軽井沢にて。
晩秋の軽井沢へ出かけた。
広い通りから、ひと気のない静かな通りを歩いて行くと、
紅葉が所々に映えている。
名所の雲場池に行くと、盛りは過ぎていたものの、
鮮やかな赤みがまだ水面を照らしていた。
多くの人が終わりの紅葉を眺めながら散策して
いたのだった。
池を離れて、立ち並ぶ別荘地の彩りを眺めながら行く。
木々の葉がだいぶ落ちて、延々と石垣に沿って積もっている。
静かな別荘地から旧軽井沢通りのロータリーに出たら、
たくさんの観光客が行きかっていた。蕎麦屋の川上庵で
昼酒をと思っていたら、開店前なのに、すでに入口に
長い列ができていてあきらめた。
はす向かいの腸詰屋に入って、ウインナーの盛り合わせを
つまみにビールを飲んだ。
そのすぐそばの酢重ギャラリーで、版画家、村上早さんの
個展が開かれているのだった。
3年前に、上田市立美術館で初めて拝見したら
静かな痛々しさを感じさせる作品を前に、
なんとも動くことができなくなった。
若い子なのに、抱えている孤独が染み入ってくる
作品に、再び触れたのだった。
ギャラリーを出て、久しぶりの脇田美術館へ行った。
洋画家、脇田和が建てた美術館で、御自身の作品が
展示されている。
3年前、北海道の自然を描きつづけた相原求一朗の
個展を観に立ち寄った。賑やかな通りから外れた場所の
静かな佇まいに、ここもまた、好い美術館と
思ったのだった。脇田和の作品は、どれも
淡くやわらかな色合いで、鳥を題材にした作品が多い。
他にお客のいない館内で、静かな時間を過ごした。
広い通りを横切って、矢ヶ崎公園を抜けて、
先月開館した、安東美術館に行ってみる。
洋画家藤田嗣治の作品を集めた美術館で、
以前から好きだったこのかたの作品を、いつでも
拝見できるのは、ありがたいことだった。
館内に入って受付に行くと、応対してくれた
スタッフのかたに、
たしか先月もお見えになられましたよねと、
声をかけられた。
よく覚えていてくれましたと、ちょっと嬉しかった。
ひととおり作品を眺めて、帰ろうとしたら、
再び声をかけてきて、冬になると、作品の入れ替えを
行うかもしれませんという。
冬の軽井沢は来たことがないというと、
寒いけれど冬の軽井沢も素敵です。またのお越しを
お待ちしていますと見送って頂いた。
雪の軽井沢、写真を撮りに来ようかな。
算段をつけたのだった。
冬ざれた避暑地を心待ちにして。