見出し画像

オランダ総選挙いよいよ明日、37政党からどこを選ぶ?

4年に1度の総選挙がいよいよ明日に迫った。正確には「コロナ対策」として感染リスクの高い人は月曜日からすでに投票できるし、70歳以上のお年寄りは郵送で投票を済ませているのだが、それ以外の国民(18歳以上)は明日、17日に投票することになっている。

今回の選挙はオランダ第二院(Tweed Kamer、日本の衆議院のようなもの)の150議席に座る議員を選出するというもので、参加する政党はなんと37政党!アメリカのように二者択一というのもナンだが、こんなに選択肢があると「どこを選べばいいか分からない!」というオランダ人も多い。

それでも大体いつも議席を獲得する8政党がメジャーどころだろうか。ここ1週間は毎日、朝から晩までこれら政党の党首の顔を見ないことはない。特に今年はコロナで集会が難しいので、テレビやSNSがキャンペーンに大いに活用されている。

前回の総選挙(2017年)では、シリアなど中東から欧州に押し寄せる難民の波や相次ぐテロ事件を受けて、オランダでも移民問題が大きな争点となった。今回も移民問題は争点のひとつだが、ほかにもコロナ対策や住宅問題、教育格差、環境保護、保険制度、年金、雇用問題などなど、争点は多岐に渡っている。

私はオランダ国民ではないため、残念なことに総選挙の選挙権はないのだが、党首たちの熱い討論につい引き込まれ、毎日のように夜遅くまでテレビで繰り広げられる党首討論会やトークショーを見てしまい、寝不足が続いている。そこで、みなさんがオランダの総選挙をちょっと楽しめるように、すごく大雑把に8大政党の特徴や論点をまとめてみた。

8大政党の特徴と論点

VVD:マルク・ルッテ首相が率いる現在の最大政党。経済成長に重きを置いており、「事業主の政党」と言われている。コロナ禍以前のオランダの経済発展やイノベーション促進に関しては一定の評価があるが、環境問題への取り組みは甘く、介護や文化などへの予算配分は削減。コロナ対策ではルッテ首相のリーダーシップが評価されており、選挙前の予想では国民の人気が一番高い。

CDA:連立与党の1つ。起業や経済成長を重視しており、VVDと相性がいい。国民に職を与えることを重視しており、失業手当の給付期間は現在の2年から1年に短縮。年金受給年齢も引き上げ、老人の社会貢献を促したい考え。環境問題についてはVVDより野心的で、2030年までに温室効果ガスの排出を55%削減したい考え(VVDは49%)。これを実現するためには少なくとも原発を2カ所建設する必要があると考えている。

ChristenUnie:現在の連立与党の1つ。2000年に設立された比較的若い政党。根底にはキリスト教の思想があり、「神が望む」社会を築くことをモットーとしている。キリスト教の助け合いの精神から、移民については寛容。環境問題も「神が与えた」自然の多様性を保つため積極的。VVD、CDAとともに温室効果ガス削減の目標達成に「原発は必要」との見方。教育に関しては、1クラスの人数など、学校の自治に任せたい方針。

D66:現在の連立与党の1つで、4党の中ではいちばん左翼的。女性党首シーフリッド・カーフ氏が率いる。「平等なチャンスを得られる社会」をモットーとしており、特に教育を重視する党として宣伝している。1クラスの人数は最大23人に抑制。亡命者の受け入れ関しては、年間5000人に増加させる一方で、この制限は守りたい考え。環境問題にも積極的で2030年までに温室効果ガスを60%削減する目標。与党の中では唯一、原発の建設に反対している。

PVV:ヘルト・ウィルダ―氏が率いる右派政党。2017年の総選挙で移民問題が最大の争点となるなかVVDに次ぐ第2党に躍進したが、あまりにも過激な政策から与党にはなれなかった。EUではなく、オランダの国境で移民の流れを食い止めたい。オランダの法律よりもイスラム法「シャリア」を重視する人々が国内に増えることに警鐘を鳴らし、イスラム諸国からの移民を受け入れない意向を示している。イスラム系移民に対して「Genoeg is genoeg!(いい加減にしろ)」と思っている国民の間に根強い人気がある。

GroenLinks:オランダで「いちばんグリーンな政党」と言われている環境問題重視の政党。2030年までに温室効果ガスを63%削減する必要があるとみて、産業界に「炭素税」を導入するほか、空港の縮小、公共交通機関・自転車道などへの投資、クリーンエネルギーの促進、電気自動車への減税、植林などでこれを達成したい考え。原発には反対。医療・介護については保険、製薬にも政府の介入が必要との見方。大規模なテック企業には「デジ税」を導入し、大金持ちへの税率もアップ。学校のクラスの人数は21人に減らし、保育園は無料に。移民の年間クオータ制も廃止。

PvdA:労働者のための左翼政党。コロナで職を失った人への仕事確保、男女の給与格差の是正、最低賃金の上昇を第一に掲げる。金持ちと国際大企業に増税。保育園を無料にし、果物と野菜への消費税を撤廃し、医療費の自己負担をなくし、安い住宅を10万軒建設したい考え。環境問題については2030年までに温室効果ガスを55%削減する目標。原発建設には反対。党首のリリアンヌ・プル―メン氏はリンブルグの農家出身で、オランダ南部で特に人気がある。

SP:リリアン・マライ二セン氏率いる社会主義的な左翼政党。介護問題に積極的で、老人6万人の入居を可能にする地域の「Zorgbuurthuizen(ご近所介護ホーム」を建設する構想を打ち立てている。医療費の自己負担は撤廃。介護・医療セクターに140億ユーロ(1兆8200億円)を投入したい考え。コロナ禍で大儲けした大手スーパーマーケットの経営者などに増税する一方、最低賃金を14ユーロに引き上げたい。

ホントにざっくりで細かい点はお伝えしきれないうえ、「1議席でも獲得できれば…」という細かい政党がまだ29政党もある(ひえ~!)。「オランダ人が3人集まれば政党ができる」というのもうなずける状態だ。

政党選択の強い味方「Kieswijser」

そこで「何を選べばいいか分からない!」という人のために、オランダにはたくさんの比較・選択サイトが存在する。いちばん有名なのが「Kieswijser」で、例えば「新たな原発の建設は必要か?」「住宅ローンの税控除はどうあるべきか?」というような質問に選択肢で答えていくと、自分の意見に合った政党がランキングになって出てくる仕組みになっている。それぞれの質問には、自分がどれほど重視している問題か「0~100%」の間で比重を設定できるようになっているため、その比重に合わせた結果になる。

画像3

私も試しにやってみたところ、「教育」と「環境問題」の比重を大きくしたため、「GroenLinks」と「Partij voor de Dieren(動物党)」が上位にやってきた(結果は上のグラフ)。現実的なところ、もし自分に選挙権があるなら「D66」かなあ…なんて思っているのだが、まあ、選挙権がないのだから見物するしかない。

「北ホラントのご神託」はVVDに…

画像3

事前の世論調査では上のグラフ↑のような結果が出ている(Peilingwijzerより)。
コロナ禍ではマルク・ルッテ首相のリーダーシップが評価されているし、こういう危機の状態では人々はあまり変化を望まない傾向があるらしく、VVDがまた第一党を維持し、連立与党も同じ顔触れなのではないか…というのが大方の予想だが、政策的にはかなり「左傾化」が予想されている。

これまでの総選挙やサッカーのワールドカップなどで、第一党や優勝チームをピタリと当ててきたタコ…でなくて、牛の「スタイチェ」は、「VVD」を選択した。

さて、明日の選挙結果いかに……?

画像2


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?