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甥っ子夫婦と。

九月の連休に、甥っ子夫婦が長野までやって来た。
長野駅に着いた夜、駅前の飲み屋で久しぶりの再会の
杯を交わした。翌朝、甥っ子の大学時代の後輩も
やって来て、はじめましての挨拶をする。甥っ子は
料理を作るのが好きで、調味料にも凝っている。
長野市の隣の須坂市に在る、味噌と醤油のお蔵さんの
塩屋に行きたいというのだった。老舗の醸造元で、
味噌も醤油も旨い。
ちいさなお蔵さんなのによく見つけたなあと、甥っ子の
嗅覚に感心した。須坂駅前に車を停めて、古い土蔵の
並ぶ静かな通りをしばらく行くとたどり着く。
店の女将さんにいろいろ尋ねて、味噌と醤油を選んでいる。
買い物を済ませたら、久しぶりに会ったのだから、ちょいと
贅沢なひとときを提供したい。馴染みの鰻屋、た幸に行って、
甥っ子たちはビールに日本酒で、こちらは今日は運転手、
冷たいお茶で鰻料理を堪能した。腹を満たしてからの午後、
介護施設に入居している母のもとへ面会にいく。
甥っ子夫婦が母に会うのは二年ぶりのことで、まだコロナが
落ちつかぬゆえ、廊下と庭で窓越しの再会となった。
孫の突然の訪問に母も驚いた顔をして、すぐに嬉しそうに
笑顔を見せる。敬老の日に合わせて、母にストールを買って
きてくれた。朱色の生地に蝶の模様が描かれたもので、
孫からの思いがけないプレゼントに、母も嬉しそうに何度も
胸の前で手を合わせていた。また来るからねと言葉をかけて
手を振れば、母もこちらの姿が見えなくなるまで手を振って
いた。自宅に戻ってひと休みをしての夕方どき、飲み屋街の
わきに在る権堂温泉に行く。柔らかい湯で、さっぱりと
今日の汗を流したら、豆腐とお酒のまほろばの暖簾をくぐり、
おおいに飲んだことだった。
翌日の昼は、馴染みの蕎麦屋のかんだたで、とり皮の旨煮と
野菜の煮物の小鉢で地酒を酌んで、冷たいすだち蕎麦で締めた。
善光寺でお参りを済ませた夕方、馴染みの飲み屋のべじた坊へ
行き、長野詣での締めの宴となったのだった。
三日間、よく飲んだなあ。甥っ子夫婦はそろいもそろって酒が
つよい。酒にだらしのないおじさんに、いやな顔もせずに延々
付き合ってくれるから、まことにありがたいのだった。
今度は新蕎麦の時期に来たいという。蕎麦屋の昼酒夜酒、
おおいにやりましょう。

新蕎麦や酒がつよいぞ甥夫婦。


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