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草津温泉へ。

お盆休みの初日、草津温泉に出かけた。
旅館を営む友だちと、蕎麦屋を営む友だちが
暮らしているのだった。長野駅発のバスに乗って、
山ノ内町から志賀高原へ上がっていくと、けっこうな勢いで
雨が降り始めた。
車窓の景色が深い霧に覆われて、真っ白な中を抜けて
白根山を過ぎていくと、小降りになってきて良かった。
このたびは、東京に暮らす甥っ子夫婦と落ち合うことに
なっていた。
バスターミナルに着いて待っていると、じきにやってきた。
連れ立って、さっそく友だちの蕎麦屋、
「かない」へ行く。
ちいさな温泉町はお盆客で賑わっている。
蕎麦屋も盛況で、しばらく待ってから、
席に着いた。甥っ子夫婦とひさしぶりの乾杯を
黒ラベルで交わし、まいたけのてんぷらで、
友だちの用意してくれた群馬の銘酒、尾瀬の雪どけの
杯を重ねた。
草津温泉は狭い通りに蕎麦屋が混在している。
その中でも、友だちの蕎麦屋は後進者にもかかわらず、
すでに味の好さが評判になっているのだった。
久しぶりの旨い蕎麦で腹を満たして、はす向かいの
だんべえ茶屋の入れこみに落ちつく。
旅館の友だちの連れ合いが営んでいる飲み屋だった。
こちらは友だちの好みの長野の銘酒を揃えている。
友だちも交えて、大信州の一升瓶を速やかに空けた。
昼からの酒に酔い酔いになり、友だちの旅館
「勢州館」でひと風呂浴びて、早々につぶれた。
しばらくしたら甥っ子夫婦が部屋に来た。
飲みなおすかと、友だちに酒を所望したら、
テキーラを一本くれた。それを飲んでまたつぶれた。
標高1000メートルの温泉町は、夏でも涼しい。
深々熟睡できた翌朝、甥っ子夫婦と町を
ひとまわりすれば、程よい町の小ささも好く、
この町で余生を過ごすのも好いことと思えるのだった。
草津の湯は酸がつよい。
石鹸を使わなくても肌がすべすべになる。
そのかわり、浸かりすぎると、肌がやられる。
以前2泊したときに、何回も浸かっていたら
唇がひび割れた。
久しぶりに、そんな草津の刺激的な湯も心地よく、
友だちに会え、甥っ子夫婦に会え、
再び蕎麦屋とだんべえ茶屋で昼のひとときを過ごし、
再会を期して別れた。
温泉と酒と友と。人生それだけで充分ではないか。
しみじみ身に染みたことだった。

友有りき湯有り蕎麦有り草津かな。


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