろうか。


とにかく、今日わたしと同じように戦った人がいたのなら、
今日は頑張った自分を寝る直前に褒めてあげよう。


というかわたしが褒めます。全力で!!


よくがんばりました!と。


今日は皆さんよくがんばりました。


このあとは粛々と、英語力アップしていきましょうね。

Naomi

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