オランダの性教育絵本"Ik vind jou lief"
先日、オランダにある性教育の絵本"NEE(NO!)"という絵本を紹介させてもらいました。
今回は、それとは別の本を紹介したいと思います。
その名も、"Ik vind jou lief(I like you)"という本です!
どんな内容?
それでは少し、本の内容をご紹介したいと思います。
各ページにテーマがあり、見開き程度でその内容に関する絵と短い文章が書かれています。
友情や、何かを好きだと思う感情と愛情
最初は「友達」への言及から始まるこの本ですが、友情は変化するということが書かれています。
もちろん仲が良い時もあれば、喧嘩をする時もある。
そして、好意を抱く相手はいろんなところにいます。
学校の友達や近所の遊び相手、動物だって友達、そして好意を抱く相手です。
「好きだな」という気持ちはパパに対して抱く時も。
いろんな「好き」があり、誰に対しても「好き」だと思うことが出来ると書かれています。
そして、それが「愛」になった時、人々は愛情のある言葉をかけ合います。
お花を選びたくなったり、腕を組んで歩いたり。
好き同士になると、隣同士に座るととても良い気持ちになる。と書かれています。
女の子の身体と男の子の身体
ここから、成長によって訪れる身体の変化について書かれています。
本の内容をそのまま訳したものを書いてみましょう。
もう身体の違いについて気付く年齢だから、きちんとした知識を
この絵本は5歳〜8歳向けの絵本とされているのですが、女性器についてもある程度深く触れています。
5歳と言えば私の子どもと同じ年齢ですが、時に娘は自分と私たちの身体の違いについても言及します。
一緒にお風呂やシャワーに入ることがあるため、自分と大人の身体の違いにも気付きやすいのがこの年齢ではないでしょうか。
その時に「そんな答えにくい質問はしないで」という雰囲気を出してしまうと、子どもは自然と「これは聞いてはいけないことなんだ」と察知します。
娘はオランダの学校に通っている以上、私たちがそれと向き合わない訳にはいきません。そんな時はこの本を取り出して、彼女の疑問に答えるようにしたいと思っています。
生まれ方はそれぞれ
オランダの性教育の絵本には、いつも動物が出てきます。
この絵本の「みんな赤ちゃんだった」というところにも、動物についての言及があり、人間のように生まれる赤ちゃんもいれば、卵から孵化する赤ちゃんもいる。という風に書かれています。
「いろんな生まれ方がある」という生物学的な観点として描かれているのですが、これが「いろんな生まれ方がある」つまり総じて、いろんな赤ちゃんのでき方や、育ち方...という多様性への理解にも繋がっている気がします。
キスとハグ
日本ではあまり親子がスキンシップを行っている様子は見かけないような気がします。子どもが小さければ小さいほど、それは自然なことだと映りがちではないでしょうか。
オランダでは小学校の送り迎えの際、必ずと言って良いほどキスとハグをしているように思います。それは年齢問わず、groep8(小学校6年生)程度でも、です。
人が誰かに好意を抱き、その人と互いに想いあっていることがわかれば、
自然とハグし、自分が相手を好きだと思っていることを伝えあえます。
そういった行為は動物にもみられ、年齢や性別を問いません。
ハグをしてキスをする。
これは愛し合う者同士にとって、とても自然なことであると本には書かれています。
セックス、愛し合うということ
本の中では、人に対する気持ちがどんどん大きくなっていくことが描かれていて、人が愛し合うと、ハグやキス以上の関係を求めるようになる。と書かれています。
「セックス」という言葉を子どもの耳から聞くと、ドキっとするのが日本人ではないでしょうか。精子が卵子にたどり着くことで生命が誕生するという過程は教えられることも多いと思うのですが、子どもとしては、
「そうなる時に愛し合う2人は何をしているの?」
というのが子どもの単純な疑問だと思います。
人が気持ちを通じ合わせ、愛し合う時の行為は尊いものであるということ。
だからこそ、誰かに好意を抱くというお互いの気持ちを大切にしてこそ、
セックスという行為に繋がるということを伝えているように思います。
そして赤ちゃんができる
赤ちゃんが生まれる
必ずしも全ての子どもが生みの親と過ごす訳ではない
子どもが生まれるまでのプロセスを描いているところもオランダらしいといえばそうなのですが、必ずしも全ての子どもたちが生みの親と一緒に生活する訳ではない。というところまで、この本は言及しています。
まだまだ男女のペアから子どもが生まれ、そこで育つということが主流と考えられる世の中ですが、そうでない環境で育つ子どもたちももちろんいます。
性教育の本は、そういった子どもたちの存在を知ってもらう役割を担い、周囲の子どもたちにも理解を示すよう促しているように思います。
性行為については11歳から
オランダにおいて、性行為について深く学ぶのは11歳頃と言われています。
その時にはコンドームの使い方や、マスタベーションについてもきちんと説明を受け、出来るだけオープンな雰囲気で学ぶと聞きます。
「オランダの性教育は世界一」と言われていますが、本を読んでいても、ただ単に「性行為」にまつわる話だけが性教育なのではなく、命が生まれた後の家族やその多様性について学ぶことも性教育だと気づかされます。
"Ik vind jou lief" = "I like you"
この本の内容が少しでもオランダの性教育を知ってもらうきっかけになると嬉しいです。