富山へ。
富山県の高岡へ出かけた。
前回初めて訪ねてから、四年ぶりのことだった。
新幹線はくたかに乗って、缶酎ハイを飲みながら
車窓の景色を眺めれば、
黄金色の田んぼが広がって、実りの秋を迎えている。
一時間余りで新高岡駅に着き、ひと気のない住宅街の道を
歩いて行く。夏日のような陽気で、海を抱えた町の
湿気の多い暑さに、
じわっと汗が流れてくる。十分余り歩いて行くと、
加賀藩の前田家の菩提寺、瑞龍寺にたどり着いた。
広い境内の大きな本堂は、まことに威風堂々として、
加賀百万石の面影を今に伝えている。
お参りをして寺をあとにして、
在来線の高岡駅から氷見まで足を延ばした。
氷見駅から、潮の香りを嗅ぎながら歩き、穏やかな
富山湾の景色を眺めた。
氷見は漫画家、藤子不二雄Ⓐの
故郷で、町のいたるところに、作品のキャラクターの
像が有る。生家の光禅寺の境内にも、
笑うセールスマンや忍者ハットリ君たちの石像が有った。
ひと気のない、静かな港町の商店街を抜けて、ふたたび氷見から
高岡へ戻った。高岡は漫画家、藤子・F・不二雄の故郷で、
駅前の広場にドラえもんとのび太の像が有る。
アパホテルの大浴場で、ひと風呂浴びて汗を流して、
薄暮の町に出た。駅前からじきの商店街を歩いて行くと、
見事なくらいに閑散としている。シャッターを閉めている店が並び
さびれ具合を、感心するように見入ってしまった。
昭和の風情の飲み屋通りを抜けて行くと、
いきなり大仏さんが現れた。町なかのちいさな敷地の
身近な場所で、高岡の人々を見守っているのだった。
お参りをして、
さて今宵の一杯をどこでやろうかと、商店街へ
引き返したら、わきの小路の,おでん百福の看板が
目についた。
戸を開けたら、さっぱりとしたお顔の、きれいな女将が
迎えてくれた。
カウンターに腰かけて黒ラベルを頼めば、
テレビの相撲中継は、御嶽海と逸ノ城の一戦が
始まるところだった。鍋の中から卵に大根、
北陸らしい車麩とかまぼこを添えてもらい、
地酒の若鶴を酌んだ。しばらくすると、
女将さんの友だちが入ってきた。二人の会話を
聞きながら、
見知らぬ町のおでん屋で、見知らぬかたと、相撲中継を
観ながら杯を傾ける。なんとものどかなことだった。
漬け物で、地酒の立山を酌んで店を出て、
商店街の入り口に在る、日の出寿司に立ち寄った。
前回高岡へ来た際におじゃましたら、
味と接客が好かったのだった。
握りをつまみに、地酒の太刀山と勝駒を酌んで、
のんびりと酔っぱらったことだった。
大仏の見守る町の残暑かな。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?