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五九醸の酒の会へ。
毎晩日本酒を酌んでいる。いつまでも夏のような
陽気が続いたこの秋、この頃になってようやく
熱燗を欲する気分になってきたのだった。
長野県に「五九醸」というお蔵さんのユニットがある。
昭和五十九年生まれの、お蔵の跡取りたちの集まりで、
参加しているのは北光正宗を醸す角口酒造に、
勢い正宗を醸す丸世酒造に、本老いの松を醸す
東飯田酒造に、積善を醸す西飯田酒造に、福無量を
醸す沓掛酒造の五蔵だった。
結成を呼び掛けたのは、角口酒造の息子さんで、その
きっかけになったのは、日本酒の売り上げの落ち込み
だった。その昔は酒さえ造っていれば勝手に売れていた。
ところが日本酒を飲まない世代が増え、今までと同じことを
していては、ますます落ち込んでいく。単に品質を上げる
だけでは、売れ行きは伸びない。話題性のあることをして
日本酒に興味を持っていただきたい。そこで、同じ歳の
お蔵さんとユニットを組んで毎年日本酒をPRすることに
したのだった。結成したのは2014年。活動は十年間と
決めた。翌年から毎年テーマを決めてそれぞれの個性の
ある酒を発売して、宣伝のための大きなイベントを開催
するようになった。当初はイベントの準備や、お客さんへの
酒の説明など、慣れないことに戸惑っていたという。
そんな彼らを、酒屋や飲み屋、縁のある異業種のかたがたが
応援して、回を重ねるごとに知名度も上がっていき、
いつもイベント会場は多くのお客で賑わっていた。
2024年、雨降りの土曜日の夕方、自宅のそばのギャラリーへ
出かけた。今年で活動を終える五九醸の最後のイベントが
開かれたのだった。これまでの活動の様子が映像で流されて、
酒を酌みながらそのときどきを振り返る。十年間の活動の
記念に、それぞれの思いを語った本が出版された。
読んでみれば、それぞれ最初は不安だらけだったという。
みんなに置いて行かれないようにプレッシャーを感じながら、
造りをしていたという。ただ、五九醸の活動に刺激を受けて、
自らの造りの方向性が見えてきたと、みんなおっしゃっている。
この十年、どのお蔵さんも、素晴らしい味を醸すようになった
のだった。
十年間の活動は、この酔っ払いも楽しませていただきました。
ほんとにお疲れ様でした。
もう今期の造りの季節になる。それぞれ無事の造りが出来ます
ように。
新酒待つ無事の造りを願いつつ。
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