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年の瀬に。

出かけるときに、いつもカメラをぶら下げている。
晴天や曇天のときはじっくり構えてファインダーを
覗けるやつを。雨や雪の日は、濡らさぬように
カバンに収まる小さいやつを。
飲み屋に出かけた翌朝カメラを覗くと、撮った覚えの
ない写真が何枚も写っていることがある。
酔っ払って撮っているからピンボケの写真もあって、
電池の無駄遣いをしているのだった。
以前、仕事場の玄関先の掃除をしていたら、隣の家の
ご主人に、夕べは遅い時間にたくさん写真を撮って
いたねえと声をかけられた。
へっ?ぜんぜん記憶にないぞ。カメラを覗いて
確かめたら、目の前の神社の階段の写真ばかり
十枚ほど撮っていた。
おれは一体なにをしたかったんだと、まったく訳が
わからないのだった。
酩酊してどこかにカメラを置き忘れぬよう、
それだけ気をつけたいことだった。カメラを使い始めて
十年になる。撮りためた写真は、パソコンに落として
インスタグラムやフェイスブックにアップしている。
遠方に暮らす友だちに手紙を出すことがあり、
近所のコンビニのコピー機で、写真をプリント
して添えている。最近コピー機の性能が良くなって、
ずいぶんきれいにプリントしてくれるからありがたい。
この頃は、撮りためた写真をプリントして、仕事場に
ぺたぺた貼っている。
毎年暮れになると、手描きのカレンダーを作って親しい
かたに差し上げている。その年に撮った写真の中から
十二枚を選んで、それを描いて日付を入れて、
人数分をコピーして仕上げている。
子供の頃から絵を描くのが好きだったせいか、
ものぐさな性格なのに、気がついたら三十年も
続いていた。
今年もそろそろ作りはじめるかと思い始め、ふと
思いつく。絵を描くよりも、撮った写真をそのまま
貼りつけてコピーすればいいんではないか。
カレンダーの大きさがちょうど2L判の写真が収まる
サイズなのも都合が良かった。
ひと月ごとに十二枚。写真を貼って日付けを入れて、
コンビニに持ち込んでコピーした。
絵を描く手間がなくなって、ずいぶん楽なカレンダー
作りになったのだった。

年の瀬や自作の暦君にまた。



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