医師、歯科医師への道12
前回同様、学会誌に掲載された仮面鬱病で全ての歯を失った症例をご紹介しよう。
同じく中年女性だった彼女、上顎第一臼歯部が痛み、ある歯科医院を訪れた。
レントゲン検査で異常がなかったため、頓服で様子をみたが全く痛みが治らないと言う事で、歯の神経を取る事になった。
ところがである。神経を取ったにも関わらず痛みが一向に引かないため、患者さんに懇願されるまま抜歯をすることに。
通常は、神経を取ったり歯を抜くと、最初は痛みがあるがだんだん痛みは引いていく筈だ。
しかしながら、歯を抜いたにも関わらず、痛みが引かず隣の歯が痛いと言い出した。
隣の歯も抜いて欲しいと懇願されたが、流石に可笑しいと思った歯科医は、断ったと言う。
こうなると、神経を取ったり歯を抜いてくれる歯科医を探して患者さんは、医療機関を彷徨う事になる。
一般的には、ドクターショッピングと言われる行為で、自分の症状に理解を示し医療行為を行ってくれる医師を探して、数軒〜数十軒の医療機関を次々に渡り歩く事になる。
彼女の場合、歯を抜いてくれる歯科医を次々と渡り歩いた為、結局全ての歯を失う事なった。
一本も歯がないにも拘らず、結局痛みが治らず、原因が仮面鬱病と分かった時は、既に手遅れで、総入れ歯をする事になったのだ。