オランダの子どもたちが幸せな理由②<身体的幸福度の観点から>
ユニセフの子どもの幸福度調査において、オランダが3度連続で1位を獲得しました。
そのことについて、レポートを読み、自分がオランダで生活して感じていることについて書いていきたいと考えています。
今回は<身体的幸福度>の観点からです。
ユニセフの幸福度レポートとは?
まず、「ユニセフのレポートとは何ぞや?」という方や、その内容について知りたい方は、是非前の記事からお読みいただきたいと思います!
また、レポートは3つの要素である
・精神的幸福度
・身体的幸福度
・スキル
から成り立っていますが、この記事ではその要素を3つに分けた観点から考察を書いています。
前回の<精神的幸福度>についての記事はこちらから。
<身体的幸福度>とは?
さて、それでは今回のテーマである身体的幸福度について、さらっとおさらいをしておきたいと思います。
ユニセフのレポートによると、
◉身体的幸福度
・5〜14歳の死亡率
・5〜19歳の過体重/肥満の割合
とされています。
つまり、人間にとって「死に至る」ということが最も不幸であると仮定し、そこに至る死亡率と、死への関連性が高いとされる「過体重/肥満」を軸として、身体的な幸福度をはかっている、ということになります。
日本とオランダの順位は?
今回の結果はこうなっています。
<身体的幸福度>の観点からみると、何と日本は1位!!
それではここで、詳しい内容をみていきましょう。
5歳〜14歳における死亡率は二国とも上位層
まず最初に、1,000人あたりにおける5歳〜14歳の死亡率をみると、日本は0.73%、オランダは0.81%という結果でした。これについては、二国とも上位層に位置していると言えます。
オランダと日本の身体的幸福度が上位層にあるのは、死亡率の低さからかもしれません。
また、ある調査では日本における一番の死因は「事故」であると書かれていました。それが事実であるとするなら、日本は医療体制が整った国である、ということが言えるかもしれません。
肥満率は日本がぶっちぎりの1位(14%)、オランダは7位(25%)
次に肥満度をみると、5歳〜19歳における過体重/肥満率は日本が14%で、オランダが25%となっています。両国共にそこまで悪い結果ではありませんが、日本のぶっちぎり1位は少し衝撃的でした。
恐らく海外に行ったことのある日本人であれば想像はつくと思うのですが、一度海外(特にアジア以外の国)に出てみると「日本人って世界的に見ても痩せているんだな...」と感じることがあるかもしれません。
日本国内ではまだまだ、人の体型を「太っている」「痩せている」とルッキズムに基づいてジャッジしやすい雰囲気があるように思います。周囲を見渡しても「日本人だらけ」で、他人の目を気にしやすい特徴を持つ日本人は、「外見を平均的なものにする」ということに一際気を使っているように思います。
また、これにはアイドル文化も影響しているかもしれません。海外であれば「アーティスト=痩せている」とはなりにくい国も多くあります。体型よりも「どんな考えを持った人か」で評価される部分も強いような気もします。
いずれにせよ、死亡率と肥満率を見れば、オランダがその順位を9位としていることで何か身体的幸福が高い。と言えることはあまりないかな、と感じます。日本に比べると肥満率の高い子どもたちが多いけれど、ただそれだけ。という感じでしょうか。
ところで日本の子どもたちは自分らしくいて、その体型なのか
決して日本を悪く言いたい訳ではないのですが、日本の子どもたちの肥満率が低いことは両手を挙げて喜べることではないような気がしています。
なぜかというと、今回は「肥満」であることが<身体的幸福度>を下げるとされていて、逆に「痩せすぎ」という状態にフォーカスされていないからです。
日本はこの「肥満率」においてぶっちぎり1位を獲得しているのですが、私が教えていた高校生たちは「太る」ということに対して強い恐怖心を抱いていたように思えます。
そして、それは「自分らしくいる」という選択としてではなく、「世間一般の体型イメージを考えた時に」という、他人との比較で生まれる意識のような気がしていました。
もちろん、(日本の子どもたちが比較的痩せているにせよ)その状態を健康として生きることはとても重要です。
肥満が糖尿病などの原因にもなる中、痩せ型であったとしても健康的な身体を維持することは命を大切にすることにも繋がるとは思います。
ただ、「自分らしく」という選択で今の体型を選んでいるのか、周囲と比較して自分のポジションを確立しようとしているのか、では身体こそ健康であっても、心的には少し無理が生じるのではないでしょうか。
そして、それは精神的な幸福度とも繋がるような気もします。
そういった意味では、生徒たちの顔を思い浮かべると、肥満率が低いことは必ずしも幸せに繋がっていないのではないか。とも感じました。
とは言っても、日本の誇るべき食育や給食制度と長寿国家
しかし、オランダで生活をして改めて感じるのは、日本全体を取り巻く「食育」に対する意識の高さです。
オランダの子どもたちのお弁当を見れば、その違いは一目瞭然。
サンドイッチにハムとチーズだけを挟んだだけのものを持参している子どもたちはたくさんいます。
私が話をしたオランダ人たちの中には、オランダの食事のことを、
「生きるために必要な行為」
だと言う人たちも多くいます。
つまり、味付けや栄養素をそこまで意識しなくても、食べてさえいれば生きていける。...という、言い方は悪いですが「戦時中か?!」とも取れる「食」への意識を持っている人は一定数いるのかもしれません。
それでもなおオランダの子どもたちの肥満率はそこまで高くないことを考えると、サンドイッチにハムとチーズのお弁当であったとしても、それはそれで健康を維持するには十分で、ハッピーなのかもしれません。
(何より保護者がハッピー。笑)
それに比べ、日本の家庭における食育意識や給食制度は整った文化だと言えるのではないでしょうか。(最近ではお粗末な給食もSNS上で見かけるようになってきましたが...)
いずれにせよ、「食べること」に関しては日本にある食文化は素晴らしく、世界的にも誇れる文化のように感じられます。オランダも9位と上位層にはいるので決して劣悪とは言いませんが、ここに関しては日本の素晴らしさが現れていると感じます。
オランダの子どもたちは身体的に幸福か
身体的幸福度が5歳〜19歳の死亡率と肥満率を参考にしていることを考えると、オランダは9位という順位で決して悪い訳ではありません。
食文化はその国の人々の文化を描写する時にとても大切な要素ですが、日本とオランダの食文化はあまりにも異なるため、比較することは難しいと感じます。
ただ、オランダ全体の文化として「無理しない」という概念があることを考えると、家族で食事を一緒に食べるとしても「何を食べるか」というよりは「誰と(家族と)食べるか」にフォーカスしているような気がします。
あくせく栄養のあるものを用意するプレッシャーを感じるよりも「みんなで集まって食べることこそ大事」というイメージでしょうか。
仮にそういった意識で生活している人たちが多いとすれば、多くの人たちが「何を食べるか」ということに対してストレスを抱いていないため、ストレスフリーであるかもしれません。
そしてそのストレスフリーな状態こそが、身体的幸福度だけでなく精神的幸福度を上げているとも言えます。
一方で日本は「誰と食べるか」よりも「何を食べるか」を優先する、もしくは両方を懸命に維持しようとする性格があるかもしれません。また「健康な食事」というイメージは家庭科という学校教育を通して育まれている部分も多少なりともあると思います。日本では調理実習なども小学校から行われ、「何を口にするか」ということを学ぶ機会が教育を通して設けられています。そういった意味でも、日本は命をつなぐ「食」について多く知っていることで、それが肥満率を下げるきっかけになっているのかもしれません。そして今回のレポートではそれが良い結果として現れているように思います。
いずれにせよ、身体的幸福度に関してはオランダも日本も上位層に位置し、決して悪い結果ではありませんでした。
日本が世界に誇るべき「食」への意識に関しては、オランダだけでなく他国が日本から学べることはたくさんあるように思います。
今回の内容はインスタグラム(IGTV)でも
さて、今回の内容について、夫の義則とインスタライブでも話をさせていただきました。
リアルタイムで参加し、質問をいただくこともあるのですが、幸運にもIGTVを通して多くの方々に観ていただくことができ、嬉しく思っています。
お時間があれば是非ラジオ代わりにでもご視聴ください*
instagram: eduble_nld
https://www.instagram.com/eduble_nld/
次回は<スキル>について書きたいと思います。
私たちの活動内容に賛同いただける方々からのサポートをお待ちしています。ご協力いただいたサポートは、インタビューさせていただいた方々へのお礼や、交通費等として使わせていただきます。よろしくお願いいたします!