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Vol.1 DIYはいつ誰に流行ったのか?社会基本調査データから読み解く。
自己紹介
こんにちは。つみき設計施工社の河野直です。普段はつみき設計施工社で参加型リノベーションやDIYワークショップをやったり、最近は東京大学研究員としてレクチャーや研究の仕事をしています。詳しい自己紹介はこちらをご覧ください。
なぜ調べようと思ったか
DIYはホントに流行った?と疑問を持ち始めたことが、この調査を始めたきっかけです。DIYワークショップのことについて講演などでお話することがあります。その中で「つみき設計施工社を始めた2010年ころはDIYが浸透しておらず顧客を見つけるのが大変だった。でもここ数年はDIYブームもあり私たちの活動も理解されやすくなった」と繰り返しお話してきました。しかしある時ふと、これは本当だろうか、と疑問を感じる様になりました。
「身の回りにDIY実践者が増えてきたし、メディアでもDIYという言葉をよく耳にするようになった」と肌感覚では感じます。しかし実際に「DIYが、いつ、誰に、どのくらい流行したのか」については分かりません。分からないなら調べてみようと思ったことが、この調査のきっかけです。
記事の構成
調べたり、データをこねくりまわしたところ、とても長文になることが分かったので、5つの記事にわけて書きます。各記事の最初に目次をつけたので、気になるデータだけでもご覧いただければと思います。
Vol.1 DIYはいつ誰に流行ったのか?社会生活基本調査データから読み解く。
自己紹介 / 記事の構成 / なぜ調べようと思ったか / 根拠にしたデータについて / そもそもDIYブームはあったのか /40年で二度あった DIYブーム
Vol.2 第一期DIYブーム(1996→2001)を深掘りする
誰に流行ったのか? / 行動者率の変化を詳しくみる / 社会背景を考察する(経済・メディア・住宅産業) / 第一DIYブーム、その後(2001→2006)
Vol.3 第二期DIYブーム(2011→2016)を深掘りする
誰に流行ったのか? /【女性】行動者率の変化を詳しくみる / 社会背景を考察する(震災・メディア・住宅産業) / 第二ブーム、その後(2016→2021)
Vol.4 DIYは男性の趣味?DIYのジェンダーギャップを考察する
DIYジェンダーギャップ指数 / ジェンダーギャップの35年間の推移 / DIYにおけるジェンダーギャップはどこからくる?
Vol.5 DIY関連のその他のデータについて
レジャー白書 / ホームセンター売り上げ・店舗数 / DIYに関する論文数調査 / 世界のDIY市場
根拠にしたデータについて
今回の分析には、総務省統計局による社会生活基本調査結果から、調査事項「趣味・娯楽」における日曜大工の①行動者数と②行動者率を用いました。
①行動者数とは、過去1年間に当該活動を行った人の数
②行動者率とは、過去1年間に当該活動を行った人の数が人口に占める割合
です。該当する調査は1986年から5年ごと行われ、2021年までの35年の変遷を見ることができました。出典は各ページの最後に記します。
本記事では、「日曜大工の行動者率」という言葉が頻出します。「日曜大工の行動者率」とは、過去1年間に日曜大工を行うと答えた人の数が人口に占める割合と理解してください。
DIYと日曜大工
本題に入る前に、言葉の整理をします。DIYと日曜大工の意味についてです。goo辞書によると二つの言葉の定義は以下の通りです。
【DIY】《do-it-yourself》しろうとが自分で何かを作ったり、修繕したりすること。日曜大工。ドゥイットユアセルフ。
【日曜大工】日曜などの休日に趣味でする簡単な大工仕事。
辞書の定義による【DIY】の意味に【日曜大工】を含むことからも、二つの言葉の意味はとても近いものと考えられます。一方、【日曜大工】という言葉は、【DIY】よりも大工仕事の意味合いが強い印象です。
たとえば簡単な塗装作業とか左官作業だけの作業を、【日曜大工】と呼ばない人の方がどちらかと多い気がします。しかし人によっては、これらも含めて【日曜大工】と呼び人もいると思います。
個人的には、「どちらも素人が何かを制作したり修繕することだが、DIYの方がやや広い作業種目を含む。日曜大工は、大工仕事 だけに限定するわけではないが、大工仕事を一部だけでも含む制作や修繕のことを指す場合が多い」といった印象を持っています。話し手・聞き手によって微妙なニュアンスの違いはありそうです。
昨今は【日曜大工】の代わりに【DIY】という言葉がより一般的に使われます。一方、社会生活基本調査では調査の一貫性という視点からか、【日曜大工】という言葉が1986年から最新の2021年まで継続して用いられています。
本記事では、社会生活基本調査の【日曜大工】の行動者率の統計データを用いて分析と考察を行います。得られる知見は、【日曜大工】に取って代わり現在一般的に用いられている【DIY】という言葉をメインに使って解説します。したがって、本記事における【DIY】という表現は、大工仕事を含むDIYの意味合いがやや強いものと解釈いただくのが妥当と考えます。
そもそもDIYブームはあったのか
前段が長くなりましたが、本題に入ります。
そもそもDIYブームはあったのか?という視点で下のグラフを眺めながら考察を始めます。グラフは、日曜大工の行動者率の変化を男女別に示したものです。横軸が年代、縦軸が行動者率で、上にいくほど行動者率が高くなります。
![](https://assets.st-note.com/img/1666680155575-GTS1B8PjNW.png?width=1200)
青い折れ線(男性)と赤い折れ線(女性)の動きに注目してください。1986年調査開始時から現在に近づくほど、男性の行動者率は段々と低下し、女性の行動者率は緩やかに上昇する傾向にあることが分かります。DIYをする男性が減り、DIYをする女性が徐々に増えている - 35年間のおおまかな変化を、このグラフから読み取ることができます。
次に、DIYブームはあったのか?の問いに答えるべく、「行動者率が上昇するタイミング」に注目して二つの折れ線をより詳しく見ます。男女共に行動者率の明らかな上昇がみられるのは、35年間の中で2回あることが分かります。【1996年→2001年】と【2011年→2016年】、2つの時期で行動者率が男性・女性ともに上昇しています。
男女ともに行動率の上昇があった【1996年→2001年】と【2011年→2016年】の変化をより詳しく理解するために、次の二つのグラフを眺めます。左下が男性・世代別の日曜大工行動者率の変化、右下が女性・年代別の日曜大工行動者率の変化を示しています。
![](https://assets.st-note.com/img/1666681934917-Bl3gWX3F4T.png?width=1200)
2つのブーム
黄色の背景の部分が、男女共に行動者率の上昇がみられた【1996年→2001年】と【2011年→2016年】です。これら2つの時期において、男女の10代から70代以上までのあらゆる世代で行動者率が上昇していることが分かります。全世代を伴う同様の変化はこれら二時期以外には見られません。
これらのことから、男女すべての世代で日曜大工の行動上昇率が上昇した二つの時期を、
【1996年→2001年】第一期DIYブーム
【2011年→2016年】第二期DIYブーム
と呼称し、これらの二時期を軸にしながら、日本におけるDIYの変遷を様々な視点から考察していきたいと思います。【1996年→2001年】第一期DIYブームとバブル崩壊、【2011年→2016年】第二期DIYブームと東日本大震災など、二つのブームとその背景にある社会背景も以降の記事で考察します。
![](https://assets.st-note.com/img/1666686727718-17VA89uDSj.png?width=1200)
本記事Vol.1は以上です。
DIYを行う男性が段々と減り、DIYを行う女性が緩やかに増加した直近35年の変遷の中で、【1996年→2001年】第一期DIYブームと【2011年→2016年】第二期DIYブームの2つの時期においては、男女すべての世代で行動率が上昇したことが分かりました。次記事では、【1996年→2001年】第一期DIYブームとその社会背景について考察していきます。
(Vol.1おわり)
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<出典>
※本リサーチには以下のデータを加工・編集して利用
・総務省統計局「令和3年社会生活基本調査結果」, https://www.stat.go.jp/data/shakai/2021/kekka.html
・総務省統計局「平成28年社会生活基本調査結果」, https://www.stat.go.jp/data/shakai/2016/kekka.html
・総務省統計局「平成23年社会生活基本調査結果」, https://www.stat.go.jp/data/shakai/2011/h23kekka.htmll
・総務省統計局「平成18年社会生活基本調査結果」, https://www.stat.go.jp/data/shakai/2006/h18kekka.html#a01
・総務省統計局「平成13年社会生活基本調査結果」, https://www.stat.go.jp/data/shakai/2001/h13kekka.html
・総務省統計局「平成8年社会生活基本調査結果」, <https://www.stat.go.jp/
上記データをもとに、合同会社つみき設計施工社(担当:河野・小坂)が図表の作成および分析を行いました。