暑さにやられて。
友だちに会いに、金沢まで出かけた。
飯山から妙高高原を過ぎて富山まで。車窓に田園の緑が映えて
気持ちが和む。
旨い酒と肴でもてなしてもらい、穏やかな内灘の景色に癒されて、
帰宅した翌朝、友だちからラインが届いていた。
体に留意して酒と付き合ってほしい。
酔いかたが明らかに前とちがったと、こちらの身を案じる
便りだった。
たしかに出発当日の朝、体が重く、再会の宴の一献でも、
やけに酔いの回るのが早く、体がだるかった。
帰りの新幹線では、長野に着くまでずっと寝ていた。
おかしいなあといぶかしんでいたら、
はたと思い当たったことがある。
金沢へ行く前日、炎天下の町なかを歩き回っていたのだった。
長野駅から南へ下ったところに水野美術館が在る。
長野を代表するキノコの会社ホクトの創設者、水野正幸が
建てた美術館で、生前収集した日本画の数々を
展示しているのだった。
この夏、水のある風景と題して、河合玉堂や横山大観等の、
水辺の景色を描いた作品展が催されている。
今日を逃すと拝見できないと、足を運んだのだった。
自宅を出て通りをまっすぐ下っていく。
ちょいと遅めのランチをと、長野駅ビルの食堂街に行ったら、
日曜日の昼どきは、どの店もお客が列を成している。
あきらめて、美術館までの道沿いに在る、
あっぷるぐりむに立ち寄った。プレミアムモルツを飲みながら、
エビグラタンで腹を満たして美術館へ向かった。
河合玉堂に横山大観、菱田春草などの著名なかたから、
はじめて目にしたかたの作品まで、水のある涼とした景色に、
しばし暑さを忘れた。
静かな時間を過ごして外へ出れば、昼下がりから薄暮にかけての
陽射しは、まだ衰えがない。
再び歩いて自宅まで戻った。
往復8キロの道のりを、水分も取らずに陽に照らされて
歩いていた。気づかぬ間に、日射病にやられていたかと、
察しがついた。
歩くのは苦にならなくても、真夏の陽射しは体力をうばう。
もう若くもないのだから、出歩くときは、それ相応の
気構えが必要だった。
翌日の金沢詣でに備えて、体力を万全にせず、
うかつなことだった。
友だちにいらぬ心配をかけることとなり、
申しわけのないことをしてしまった。
能天気8キロ歩き日射病。