印税の誤解が広まる前に
まず印税10%の誤解ですが
多くの方は素人なので分かりにくいと思いますので
紙の単行本と電子にわけて話をします。
紙の単行本の話から
雑誌に掲載されまとめられたものを200P前後で販売するものを
漫画では単行本と呼びます。
リミックスと呼ばれたりコンビニ本
と呼ばれるのが廉価版になります。
廉価版とはお求めやすい価格になった
サイズや紙の品質を落とした本です。
小説は
ハードカバーが単行本に相当し
文庫本が廉価版になります。
僕たちがよく読む文庫本は廉価版になります。
世間で言われている安いという印税10%ですが
安くはないのです。
社会経験者なら分かる数字ですが
世間を知らない人だと安く感じるのです。
各社実は数字が違います。
竹書房は紙は初版8%、重版分から10%ですし
名前は言えませんが少なくない数の出版社が
売り上げ分の印税しか払わない会社も存在します。
刷った分の10%が業界で統一されているなどというのは嘘だし誤解なんです。
大手だけです。なぜなら良い条件だから。
搾取と言われる誤解を
では9割の内訳をネットで拾った情報ですが
紙代 6%
写植 12%
印刷製本 7%
編集費 3%
出版社 32%
著者印税 10%
取次 10%
書店 10%
だそうです。
運送輸送費がこれは抜けているので
正確ではないと思います。
日本の本が安価で売れていたのは
雑誌のおかげで
毎週、雑誌を書店に配送するついでに単行本を
抱き合わせで送らせていたんですが
近年は雑誌が売れなくなり
書籍の輸送費も別途でかかるのです。
本が高騰している理由は
紙、インクだけの石油製品だけでなく。
輸送費も上がっているからなのです。
さてそれでも
出版社は3割以上取っていてずるい!!とお思いの方がいる方思いますが。
ここで実売率
という聞きなれない言葉を素人の方にはレクチャーしなければいけません。
売れた数の事です。
1万部刷られた本が七百円なら著者には70万円入ります。
10万部なら700万円が
1000万部なら7億です。
刷られたらです。売れなくてもです。
ヒット作の実売率は6割から7割と
サイコやマダラの原作で有名な大塚さんが著書で書いています。
サイコが発行部数1000万部なら600万部売れたことになり
400万部が全国の書店に並んでいる在庫
つまりワンピースの本が山のように本屋さんに在庫として置かれている数も
数千万部分あるということなんです。
返品されるとそれは出版社の在庫になり
資産税がかかります。
分かりますか?売れ残りが資産として計算されてしまうのです。
そして税金を取られてしまいます。
ですから出版社はそれを裁断処分します。
超売れている作品で7割から8割。
完売状態というのは9割です。
ほとんどの売れない漫画は実売が5割に到達しません。
つまり半分売れ残るわけです。
売れない本の負担分、保存中の倉庫代、裁断処分代
全部出版社が持ちます。
さらに雑誌掲載事の原稿料は出版社が負担します。
出版社はその原稿料をどこで回収すれば良いのでしょう?
雑誌の利益で回収する?
雑誌が売れないのに?
単行本の売り上げで原稿料分を回収しなければいけません。
約160p分の作画料。
今公開されている
集英社ジャンプの原稿料から換算します。
1p18000円です。
288万円かかります。一冊の単行本にかかった原稿料です。
出版社は3割単行本で回収できるので
実売5割(半分しか売れなかった場合)の計算で440円の単行本なら
2万部から4万部は売れてくれないと本を作った制作費を回収できません。
果たしてどれだけの先生が4万部売れるのか?
誰かが損を被っていてくれているという事を
経済が音痴だと分からないのです。
講談社マガジンは14000円です。
その分ハードルは低くなります。
小学館が原稿料が安い場合、やはり損益のハードルは低くなります。
半額の原稿料のところのハードルは
半分の発行部数がハードルになります。
搾取と呼ばれるのは本来
原稿料もろくに払わないで印税も払わない会社の事です。
原稿料も払わない、印税も払わない会社。それはどこよ?って話。
これは確実に小学館ではないですね。
誤解が解けた人は
電子の話に進みましょう。
電子は今どの書店もDL数や価格を作家に記載するようになっています。
かつては入った金額を何の詳細もなしに送りつけてきたのですが
今は明記しています。
某出版社が50パーセントという言質も
配信会社から手数料を引かれた出版に入ってきた金額の50%だったと
僕は記憶しています。
つまり配信会社がどれだけ抜いたか?が分からないと
損しているのか、得したのかが分からないといいうのが本音です。
パーセンテージが
何を指しているのか?
総売り上げなのか?配信会社から振り込まれた数字からの
パーセンテージなのか?
それは契約書に書いてありまちまちなのです。
先ほど紙の雑誌の印税も統一されていないと書きましたが
紙の本も実売印税の会社があるんです。
ですから5割しか普通は売れないわけですから
半分の印税しかもらえない場合も存在するわけです。
電子のKindleやファンザは利益率が良いですが
それは本が売れたらの話で
売れなければ原稿料が0なので新作はド赤字になります。
印税率が良い会社は
原稿料が0なので
本が売れなければそれで作家はジエンドです。
印税率が良いとこの使い方は
過去ヒット作をリブートしたり
自費出版で個人的な作品(エロ)を売りたい時に効果を絶大に発揮します。
完全新作をKindleでやるというのは本来無謀な行為なわけです。
宣伝もしてくれませんしね。
「持続可能(サスティナブル)な環境は
持続可能な資金によって可能」
になるというのは
今年のダボス会議でテーマになった事です。
当たり前の話ですよね?
メタバースを継続するためには
その数倍の資金が必要であり
今は実現不可能だとMetaは発表しました。
メタバース事業は継続するが縮小し
資金は今後AI開発に投入するそうです。
電子では
紙の分の作業費がなくなったので出版社が搾取している!
という方がいるのですが
もし、逆の立場で
「デジタルで効率化し、アシスタント代もトーン代もかからなくなったじゃないですか?これはぼったくりですよね?描いてもいないし!背景AIじゃん!」
で原稿料を半額にしてもいいという事ですね?
原稿料をもらわないで
印税率を80%にするのは個人の自由ですが
漫画が必ずしも絵だけでなく演出や演技の部分や作家性に価値があるように
校了や、ファクトチェック(間違えてることを書いてないか調べる)
アドバイスに価値がないと言っているようなものです。
沢山の本を読んできた人の頭脳こそが価値があるのですから。
横流しと断定し片付けるのは良くないです。
コンピュータだからお前楽してやがんな?
って言われれると烈火の如く怒るのが漫画家ですが
仕事が効率化されて給料があがっるって(相対的に)いうのは文化的上昇のことなんですよ。
これが僕の見解です。
話が通じない人達に理解してもらう必要はないのですが
知らないのに他業種を侮辱するのはやめましょうね。
自分がされたらやでしょう?
お前の仕事には価値がもうないって。
追記
なんか5ちゃんねるに貼り付けられたようで
お客さんが一杯きたので
補足書いておきますが
文脈は最後の1行の「お前の仕事にはもう価値がない」て
簡単に言っちゃダメだよって話です。
コメントにあるように本の値段の中には出張費とかありますもんね。
小学生向けの値段に含まれるものという本にはこうあります。
商品をつくる→倉庫に運ぶ→倉庫に保管する→店に運ぶ→店で売る
この全てに光熱費や燃料費、人件費がかかっています。
またお店はペットボトルのジュースを自分の儲けが出るような価格帯で売っていい事が保証されています。
ただ、本は再販制度を維持するために
本屋さんが安売りとか、
あるいはプレミアがついてるからといって高値で売れません。
一冊あたりの儲けが固定されてしまっている制度でもあります。
ここが搾取と誤解される所以かもですね。
電子の場合はペットボトルのジュースのように価格帯や率の変更は自由ですから。
本が売れると見込んでる人は
原稿料0でもいいんじゃないでしょうか?
僕の知り合いで
短期間で何千万円も薄い本FANZAで稼いだ方もいますし。
原稿料の1/10も稼げなかった人もいます。
リブオアダイ
こうなるとほぼマグロの一本釣りみたいな業種なので
よほどのことがないと経済的な再現性が難しいですよね。
出版社の必要性っていうのはまさにその
「再現性を高める」ということなんじゃないかな?って思います。
こちらの記事の方が重要なので
お読みください↓