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仙台へ。

洗濯をしていたら、ピーピーとアラームが鳴った。なんだなんだと
近寄ったらエラーの表示が出ていた。
取扱説明書で確かめようと、台所の戸棚の引き出しを開けたら、
けっこうな額の金が入った封筒を見つけた。
しばし考えて思い出す。何年か前に農協の積み立てが満期になって、
ここへ仕舞いこんだのだった。そのまますっかり忘れたままに
なっていた。もともと自身の金だけど、なにやら臨時収入を得たようで
嬉しい。仙台に旅行に行こうと決めたのだった。
仙台はこれまでに三回行ったことがある。長野で酒屋を営む友だちの
計らいで、三回とも、宮城の銘酒「伯楽星」を醸す新澤醸造さんへ
蔵見学に連れて行ってもらった。
蔵見学をして、夜は旨い酒と肴を堪能して、好い旅だった。
仙台は街路樹が多く、明るい風情で風通しの良い印象を受けたものの、
まだ街なかを散策したことがなかった。
いつかゆっくり訪ねたいと思っていたのだった。
幸い、かつて長野で知り合った友だちが二人暮らしている。
知らない街の飲み屋選びはお任せして、気楽に酔えることだった。
角田市で酒屋を営む友だちを訪ね、早々に土産の酒を手配した。
昼ごはんに連れて行ってもらった店で、郷土料理のはらこ飯を
食したら、サケとイクラの散りばめられた炊き込みご飯が、なんとも
旨かった。そのままホテルまで送ってもらい、忙しい中の気遣いに
感謝をした。
折しもこの日は、仙台ジャズフェスティバルが行われているという。
夕方、久しぶりの友だちと笑顔で挨拶を交わし、案内してもらえば、
街のあちこちで演奏しているグループを見かけて賑わっている。
ジャズフェスティバルといっても、日本のポップスを演奏している
グループもいて、おおらかな雰囲気だった。ひと通り楽しんでから、
友だち馴染みの店に連れて行ってもらい、牛タンやら
刺身やらで、旨い地酒に酔っ払ったのだった。
翌日、いろは横丁という昭和の風情の飲み屋街があると聞いて行って
みると、幅二メートルほどの小路の両側に、ずらっと古い飲み屋が
並んでいる。
そのすぐそばには文化横丁という通りがあって、こちらも古い。
高いビルがそびえ立つ大きな街の一角で、そこだけ昭和で時間が
止まっていた。仙台に住んでいたら毎晩通っちゃうなあ。
駅ビルに戻り、土産を買って、食堂街の寿司屋で握りとホヤの刺身で
地酒を三杯。地酒のきれいな味わいと、長野じゃお目にかかれない
ホヤの旨味がよく合うことだった。
夜、再び友だちといろは横丁で落ち合って、生牡蠣とカキフライで
地酒を楽しんだ。そのまま文化横丁へはしごして、仙台の夜空に
記憶が飛んで行ったのだった。

秋の夜や杜の都で記憶飛び。


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