家庭での性教育 / 0歳-18歳の性教育
このマガジンでは「世界一」と称されるオランダの性教育において、この国で紹介されている性教育の資料を日本語にすることで、多くの方々に性教育の大切さをお伝えしています。
シリーズ最初は、Rutgersというオランダの性教育のシンクタンクとされる団体が提供している「0歳-18歳の性教育」という、保護者向けの資料をご紹介します。
こんな質問に困ったり、疑問を持ったことはありませんか?
・子どもたち同士の"お医者さんごっこ"はOK?
・「赤ちゃんはどこから来るの?」と聞かれたら?
・思春期の子どもがインターネットで性的な画像や動画を探すのは普通のこと?
5歳の娘は、人の身体に興味があり「私はどうやって生まれたの?」と聞きます。それは「生まれ方」の話でもあり、「私はどこからきたのか」という疑問でもあります。我が家では精子や卵子ということばを教え、それはとても尊いことだと伝えています。
愛おしいあなたが私たち夫婦の元へきてくれたことは奇跡であり、とても愛おしい存在であることを伝えるということでもあると考えています。
居心地が良く、性に関する話がしやすい家族の雰囲気とは
研究によると「居心地が良く、性に関する話がしやすい雰囲気」で育った子どもたちは...
・初体験まで長く待つ傾向があります
・セックスをする際、予期せぬ妊娠や性感染症から自分自身を守る術を知っています
・強制的な性行為被害や、相手に対して強制的な性行動をするリスクを減らす傾向にあります
・性的関係において、性行為に対して自分が好むものや、反対に好まないものに対して意見を言うことができます
「性の話をすることで、逆に性に対する興味を加速させるのではないか」そういった問いに対して、「実は知らないことの方がリスクである」ということを説明しています。知っているからこそ、自分のボーダーラインや他人のボーダーラインを理解し、正しい行動を心がけるようになる。
「性」というトピックをきちんと机の上に乗せて話し合うことの需要性が語られています。
「性発達」とは何を指しているのか?
子どもたちの成長とははただ単に「身体が大きくなる」ということだけではなく、性に対して心理的にも成長することを指します。よって、性発達とは生物学的なものだけを指す訳ではありません。愛とは何か、人との関係、自分自身のジェンダーを見つけていくことでもあるのです。そして、自分自身が何を好み、何を好まないのか。どんなことに対してなら「OK」と思えるのかということを「言えるようになること」でもあります。
身体が大きくなることだけを成長と呼ぶのではなく、心の発達も成長と呼ぶのであれば、心にも合わせた教育が必要です。人が誰かに好意を抱くこと、そしてその感情に基づいた適切な行動とは何か。自分よがりな行動にならないためにも、さまざまな価値観を持った人々がいることを知る必要があり、自分の意見もまた大切にできる人間である必要があります。
何故、保護者であるあなたが重要な役割を担っていると言えるのか?
家庭での雰囲気や環境は、子どもの性発達に影響します。性について話しやすく、居心地が良い家庭環境や、子どもの成長に対してサポート体制が整い、その成長に興味を示す保護者の役割は、健康的な性発達を促すことにつながります。家庭に安心を感じ、愛されていると感じることができる子どもたちは見るに明らかです。
子どもたちは時に、自分自身の身体についてや、人との関係や恋をすることなどについて聞いてくることもあるでしょう。もしあなたが保護者としてそれらの問いに対してオープンかつリラックスした状態で答えることができれば、性について保護者と話をしても良いのだということがわかるのです。そして、あなたの子どもはどのようにして人との関係を築いていくのか、性的な関係において「自分が心地よいと思える判断」とはどのようなものなのかを学んでいきます。別の言葉で言えば、保護者であるあなた自身が子どもにとってのロールモデルにもなるということです。
保護者へのメッセージにもあった通り、性教育を行うのは学校だけでなく家庭でもあるとするならば、保護者はその責任の重大さを理解する必要があると思います。結局のところ、家庭での性教育とはこれまでの親子関係をどのように築いてきたかの延長線上にある。ということでもあります。
保護者としての役割
・子どもに対して安全な環境を与え、保護者自身が子どものことを気にかけていること、大切に思っていること、そして彼らが愛されていることを伝えましょう。寄り添って話をすることは、子ども自身が愛着を感じることができることにもつながります。
・ルールを伝えてみましょう。ルールを伝えることによって、何が許され何が許されないのか、ということを教えることができます。例えば、自分の陰部を他人が見ている前で触ったりしない。ということなどが挙げられます。
・一般的な性の常識や価値観を共有しましょう。もし保護者自身が、性に関してはっきりとした常識や価値観を伝えることができれば、子どもにもそれについてどう思うかということを聞くことができます。そしてそういった過程を通して、子どもたちは自分の中にも性に関する常識や一般的な価値観を確立していくことができるのです。
・心理的にも、身体的にも子どもたちに自分だけの空間を用意してあげましょう。子どもたちが自分の感情と向き合い、自分自身の身体と向き合うために、子どもたちが安心できるだけの空間を用意してあげることも保護者の役目です。
・例を挙げてみましょう。保護者であるあなた自身が、様々なシチュエーションに対してどのように立ち向かうかを子どもに示してあげましょう。その中で自分の欲求や立ち入って欲しくないと思うボーダーを示すことで、子どもたちは身近な例としてそれを学びます。
・関わってあげることを忘れないようにしましょう。もし保護者として子どもたちがしていることに対して興味を示すことができれば、それは子どもたちにとって「気にかけてもらっている」という安心感につながります。そしてその安心感や信頼が、彼らが問題を抱えた時などに「お母さんお父さんに聞いてみよう」という気持ちにさせるのです。
・適切な情報を与え、子どもたちの疑問から逃げずに答える努力をしましょう。性について子どもと話すことで、その話題は家庭内でも話し合えることであるということを示すことができます。そしてそれはまた、子どもが思春期などの難しい時期を迎えた時のための準備にもなるはずです。
保護者は子どもにとって「大人になった時の例」であるとするならば、そこに個人的な意見や見解があることは当然かもしれません。保護者自身が正直に自分が何を好み、何を好まないのか。そしてその理由を明確に伝えることで、子どもは「別の価値観」を学ぶことができます。そしてそのボーダーや価値観を家族以外の人間との間で照らし合わせることで、自分を深めていくのではないでしょうか。
困難が立ちはだかったとき「この話はお母さんお父さんにはできない」と思うより「お母さんお父さんはこれについてどう思うんだろう」と思うことができれば、それはつまり保護者が最も信頼でき、どんなことでも相談できる存在だと認識しているということかもしれません。
親子関係にも話したくないことや知られたくないことはあるかもしれませんが、「困った時に頼れる存在」であることの始まりは、自分の意見を尊重し、自分のことをいつも気にかけてくれているという安心感の中にあるのかもしれません。