保険モニタリングレポート3期分からみる、今後の保険募集のあり方について
先月末に金融庁から公表されました、毎年お馴染みの保険モニタリングレポート。皆様もすでにお目通しになったと思います。
私が大好きなこのレポート、保険業について毎年思考の整理ができるということで大変良い資料です。現状と将来に向けてやるべきことの定点観測、という感じでしょうか。
その中で保険業の社会的意義とは
国民生活の安定や国民経済の健全な発展に不可欠な保障(補償)機能を適切かつ安定的に提供
顧客の資金を預かる機関投資家として活力ある資本市場を実現し、ひいては安定的な資産形成に貢献
いわゆる保障と補償こそ使命と記述されています。
市場環境
・少子高齢化
・自然災害の頻発・激甚化
・自動車保険市場の縮小等の中長期 的な事業環境の変化
・デジタル化を活用した効率的な業務運営
・顧客ニーズの変化に則した商品開発などを通じて、持続可能なビジネスモ
デルの構築
となっており、それらに対応していくように、とある意味事業計画をこの通りにやっていくことが保険会社及び代理店、募集人に求められている最低限のことと言えます。
今年は目立った変更点のところに保険会社の諸問題
営業職員・代理店管理態勢の高度化
公的保険制度を踏まえた保険募集、外貨建保険の募集管理
があります。
1つ目の営業職員・代理店管理体制の高度化については、昨今続きている営業職員チャネル及び代理店における金融犯罪などの増加が理由としてあげられます。
ご存知の通り、保険募集人の多くはフルコミッションであったり、そうでなくとも顧客とのコミュニケーションを通じて、多くの情報を知ることになります。この中で、犯罪に手を染める人が多少なりとも出てしまい、業界全体として営業体制のあり方を考え直さざるを得ない状況になってきているのが今です。
各社とも、募集人の管理体制強化、高度化をプレスリリースなどで出しております。
また、改正保険業法により制度化された情報提供義務と意向把握義務により、公的の補完的関係にある民間保険においては、公的保険の説明をキチン足した上の証跡をしっかりと残すこと。
また外貨建て保険についても誤解や為替などの変動によるボラティリティを含めた価格、価値変動の事実を丁寧に顧客に伝え理解した上で契約を締結することなどの管理を徹底するように書かれています。(来年は変額保険が記述されると思いますが…)
他、本文で気になっているところについては以下の通りです。
年換算保険料は生命保険で27.9兆、損害保険で9.0兆円。意外と減ったなという印象
2008年〜2014年まであった利差損は21,22年に大幅にプラスに転じた!金利が上昇局面の今は各社業績が良くなるか?ほぼ逆ざやが解消されたが、それは予定利率の歴史的な低下と直近の金利および有価証券、外債などのプラス分をとっているだけとも言える。が、概ね喜ばしい。
死差益が微妙に低下。コロナの影響?か各社の死亡保険商品の競争によるもの+第3分野への販売の傾倒もあるか…
損保各社も保険引き受け利益が回復傾向にあり。しかしコロナでお出かけが減り、結果として事故率などが低くなったのでプラスに転じた反面病気のなどによる支払いは増加、今後も異常気象や南海トラフなども含めて大規模な支払いが将来予測されていく中で、経営はあまり余裕があるとは言えない(利益は6000億/年程度)。生保で4兆円と予測されています。損保は地震保険の加入率はジリジリ上がっているものの、なかなかデータはありませんが、東日本大震災が1.2兆円とのことだったので生保と同様の計算式で考えると生保と同様の25倍で計算すれば30兆ほど。再保険を噛ませているとはいえ、いかに大きなリスクが顕在化しそうか…ブルブル
生保代理店のシェアはすごく伸びているのに比べて、インターネットの加入率はそこまで増えていないといういつものデータ。今後増える?のか?それともデジタル代理店が増えていくのか?
デジタルの導入について、みんな頑張っている?けど実態は…もう一歩進んだ導入、運用が求められていそう。
大手生保の募集人新規採用は4万人割れ。報酬をあげたり色々と頑張って入るものの、大量採用のモデル自体は緩やかに終わりを迎えつつあるのだなと改めて。2050年まで人力でやろうとするビジネスモデルはどういったものになるのか、そのシュミレーションは非常にみてみたい。
各社過去の保有契約の管理のために非常に多くのコストを支払っている点
火災保険の収支悪化と自動車保険の引き受け利益の向上
家計火災保険と企業火災保険の参考準率の改定率の上昇
旅行保険特化の損保の収益の激減
と、まだまだありそうなのでここくらいまでで。色々と動きができそうですね。