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実家の庭を。

古刹、善光寺の北側に実家が在る。
四年前に母が介護施設に入居してから
空家になっている。
高齢の母が戻ってくることはもうないので、
今すぐにでも処分をしたいのに、
私が生きている間はそのままにしておいてくれと言われ、
住んでいなくても、父と共に苦労して建てたのだから、
愛着があるよなあと、気持ちを汲んでいる。
空家にしていても、日々いろんなチラシやはがきが
届くから、ときどき片付けに行っている。
なかには、不動産会社からの売り物件探していますの
チラシもあって、売りたいのはやまやまなんですよと
眺めてしまうのだった。気になるのは庭の草木で、
伸び放題に伸びて、隣家の敷地まで、
枝が入り込んでいたのだった。
以前にいちど、知り合いに紹介された植木屋に、
手入れを頼んだことがある。
このたびもお願いしようと思ったものの、
安い値段で丁寧に仕事をされるかたで、あちこちから
引き合いが多い。前回もずいぶん待たされて、
きれいにしてもらったのだった。
もう少し涼しくなったら、手の届くところだけでも
刈り取るかとため息が出た。
先だって、馴染みの飲み屋で酔っ払って帰宅したら、
玄関先に、りっぱな長ナスと胡瓜の入った袋が
置いてあった。
はて、どなたからの置き土産かなと思っていたら、
次の日、近所に暮らす顔見知りのおじさんから電話がきた。
畑でたくさん採れたからと、届けてくださったのだった。
以前商売をされていて、今は年金暮らしのかたわら、
畑で野菜を作っているかただった。
連日みずみずしい味を、ありがたく頂だいした。
台風11号の影響で、ひとしきり長野市内に雨が降り、
日中の暑さも和らいだ。
玄関先に秋らしい、かぼちゃの柄の暖簾をかけた次の日、
おじさんが、かぼちゃを届けに来てくれた。
お礼を言いながら乗ってきた軽トラックを見たら、
荷台に、枝葉を詰め込んだごみ袋が積んであった。
尋ねたら、こづかい稼ぎに、あちこちの知り合いの、
庭木の剪定をしているというのだった。
それを早く言ってくれい。これ幸いとばかりに、
実家の庭の片づけをお願いしたら、
手ごろな代金ですみやかにご足労してもらい、
まことにありがたいことだった。
かぼちゃは、生まれてこのかた調理をしたことがない。
パソコンを開いて、キッコーマンのホームページで
レシピを覗く。
料理好きだった母は、仕事を終えて帰ってくると、
夜遅くまで台所に立っていた。
砂糖に醤油にみりんを惜しみなく使った味の濃い、
かぼちゃの煮物が懐かしいことだった。


南瓜来るレシピ調べてガッと断つ。




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