須坂で飲んで。
5月の下旬、近所のイタリアン、こまつやの
ご主人夫婦とスタッフのけいこちゃんと
飲み会をした。馴染みの飲み屋の座敷でおおいに
飲んで、翌朝、どうやって帰ってきたか記憶が
ない。そんな飲み過ぎで体がだるい日にかぎって
仕事が忙しい。
まったく世の中はよく出来ている。
翌週の日曜日の夕方、お隣の須坂市へ出かけた。
鰻料理屋、た幸のご主人と一献交わしましょうと
なったのだった。電車を降りて駅前で待っていたら、
ほどなく奥さんが運転する車でやって来て、
須坂高校前の居酒屋、十九まで送っていただいた。
この店は、た幸のご主人に勧められて、いちど
飲み仲間のかたがたと花火大会の日に訪ねたことが
あった。じつに8年ぶりの再訪なのだった。
日本酒の品ぞろえが好く、冷蔵庫の中は、びっしり
一升瓶で埋まっている。
あれこれ肴を注文して、次から次へといろんな
銘柄で杯を重ねた。
酌み交わしながら、初めて知り合ったときのことを
語り合えば、お互いにしっかり覚えている。
酔えばたいていその日の記憶を飛ばしているのに、
ちゃんと覚えていたのは、ご主人の客あしらいの好さが
印象に残っていたからだった。
地元の須坂に戻って鰻料理屋を開いてからは、
夜の営業は土曜日だけとなり、伺う機会が減ったものの、
凛とした佇まいの店内で、旨い肴での一献は、
生きててよかったと思えるほどの、まこと贅沢な
ひとときだった。
馴染みの店のご主人と酒を飲める仲になれるのは、
また一段距離が縮まったようで、ありがたく嬉しい
ことだった。
はしご酒に坂道を下り、駅にほど近いイタリアン、
古民家キッチンTAKIBIに連れていってもらった。
感じの好いご店主が営んでいて、旨い料理に
ワインがすすんだ。十九とTAKIBI、どちらも
ご主人が行くだけあって好い店だった。
須坂に来たときは、馴染みにさせていただきたい。
須坂市はコロナ禍で休止していた花火大会を、この夏
4年ぶりに開催するという。その前日には、これまた
4年ぶりに、カッタカッタ祭りも再開されるという。
夏の須坂の賑わいを眺めて酔うのも好いなあ。
そんな気分になるのだった。
養蚕の町の踊りに花火かな。