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鎌倉へ。

横浜で一泊した翌朝、大船で横須賀線に乗り換えた。
子供たちの通学の時間と重なって、ぎゅうぎゅう詰めの
車内で身動きとれぬまま北鎌倉へ行き、そのまま
子供たちと一緒に駅を出た。近くにある鎌倉学園の
生徒たちだった。駅からすぐの、円覚寺の石段を
上がってゆくと、なんとも懐かしい。
横浜の大学に通っていた頃、授業をさぼって
足を運んでいたのだった。北鎌倉から寺巡りをしながら
鶴ケ岡八幡宮まで。鎌倉駅から江ノ電に揺られて
長谷観音と大仏さんまで。都会の空気に馴染めずに、
静かな古都の景色に癒されたものだった。
ちょうど紫陽花が見頃のときで、円覚寺の境内も
観光客でにぎわっていた。境内をひとまわりして、
線路沿いの小道をすすんで、あじさい寺で有名な
明月院へ行くと、とんでもなく人があふれている。
紫陽花に囲まれた石段から行列ができて、なかなか
前に進めない。おまけに、立ち止まってカメラを
構える人がそこかしこにいるから、余計に動きが
はかどらない。
歩け!じっくり構えて撮っているな!の気分になった。
ようやく本堂にたどり着いてお参りを済ませたら、
右側に長い列が出来ている。丸窓を通して見える
庭園の写真を撮ろうと並んでいるのだった。有名な
絵になる景色だけれど、並んでまでして撮りたくない。
人混みに疲れて門を出て、
鎌倉学園の前を通って建長寺へ行くと、若い坊さんが
ちいさな子供たちにお寺の由来を話していた。
こちらの境内もあちこちに紫陽花が咲き誇り、
初夏の鎌倉は、まったく紫陽花の町なのだった。
坂道を下って鶴ケ岡八幡宮に着くと、神前で羽織はかまの
新郎と、目に爽やかな白無垢姿の新婦が、挙式の真っ最中
だった。観光客でにぎわう中、そこだけ静謐な空気に
包まれていた。
お参りを済ませて、小町通りを歩いて行くと、鎌倉彫の
店がいくつか在った。窓越しに並んだ商品を覗いたら、
貧乏人は手の出る値段ではないと、あっさりあきらめた。
そのまま進んで、鳩サブレで有名な豊島屋へ入った。
初めて入った店内には鳩サブレの他にも何種類もの
和菓子を売っていた。思案していくつか土産に
選び、長野までの発送をお願いした。
鎌倉駅前のバス停で藤沢行きのバスを待っていたら
ほどなくやって来た。
本日これから、友だちの営む蕎麦屋での昼酒が
待っている。歩き疲れてのども乾いた。
気が急いて仕方のないことだった。

紫陽花を求め混雑古都の道。






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