Dalton小学校視察記録:校長1年目、何故公募制校長に立候補したのか
このマガジンでは、オランダにあるDalton小学校を学校見学させていただいた時のことをまとめています。
今回インタビューさせていただいたのは、去年の8月から公募校長制度を利用してこの学校長に着任したアネットさんです。
この記事では、何故アネットさんが一般企業から小学校の校長へキャリアをスイッチさせたのか。どのようにしてこのDalton小学校の学校長になったのかをご紹介します。
教員養成大学を卒業してから、教員経験をすることなく約30年
今回インタビューをさせていただいたアネットさんは、いわゆる公募校長制度を使って校長先生になられた方です。大学時代、彼女の専攻はアートで、教員養成大学も芸術専攻で卒業しています。
その後、すぐに教員になることはなかった彼女ですが、そのキャリアはいつも芸術の側にありました。メトロラインを敷く会社に勤めていた時も、彼女の強みは活かされてきたようです。その後、いつも芸術の近くに身を置きながら彼女はキャリアをステップアップさせていきます。そして、ついにTechnolabという場所に出会います。
TechnolabはLeidenにありますが、Leidenは全国的に見てもコンパクトでありながら非常に教育基盤が整った場所だと行政の方は言います。保育園から大学、大学病院やあらゆる教育的施設が集結しているその土地に、Technolabという、企業と行政が手を取り合って教育活動を促進させるための場所が生まれました。高等教育(MBO,HBO,WO)の生徒たちがインターンシップも行えるこの場所は、主にテクノロジーやサイエンスを取り扱い、時に小学生がラボを訪れることで授業も行います。もちろんラボから小学校などへ出張授業も行います。後日、Technolabを訪れる予定があるので、そのレポートもまた記事にしたいと思います。
彼女はTechnolabで総合的な指揮官を任され、4年間、ラボの経営方針などを担ってきました。そしてある時、若く情熱に満ちた校長に出会います。(この校長先生とお話をする機会もいただけたので、それについてはまた記事で書きたいと思います)
「若いのにも関わらず情熱があって、ビジョンがある。頭がよくきれるその男性に出会って、私も教育現場で働きたい!!と強く思ったの」
その時のことをアネットさんは目を輝かせながら話してくれました。そして、そこから公募校長制度にチャレンジすることにしたのです。
芸術やサイエンス、テクノロジーがあまりにも足りていないのでは?
その運命的な校長との出会いが学校長を目指すターニングポイントになったことも確かですが、それ以外にも彼女は教育、特に初等教育に芸術やサイエンス、テクノロジーの視点が足りないことを懸念していたと言います。
「自分の強みを教育に還元する」そこには彼女の強い意志があったのです。
教員経験がない。でも、教育的ビジョンと過去の経験が認められた
オランダでの校長は日本の校長よりもさらに裁量権が大きく、いわゆる「会社経営者」のようなものです。学校における教職員の採用も、基本的には学校ごとに行われます。よって、その学校の魅力づくりをすることで良い人材や生徒が集まることも確かですが、魅力のない学校には教職員も生徒も集まりません。オランダには学区制がなく、子どもたちは行きたい学校に通えるのです。つまり、学校を生かすも殺すも学校長の経営力次第と言えるでしょう。
教育現場で働きたい。でも、教員経験はない。
しかし、いくつかの学校の面接を受けるうちに、教員養成大学を卒業していた彼女の学歴と、Technolabで実際に経営に関わっていた経歴が認められ、ついに彼女はDalton小学校の校長として就任することが決定したのです。
先に校長就任、研修はあとからで大丈夫?!
Dalton小学校の校長1年目。
「走りながら考える」
言葉にすれば簡単に聞こえますが、実はこれができる人というのはなかなか限られた人物なのではないでしょうか。アネットさんと話をすると、教育における情熱をとても感じます。しかし、その反対側で「経営者」として学校の外で働いてきた経験が「学校経営」を支えているように見えるのです。
一辺倒に「研修をしてから」ではなく、その人の経歴と経験に応じて制度に柔軟性を持たせる。実はオランダの教育にはそういった部分が本当にたくさんあります。それは、教員養成の段階から始まり、教員になってから、校長として働き始めてからも就業形態や研修制度などで見られます。
「教育には様々なルートがあって良い」
オランダの柔軟な制度はその在り方を通して教育とは何かを教えてくれているように思います。
Dalton教育とは?
次の記事では、アネットさんが働く学校を見学させていただいて見えた、Dalton教育の特徴についてお伝えしたいと思います!
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