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別所温泉へ。

お盆休みの中日、上田に泊った。
上田に暮らす友だちと一献交わした翌朝、
別所温泉に足を延ばした。
上田駅から別所線の丸窓電車に揺られて行くと、
沿線の、稲穂の緑に癒される。
別所温泉駅を出て行くと、家々の入口に、
大きな蓮の鉢植えが置いてあり、坂道に彩りを
添えている。
みんみんじいじいかなかなと、
しずかに蝉の声を聞きながら上がっていった。
北向き観音のそばまで来ると、ちらほらと観光客が
歩いている。
作務衣を着た、どこぞの旅館の若い仲居さんが、
観音様の入口で手を合わせ、急ぎ足に勤めに戻っていった。
参道への階段入口の食堂の品書きを見たら、冷やし中華から
かつ丼まで、どれも値段が千円超えで、高くてあきれる。
参道沿いの食堂に蕎麦屋は、どこもお盆休みで欲がない。
おごそかな佇まいの観音堂で、上田の町が平和でありますよう、
お参りをした。
別所温泉はちいさな町で、いつ来ても静かで好い。
蝉の声を聞きながらひとまわり、通りを下りて、
駅の近くの温泉施設、あいそめの湯へ向かった。
お盆休みで混んでいるかと思ったら、
地元のかたがいるだけで空いている。
前日、群馬の草津温泉の
酸の当たりのつよい湯に浸かっていた。
この町の湯の柔らかさを、ことのほか感じたのだった。
露天風呂で里山の緑を眺めながら、蝉の声を聞きながら
ぬるめの湯に浸かっていると、この地に住みたい気分になる。
温泉と酒と友があれば充分ではないか。
このお盆休みは、そればかり思ってしまうのだった
風呂を出て食堂へ行き、軟骨のから揚げでビールを飲んでいたら、
しばらくして、お母さんと小学生くらいの女の子と男の子が
やってきた。先ほど露天風呂を出ようとしたら、
ちょうど入ってきたこの男の子が、こちらが出るまで
出入口の戸を押さえていてくれたのだった。
ちょっとした気遣いが嬉しくて、親御さんは良い育て方を
されていると、気持ちが温かくなった。
子供たちが席を離れたときに、その旨をお母さんに
伝えさせていただいた。
それにしてもこの食堂は、ご主人の愛想も好く、
軟骨のから揚げも、他のお客の頼んだ定食を見ても、
量が多い。
くだんの男の子も、かつ定食を食べきれずに持ち帰りに
包んでもらっていた。
おまけに、生ビールのあとにハイボールを注文したら、
ジャガイモの煮物をサービスしていただき、
恐縮してしまった。
また近々足を運びたいと思える御好意に、感謝した次第だった。
うつらうつらと、電車に揺られて帰ったのだった。

別所の湯気遣い嬉し生ビール。





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