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永遠の森を歩く・大都会と鎮守の杜「明治神宮」
神社組織の総元締め「神社本庁」の下には各都道府県ごとに「神社庁」が設定されていまして、その東京支部「東京都神社庁」に所属する都内の神社は、1398社あるそうです。
そのうち一番大きな神社が大正9(1920)年創建の「明治神宮」で、明治天皇と昭憲皇太后が祀られています。その面積は約70万平方メートル。
23区内神社面積2位「靖国神社」の約10万平方メートルを大きく引き離し、ぶっちぎりの存在感です。
ただ、ちょっとややこしいのが「靖国神社」は「神社本庁」には所属していない"単立神社"だったり、明治神宮も2004年に本庁を離脱して2010年にまた戻ってきたりしていて、なんというか「組織っていろいろありますよね〜。」というところ。
そしてこの本庁の事務所は明治神宮の隣接地にあったりします。
そんな、なんとも込み入った事情はともかく、この明治神宮こそが"東京ならでは"というか"緑多き大都会"を味わえるスポット代表格のひとつ、といった感じでして、おもしろいです。
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「明治神宮」には"内苑"と"外苑"がありまして、両所はちょっと離れた立地になっています。電車でひと駅、もしくはふた駅、といった距離感ですね。
JR総武線の「千駄ヶ谷」駅、もしくは「信濃町」駅を最寄りとする外苑のほうには絵画館や野球場があって、「再開発計画」による樹木伐採にあたって騒動になりました。
これは、神宮側としては将来も見据えて採算性を生む必要がある一方で、開発によって景観が変貌することで公共性を損なう、という争点だったかと思いますが、いろいろと調べてみますと、さすが実績ある事業者や有力者が練りに練った開発プランだけあって、「良く考えられているなぁ、、。」という印象で、ぼく自身は開発に概ね賛成です。
良い感じに落ち着いてほしいですね。
さて、気を取り直しまして、今回は"内苑"を目指して地下鉄に乗ります。
東京メトロ銀座線もしくは半蔵門線の「表参道」駅といえば、都内有数のおしゃれスポット、ハイブランドひしめくキラキラストリート。
ゆるやかな坂道に沿ってケヤキ並木が続き、また美しい景観の保持には注意が払われていて、2006年に開業した「表参道ヒルズ」もそのケヤキを越えないように、高さが抑えられています。
設計者の安藤忠雄は「公共性を失ったら、建築は終わり。」と語っています。
良い言葉だなぁ。
やはり"公共性"はキーワードですね。
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表参道ヒルズの前には小川のように水が流れますが、これは参道のお清めの意味で採り入れられたデザインだそうです。
"表参道"というからにはもともと参詣のための道だということは、ふつうに歩いていて意識することはほぼありません。この道は"おしゃれストリート"。
坂道を登ること10分弱、「神宮橋」交差点が"表参道"の終わりで、正面の橋を渡った先に鎮座するのが今回の目的地「明治神宮」です。
ここまでの道中、多くのキラキラやピカピカのハイブランドたちの中を歩いてきたのに、唐突に"本気の森"が目の前にあらわれるという体験には、ちょっとした違和感と、ときめきが。
"ギャップ萌え"ですね。
こうしたミスマッチを味わえるのが"東京"の魅力。
いや、というか、よく考えたら"神宮ブランド"はかなりのブランドには違いないし、むしろマッチしているのでは??
ちなみにこの交差点を右へ曲がるとJR「原宿」駅。
ファッションとサブカルチャー文化を発信する街"原宿"です。
竹下通りで「KAWAII」や「マリオンクレープ」を味わいたいときには交差点を右へ。
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山手線沿線で駅近徒歩2分!の優良物件「明治神宮」は、ゴリゴリの都会にありながら広大な"森林"を提供しています。
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橅や樫、楠といった照葉樹に囲まれた参道を歩くのは本当に気持ち良くて、サウナあがりのように心身が"整う"ひとときです。
繰り返しますが、喧騒まみれた都会から、この"神域"までシームレスに繋がってるのがまた良いんですよね。サウナ効果をより助長してますね。
神社には杜(森)がつきもので、「鎮守の杜」は不可欠なものとして、古来から地域の人たちが集まる社交の場として大切にされていたようです。
明治39(1906)年の神社合祀令によって全国の神社が大きく減らされた際にも、博物学者の南方熊楠らが激しく反対運動を起こしています。
神社ゴリ押し政策のあまり、権威付けのために小さい神社はどんどん合併(合祀)して"強い神社"だけを残そうとしたわけですね。
明治43(1910)年には一応収束をみせますが、すでに相当数の神社や祭礼が失われていたそうです。
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向かって左側は、夫婦楠と呼ばれる2本樹。
いきすぎた政策もありましたが、ともかく明治天皇自身と明治政府による共作によってがんばって作り上げた"理想の君主"の姿は成功し、「明治大帝」は大変な人気と尊敬を集めたようです。
神宮の杜造営の際にも全国から10万本もの大量の献木が集まり、また延べ11万人にものぼる青年による勤労奉仕によって、現在にもつづく人工の森が完成しました。
その献木の運搬費などは自己負担だったそうですが、鉄道や汽船は半額になったといいます。
また大きな名誉と考えられて、町をあげて盛大に参加者を送り出したりした例もあったようです。
この森、手作りなんですね!
林学、造園の第一人者の本多静六を中心として、100年、150年、さらに永遠に続く「天然更新」の森としてデザインされました。
放っておいても持続する森ということで、そんなことが可能なんですね。すごいなぁ。
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150種あまりの菖蒲を見ることができる。
2020年に100周年を迎えた明治神宮と、その鎮守の杜。スクスクと育ったこの木々たちが、つぎの100年に向かってどんなすがたを見せてくれるのか、楽しみです。
丸山直己