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日本酒日和で。

毎日日本酒を酌んでいる。
料理雑誌dantyuの三月号は日本酒の
特集と決まっている。
今回は「王道の日本酒」と銘打って、
数々の銘柄が紹介されていた。
十四代、新政、獺祭、秋鹿、大七、などの
全国に名を馳せた銘柄に、これから王道に
乗るであろう、新進気鋭の銘柄などが百本以上
紹介されていた。
特集の始めに、お蔵さんや酒屋さんなど精通
したかたがたに、王道の日本酒とはどんな酒
ですかと問うている。
常に向上していく酒とか、テロワールを表現して
いる酒とか、過去の歴史から育ってきた酒とか、
飲み手が語れるような特徴のある酒とか、
どんな料理にも合う酒とか、それぞれいろいろに
答えている。その中に、日常に寄り添い、家で
寝っ転がって飲める酒と答えている酒屋さんが
いて、我が意と同じですと頷いた。
気楽に買えて、飲み疲れしない酒がなによりと、
懐ぐあいの寒い身は、晩酌でそんな酒ばかりを
酌んでいるのだった。
また、二十代、三十代の若いかたがたに王道の
銘柄を問うているページがあって、黒龍、群馬泉、
義侠に廣戸川などの銘酒をあげている。
今の日本酒好きの若い子は、すんなり旨い味に
手が届くから、好いご時世になったことと
喜ばしい。こちらがその歳の頃には、まだ地酒を
扱う酒屋も少なく、情報もたやすく手に入らな
かったから、あちこち探し回ったものだった。
若いかたに、おおいに旨い酒を広めていただきたい。
今回嬉しいことに、長野県上田市で信州亀齢を
醸す岡崎酒造さんが紹介されていた。
宿場町の面影を残す柳町に在るお蔵さんで、跡取り
娘さんが杜氏を務め、旦那さんと二人三脚で造りを
している。
娘さんが杜氏になったばかりの頃はあまり
旨くなかった。それでいて、値段が高めの設定で、
なにかの折りに酌むたびに、なんだかなあの気分に
なっていた。すすんで買って飲みたい味にはほど
遠かったのだった。それから何年か経って、朝刊の
1ページに目が留まった。関東信越酒類鑑評会で、
亀齢が最優秀賞を取ったと載っていたのだった。
思わず、うそでしょ!と声をあげてしまい、
信じられなかった。
しばらくして、馴染みの飲み屋で利いてみたら、
以前の味はどこへやら、瑞々しいきれいな味に
驚いてしまった。
亀齢を扱う飲み屋も増えて、今ではその人気
ぶりに、すっかり入手困難な銘柄となっている。
酒質の向上の陰には、ご夫婦の随分な苦労と、
応援するかたがたの支えがあったと後ほど
知った次第だった。
こちらの知らないご苦労のおかげで、いつでも
旨き味に酔っていられる。お蔵さんにはまことに
感謝しかないことだった。

春浅し酒はちょっぴり温めて。










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