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水野美術館へ。

ゴールデンウィーク最中の祝日の月曜日、若里の水野美術館へ
出かけた。
「THE 新版画」と題された企画展を開いているのだった。
明治以降衰退していた木版画を復活させた、渡邊庄三郎という
かたがいた。そのかたが創立して、今も銀座に店を構える
渡辺木版美術画舗の所蔵展だった。
自宅を出て通りを下って行くと、朝から観光客たちが、
善光寺に向かってぞろぞろと上がって行く。
最近は日本人に混ざって外人の姿がほんとに多い。
家族連れや、大きなバッグを背負った一人旅のかたと、
何度もすれ違う。
朝から夏日のような陽気で、長野駅の地下道を抜けて、南に
向かって歩いて行くと、背中が汗ばんでくる。
広い通りから古びた食堂のわきの路地へ入って行くと、
かつて、ずいぶん世話になっていたかたのお宅が在った。
お亡くなりになって何年経つだろうか。お宅の在った場所は、
すっかり更地になっていた。美術館に着いて館内に入ると、
当時の、著名な日本画家の作品をもとに摺られた、
美人画に役者絵に花鳥画に風景画の貴重な初摺りの作品が、
二階と三階にかけて並んでいる。
浮世絵師、川瀬巴水の風景画が数多く並んでいた。以前、
ここの美術館だったか、あるいは他の美術館だったか、
このかたの作品を観たことがあった。
どんな作品だったか失念しているものの、お名前だけは
覚えていた。明治十六年に東京で生まれ、日本画家、
鏑木清方に師事をした。その後、渡邊庄三郎に請われて、
版画の制作を始めたという。ひとつひとつ観ていくと、
東京や旅先の景色の作品に染み入ってくるような情感がある。
夜の景色を描いた作品がいくつかあって、深い青の闇の中に
月に雲に木々の描かれた様子は、その静けさが、特に気持ちに
残ったことだった。立ち去りがたく、行きつ戻りつして、
何度も見返してしまった。
開催期間はあとわずか。仕事をさぼって、どこかでもう一度
足を運ぼうかな。思案したことだった。

初夏や巴水の青の深いこと。








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