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愚息と一献。
結婚を二度しくじっている。
一度目の結婚生活のときに、当時の連れ合いとの
間に一男一女を授かった。
離婚をしてからずっと音信不通だったのに、
養育費をすべて払い終わってしばらくしたら、
会いに来てくれたのだった。
それからごくごくたまに顔を合わせては、
酌み交わすようになっている。
先日息子から久しぶりに電話がかかってきた。
じつは彼女が出来たという。紹介したいから、
明日会ってもらいたいというのだった。
会うのは、昨年の春に息子の行きつけの
中華料理屋で酌み交わして以来だった。あのときは
もう女はいいです。疲れましたなどと年寄りみたいな
ことを言っていて、欲がないのおと、あきれたものだった。
若いのだから、恋愛にまだまだ身を費やして頂きたい。
翌朝、連れてきた彼女にお会いしたら、
透き通るように肌の白い、二重の目元が涼やかな、
剛力彩芽似のとてもきれいな子だった。
まじですか・・・おまけに二十一歳といい、愚息より
十四歳も若いではないか・・・
忘年会もかねて宴をやろうと相成って、
日を置いて件の中華料理屋で待ち合わせをした。
先に着いてやっこでビールを飲んでいたら、若い男の子が
入ってきて、カウンターで一杯やり始めた。
店の女将さんが、あちらりょーたくんのお父さんよと
こちらを紹介してくれる。息子の飲み仲間のかただった。
挨拶を交わしたら、りょーたさんには、いつも優しくして
頂いてますという。へえ、あいつ優しいんだと、ちょっと
驚いた。
程なく息子たちもやって来て、乾杯をした。一番搾りを
飲みながら、息子のどこが好きなの?と尋ねたら、
真っ直ぐ瞳をむけてきて、
りょーたは私に対しても友だちに対してもちゃんと愛情を
向けてくれるという。
間違ったことはちゃんと指摘してくれて、悩み事を抱えれば、
自分のことのように心配をしてくれるという。
今までそんな人には会ったことがなかったといい、
父親の知らない一面を教えていただいた。
二十歳過ぎの身で、息子の柄をきちんと見てるのは、
育ってくる過程で、いろいろあったのかと察しがついた。
尋ねたら、子供の頃から両親の狭間に立って、歳以上の
苦労をしていた。
息子は、毎朝三時半に仕事で埼玉まで出かけているという。
二十代の頃、ちょっと脇に外れた暮らしをしていて、
元の連れ合いに心配をかけていた。
体のあちこちに癌が見つかったときに、必死の形相で、私に
なにかあったら、子供たちをお願いしますと訪ねて来た。
大丈夫だよ心配しなくても。
真面目に働いて、まわりのみんなにも慕われている。
父親よりも、よほどしっかりしているのだった。
慕われて愚息照れてる冬の夜。