気分転換はデザイン展で。「OBJECT Rotterdam」で触れる新しい発想
なんとなくうまくいかないことが続いていた日々、デザイナーの友人からデザイン展のお知らせをいただいた。「迷ったら、行く」を今年のモットーにしている私は早速、電車とバスを乗り継いで、ロッテルダムの港近くのちょっとワイルドな地区で開かれている「OBJECT ROTTERDAM 2024」を見に行った。
平日の昼間だというのに、会場は結構な人でにぎわっていた。今週末、ロッテルダムでは別の会場で美術展の「Art Rotterdam」や写真展の「Rotterdam Photo」も開催されているので、アートに敏感な人たちがギュッと集まってきている印象だ。
会場ではまず、友人デザイナーの簑島さとみさんの展示を見に行った。彼女は革の椅子や、サイドテーブル、壁に飾れるオブジェを展示・販売している。実はこの椅子、空気で膨らませられるのがミソ。リビングルームに十分なスペースがない人は、必要なときだけ膨らませて使って、必要ないときにはしぼませてしまっておける。ナイス!!丸いフォルムや色もかわいい。
そのお隣で展示していたのは、簑島さとみさんの後輩、遠藤駿仁さん。80年代によく建築で使われていたというガラスのブロックを使って光を反射させるルームランプを展示・販売していた。光源は1つでも、ガラスに反射させることで光が柔らかくなり、微妙な動きが生まれる。ちょっと「ZEN(禅)」を思わせるシンプルなデザインもオランダ人にウケるのではないだろうか。
このデザイン展はいろんなデザイン学校の卒業生がデビューする登竜門的存在でもあるらしく、ベテランデザイナーに混ざって、新人デザイナーも作品を展示している。Yufei Gaoさんもその1人。彼女の作品は、デザインアカデミー・アイントホーフェンの卒業展覧会でも注目されていた。
彼女の作品は、毎日の気温や湿度、風などのデータをコンピュータに取り込み、アルゴリズムで鉢をつくるというもの。毎日変わるお天気の中で、唯一無二の鉢ができあがる。イベントなどの来場者にその日の記念として販売するのも面白そうだし、誕生日や結婚記念日といった特別な日の贈り物にもなりそう。Gaoさんはこういうテクニカルなことにも結構強いらしい。AIを使ったデザインは、いろんなところですでに始まっている。
アイントホーフェンだけでなく、ほかのデザイン学校も頑張っている。デン・ハーグの王立美術学院を卒業したJeroen van den Bogaert(ヨルン・ファンデンボガート)さんは、大きなタペストリーをいくつか展示していた。ぱっと見、クラシカルなタペストリーなのだが、よく見ると、バイカーやらミリタリーの人やら、現代のワイルドなモチーフが。
ヨルンさんのように、伝統や歴史が新しいものと融合するアートは、ほかにも見られました。こちらはモダンバージョンのデルフト焼。Chris de Rijk(クリス・デライク)さんの作品。
新しい陶器の作り方を開発したデザイナーもいる。Gijs Wouters(ハイス・ワウターズ)さんとRuben Hoogvliet(ルーベン・ホーフフリート)さんは、粘度で形を作ってから窯で焼くというこれまでの製法を覆し、まずスポンジで形を作ってから、それを粘度の液体につけてスポンジに吸収させ、それを乾かして窯で焼くという画期的な製法で、ユニークなローソク立てや皿などを作った。窯で焼くときにスポンジは焼失し、粘度部分だけが残る。この作り方だと、繊細で独特な形の陶器が作れるのだ。彼らは2人で「Atelier FIG.」というスタジオを展開している。
ほかにもカラフルで楽しいインテリアや小物がた~くさん展示されていた。
久々のロッテルダムの街も新鮮で、迷ってもやっぱり行ってよかった。なにかに行き詰ったら、デザインやアートに触れてみよう。問題はなにも解決しなかったけれど、明らかに心に新鮮な風が吹き込んだ午後だった。
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