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笑いのひとときに。
友だちに、ライブに行こうと誘われた。
コロッケと美川憲一が長野に来るというのだった。
父と二人で行くはずだったのに、最近腰を痛めて
動けなくなってしまった。余分になったチケットを
こちらに割り当ててくれたのだった。
当日、会場のホクト文化ホールに行くと、年配の
男女のかたがたが会場に吸い込まれていく。
ステージの両脇からど派手な衣装のお二人が登場すると、
歓声に包まれた。二人の掛け合いが続いたあと、
コロッケのものまねメドレーが披露され、かつてテレビで
観た覚えのある、岩崎宏美や五木ひろしや森進一の
ものまねに、会場が賑やかな笑いに包まれる。
続いて登場した美川憲一は、柳ヶ瀬ブルースや新潟ブルース、
若い頃のヒット曲を披露した。
柳ヶ瀬ブルースがヒットしたのは、こちらがまだ子供の頃
だったのに、けっこう覚えている。
あああ~ああ、やながせのよる~にないている~。
ヒットしてから、歌番組でたびたび歌っていたのが、
幼いころの記憶に残っていたのだった。
美川憲一もずいぶんお歳を召されたのに、歌声に張りがある。
ステージを歩く足取りにお歳を感じる
ものの、凛としている姿がかっこよかった。
そのあと再びコロッケのものまねがあり、また大きな笑いが
沸く。笑いを取るために芸にあれこれ工夫をこらしてきた
けれど、以前とちがって最近は、コンプライアンスが厳しくて
出来ない芸もあるというのだった。
再び現れた美川憲一の、尊敬する越路吹雪の愛の賛歌が胸に
染み入って、さいごはさそり座の女を二人で熱唱して、
笑いとほれぼれする歌声のひとときが終わった。翌日、
美川憲一を調べてみたら、ヒット曲を連発したあとに、大麻で
二度捕まって、それをきっかけに人気が落ちた。
ところがそれからしばらくしたら、テレビでいろんな
タレントのものまねブームが始まって、
コロッケのものまねで再び人気に火がついたのだった。
七年前に左足を骨折して、三時間に及ぶ手術を受けていた。
足取りのおぼつかないのはそのせいだったかと合点がいった。
ライブの様子を思い出せば、嬉しそうに笑顔ではじけている
会場のおじいちゃのばあちゃんの姿が目に浮かぶ。
お二人の華々しいステージがみんなに元気をくれたこと
だった。
柳ケ瀬や淑女の涙冬の月。