焼き鳥詣でに。
先日飲み仲間のかたがたと、初めての焼き鳥屋に伺った。
ちょいと前に開店した店で、入口にぽつっと灯りが置いてあり、
看板もなく、暖簾に屋号がささやかに描いてある。
焼き鳥屋というよりも、小料理屋のような構えの店だった。
当日、おじゃまして暖簾をくぐったら、店内もこざっぱりとした
雰囲気で、一見焼き鳥屋とは思えない。
カウンターの奥のテーブル席に落ちついて、ビールで乾杯をして、
お通しを突っついていたら、奥の部屋から白衣姿のご主人が出て
きて、我々の前を黙って通り過ぎて行った。しばらくしたら、
同じく白衣姿の男性も黙って通り過ぎて行った。
ハイボールを飲みながら、焼き鳥やサラダを食べていたら、
三本目のつくねに思わず目が留まる。目の前のかたに置かれた
つくねが明らかに焼き過ぎで、串に刺さった三つのうちの
ひとつの実の半分近くが真っ黒に焦げていたのだった。
ふつう、こんなのお客に出せないだろうと、店の雰囲気に
そぐわない焼き鳥に啞然としてしまった。
愛想がないのか寡黙なのか、店を出る際にもこれといった挨拶もなく、
店の雰囲気と料理と御主人がたの態度が、なんともちぐはぐな店
だった。
焼き鳥の油がつよい感じがして、元来胃腸の弱い身は、案の定
帰り道で、腹の具合ががおかしくなって焦った。
結局いちばん印象が好かったのは、アルバイトの大学生の
男の子の、笑顔のはきはきした接客だった。
ひとりで飲みに行くのは、縁あって常連になった馴染みの店
ばかりで、どこの店でも気の置けないひとときを頂いている。
そんな中、この秋珍しく初めての店におじゃました。長野市の
権堂アーケードの映画館、長野ロキシーの入り口に在る、
「まると」という名の焼き鳥屋だった。
酒屋を営む友だちがいて、この秋に権堂アーケード界隈で
日本酒のイベントを行った。それに参加してくれたのだった。
イベント前に、どんな店か気になっておじゃましたら、
カウンター越しにかわいい女の子が迎えてくれた。焼き鳥を
食べながら、ビールと焼酎を飲みつつイベント絡みの話を
すれば、明るい笑顔の受け答えが好い。
焼き鳥を焼いているご主人も、手が空くと話し相手に加わって
くださり、気遣いがうかがえた。
ときどきおじゃましたいことと思ったのだった。
焦げ過ぎのつくね眺める寒さかな。