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軽井沢春めいて。

休日、軽井沢へ出かけた。洋画家、藤田嗣治の作品を
展示している安東美術館が、作品の展示替えをして、
新たな作品を拝見できることとなったのだった。
長野駅で長野・軽井沢フリー切符を求めてしなの鉄道に
乗り込む。春休みになって、同じく軽井沢に向かう
若い姿が、駅々で乗り込んでくる。
さっぱりと良い天気の日で、里山の彼方に
白い北アルプスの山並みが青空に映えていた。
軽井沢に着いて、ホームから駅舎に行けば、観光客が
わんさかしている。旧軽銀座に向かう人と離れて、
まずは腹ごしらえに、矢ヶ崎公園前のフレスガッセに
おじゃました。窓際の席に落ちついてエビスを頼めば、
店員のきれいなお姉さんが、今日は下仁田ネギの天ぷらが
有りますとすすめてくる。では、それもくださいと
頼んだら、太いりっぱな天ぷらが出てきた。
昔、交通事故であごの骨を折って以来、かみ合わせが
悪くなった。ぐにゅとしたネギがなかなかかみ切れず、
甘い味わいをなんとか食べた。
エビスをおかわりして、なにか軽いつまみをと生ハムを
頼んだら、これが旨くてたまげた。
味わいながら他のお客の料理を見れば、ソーセージも
トンテキも、盛りにボリュームがある。
品書きを見ればあれもこれも食べたくなるのに、
あれもこれも頼めないほどの量なのだった。ハイボールを
飲みながらナポリタンをたいらげて、いやあ、腹いっぱいに
なりました。余は満足じゃと会計に向かうと、
厨房からご主人が出てきて挨拶をしてくれた。
安東美術館が好きなこと。新緑の頃の軽井沢の、
湿り気を帯びた緑の気配が好きなことなどを話して、
また寄らせてくださいと店を出た。
矢ヶ崎公園を抜けながら美術館に向かうと、
雪をかぶった浅間山が、青空にくっきりと美しい。
美術館では、このたび新たな少女と猫を描いた作品を
観ることができた。藤田嗣治の描いた少女の作品は、
乳白色の肌色がまことに淡く深く、引き込まれる。
なんど足を運んでも見飽きることのない、作品の数々
だった。ゆっくりと館内を巡り、隣のハリオカフェで
酔い覚ましのコーヒーを飲みながら時計を見れば、
思いのほか時間が経っていた。
フレスガッセと安東美術館だけでゆっくりした
ひとときだった。長野に戻って一杯だな。
寄り道をせず、駅へと引き返したのだった。

ナポリタンちょいと固めや春の昼。




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