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"緑の買い物かご"は「スーパーで誰かと話したい」というサイン?

こんにちは!先日、時々チェックしている"De Westkrant"というニュースサイトで面白い記事を発見しました。その記事のタイトルは、

"Green basket in supermarket for a chat"日本語にすると、「おしゃべりをするための緑の買いカゴ」という見出しの記事でした。

オランダの高齢化

どの国、社会においても課題化されているのが「高齢化」です。オランダも例外ではなく、CBS(オランダ統計局)によると、1950年代には8%だった65歳以上の人口は、2011年以降高齢化の一途を辿っているそうです。2021年においては人口の約20%が65歳以上となり、2035年にはその数が24.4%まで増加。さらに2040年には25.1%を迎え、2050年24.7%とやや減少を迎えるという見通しが立っているそうです。

さらに85歳以上の高齢者の数も増えています。2021年の約39万人から、2035年にかけてその数は71 万3,000人、つまり倍以上へと膨らみ、2050年には100 万人以上に増加するという見通しです。全体的な人口比率から見ると、その数は2021 年の2.2%から2035年の3.8%と急激に増加し、2050年には2.5%まで落ち着くという予測です。

85歳以上の高齢者の中にはパートナーとの死別によってより深い孤独を感じる人も多く、公的なケア以外の部分は彼らの子どもである50代〜70代の肩に大きくのしかかるという社会問題が予測されているそうです。つまり、高齢化する社会に対してそのサポートやケアをする側の(比較的若い)人々の人手が足りなくなるということ。その減少は実に顕著で、1975年時点では、85歳以上のすべての人に対して潜在的な介護者(50~75歳)が30人いたのに対して、2021年にはそれが約14人にまで急激に減少しました。さらにここからは減少の一途を辿り、2035年には約10人、2050年には5人になると予測されているそうです。

高齢者の孤独と、近所のおばあちゃん

先日、オランダの高齢者のセックスライフについての記事を書きました。

加齢後も楽しいセックスライフを送っている人たちがいるとされるオランダですが、高齢化は深刻化の一途をたどる様子。元気でセックスが楽しめている間は良いですが、いよいよ誰かの手を借りて生活しなければいけないくなった時に、助けを求める先の人たちの人手が足りないというのは深刻です。

私たちが住んでいる下の階には一人暮らしの88歳のおばあちゃんがいます。とうの昔に離婚したという超がつくほどヘビースモカーのおばあちゃん。息子はいると言いますが、家に来ている様子は一度も見たことがありません。

週に1回〜2回ほど乗合バンの迎えが来て、楽しそうにどこかセンターへ出掛けている様子ではありますが、普段は家でテレビを1日中観ていると言っていました。

先日、そんなおばあちゃんが私たちの家のベルを鳴らして「あなたはひとりぼっち」と知らない人の声が何度も聞こえると言うので、確かめるべく家に入らせてもらいテレビとラジオを消してもらったのですが、何も聞こえませんでした。「ねぇ、聞こえるでしょう?」と言われたのですが「おばあちゃん、何も聞こえないよ」と私。「そう。私だけに聞こえるのね」と、おばあちゃんは寂しげにドアを閉めたということがありました。

オランダの高齢者の孤独救済

あまり知られていませんが、オランダでは高齢者の孤独を何とか和らげようとする取り組みがいくつかあります。もちろん、こういった取り組みが「大成功」かどうかと言われればそうではない部分もあるのかもしれませんが、取り組もうとする人たちの存在はいつも希望だなと思っています。

▶︎ 若者の住宅不足 × 高齢者施設への住み込み
Connect Generationsは、オランダの住宅不足と高齢者の孤独にwin-winな関係をもたらす団体です。オランダは何年も慢性的な住宅不足にあり、特に学生は家を出てから1人で暮らすアパートや、シェアメイトと暮らす場所をなかなか見つけられないという問題が深刻化しています。そこで、Connect Generationsはそこに高齢者との関わりをプラスして、高齢者施設の一部を学生に貸し出すことで学生にとっての部屋を、そして高齢者にとっての関わりを創出しようとしています。

具体的には、学生は一般的な家賃に比べると安い月々数百ユーロの家賃を支払い、月30時間の高齢者との接点を持つボランティア活動を約束します。地域によって若者居住者の施設は多少異なるようですが、おおよそ20平方メートルの部屋に自分専用のトイレ、バスルーム、キッチンがあり、リビングルームを他の何人かと共有するそうです。

▶︎ 高齢者だけではない、より混ざり合った社会へ
少し話はずれますが、Connect Generationsの活動は高齢者と若者の接点だけではなく、障がい者やホームレスの人たちとの接点を持つ活動にまで広がっているそうです。

これから社会に出ようとする学生たちや若者にとって、社会というものを広く捉えるConnect Generationsの経験はこれからの社会を考える時にも役立つそうです。

こんな風にして、社会が抱える問題を組み合わせて"みんなwin-win"みたいなことを考えるのが得意だと感じます。

「緑の買い物かご」の導入を提案した「おばあちゃんのスープ」という団体

さて、前置きが長くなりましたが、高齢化する社会と彼らの孤独、そしてオランダが得意な"win-win"な考え方に基づいたConnect Generationsのアイデアに続いて、2024年になってオランダ大手のスーパーで導入されたのがOma's soep、日本語にすると「おばあちゃんのスープ」という団体が考案した「緑色の買い物かご」という取り組みでした。

記事はこう続きます。

特別な緑色のバスケットがアルバート・ハイン(オランダの大手スーパー:以下AH)の 10店舗に置かれ、そのうち5店舗はオランダの西部に位置しています。 AHのカラーである"青いバスケット"ではなく、"緑のバスケット"を持った顧客は、誰かと話すチャンスを望んでいる証。これは、孤独と闘い、「買い物かご」で人同士のつながりを促進したいと考えている Oma's Soep(おばあちゃんのスープ)という団体の取り組みです。

多くの高齢者は孤独を感じており、スーパーに行くことがその日の唯一の社会とのつながりを感じるルーティーンであると考えていることがよくあります。 Oma's soep(おばあちゃんのスープ)という団体は、緑のバスケットを導入することで、顧客に他の人、特に高齢者にもっと頻繁に話しかけてもらいたいと考えています。 緑の買い物かごの中には会話を始めための方法が書かれたチラシが入っていて、電話番号を交換するためのスペースもあります。 これはアムステルダムで、1 か月間の試験期間として行われています。

西部にあるAHの5つの支部、Spaarndammerdijk, Bilderdijkstraat, Jan Evertsenstraat, Kinkerstraat and Overtoomが、現在試験的にこの取り組みを実施中です。 Oma's soep(おばあちゃんのスープ)は西部のContactwegにあり、おばあちゃんのレシピに基づいたスープなどを販売しています。 団体によると、少なくとも利益の半分は孤独と闘う人々を支援するための活動に充てているそうです。

https://www.dewestkrant.nl/groen-mandje-in-supermarkt-voor-een-praatje/

まず、「おばあちゃんのスープ」という名前が素敵。笑 日本語にすると「おばあちゃんの味噌汁」って感じでしょうか…実に美味しそう….

記事を読んで興味を持った私は、この"Oma's Soep"という団体について調べてみたのですが、この団体がとっても面白い!ということで、この団体についても1つ記事を書いてみました。

コロナ禍にも生まれた「おしゃべりレジ」

ちなみに、同じく大手スーパーのJumboはコロナ禍にこれに似た取り組みを一部の店舗で行なっていました。その名も「おしゃべりしたい人のレジレーン」です。

オランダ在住の倉田直子さんか記事としてまとめてくださっています!

セルフレジも増加しているオランダ。スーパーによっては有人レジよりもセルフレジの方が多いスーパーも増えています。そんな中、前述したように高齢者の人たちにとっては「スーパーへの買い物」が唯一の外出だったり、誰かと話す機会であることも。

忙しい動きが目立つスーパーで、少しでもゆっくりおしゃべりを楽しんでもらえたら…そういった思いから生まれたのがこの「おしゃべりレジ」なのでした。

実は、今回の「緑の買い物かご」の別の記事では「若い人はスマホに忙しくて…」という文脈の内容を見つけました。いつの間にかコミュニケーションの場ではなく「日常の買い物を済ませるだけの場所」になりつつある現代のスーパーマーケット。スマホの画面を見ながら、効率的に、時間をかけず、ただ買い物に集中する若い世代の姿に、高齢者は寂しさを感じているのかもしれません。

今はまだ「試験的」な取り組みではありますが、是非この取り組みが全国的に取り入れられて欲しいなと思います。ボランティアを始めた私も、いかに地域の人たちが「誰かとの接点」を欲しているのかをひしひしと感じています。「忙しくて話す暇もない社会」から「もっと気軽に接点が持てる社会へ」。オランダ社会の"進み"が楽しみです!

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