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今後の日本の女性医師比率について考えてみた
医師の働き過ぎ問題が最近ようやく話題になるようになって、2024年には初めて勤務医の時間外労働の年間上限が設けられるそうです。とはいえ、一部の医師には過労死ラインの2倍まで認めているとか。冗談かな?と思うような話ですが、まずはそのぐらいにして段階的に変えないと医療が回らなくなってしまうのだ、という話です。
だけど現場で働いていると、もっと多様性を認めればみんなで楽に回す方法があるんじゃないのかな? と思うことがあります。今、医師の世界でリーダー層にいるのはほとんどが男性の年配者ばかりです。いわば、高度成長期の常識を踏襲した男性社会で成功してきた人たちばかり。多様性はほとんどない。別にその人たちに悪意がなくても、考え方が画一的になってしまうのは仕方ないでしょう。
今後、女性医師比率が上がるのは避けられないので、そろそろいろんな立場の人がいろんな都合を抱えて働くのだということを理解した方が良いと思うんだけどな。また、女性医師が増えれば、職場での発言力も高まって雰囲気が変わる可能性があるだろうな。と常々思っているので、現状と近未来の日本の女性医師比率がどうなりそうなのか計算してみました。
念のためにお断りしておきますが、私はこういう問題の専門家でもないし、計算が合っている保証は全くありませんので、あらかじめご了承ください。
日本の女性医師比率の現状
女性医師比率は、各国の中でも日本はかなり低めです。現在、医師国家試験合格者の中の女性の割合は、31〜33%ぐらい、若い世代は3割ぐらい女性ですが、全年代で見ると、2019年の日本の女性医師比率は22%。OECD諸国の中で最下位でだそうです。
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女性医師比率はこの20年間頭打ちだった
今から30年以上前には医学部の女子学生の割合は1〜2割ぐらいでした。昭和の終わり頃から女子学生の割合は増えて、医師国家試験合格者の中の女性比率もどんどん上がりました。ところが、30%に達したあたりで突然頭打ちになりました。そして、その後ずっと30%台の前半のまま、増えも減りもしない状態が20年間続きました。
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入学者と国家試験合格者の女性比率は、6年遅れでほぼ一致しているので、これは医学部に入学する女子学生が増えていなかったことを表しているとも言えます。
上のグラフは、平成24年までで終わっていますが、2021年、2022年の国家試験合格者の中の女性比率はそれぞれ33.6%と33.7%なので、その後もあまり変わっていなかったことがわかります。
2019年以降女子医学生の割合が急増
では、医学部を受験する学生の女子比率はどのぐらいだったんだろう? と言う疑問が湧いてきました。長年、医学部では女子学生の合格率が男子学生に比べて明らかに低いことが知られていました。しかし、2018年に一部の医科大学で女子学生を一律減点していたことが報道されてから、女子の合格率は上がり始め、2021年にはとうとう男子を逆転したと報じられています。
とはいえ、男性13.51%に対して女性13.60%ですから、追い抜いたと言うより同じになったと言った方が良いかもしれません。
それでは、受験者、合格者の中の女子割合は一体どうなっているのでしょうか? 調べてみたところデータがありました。
平成25年から平成30年のデータ
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/09/10/1409128_002_1.pdf
これらのデータを元に、平成25年から令和3年までの医学部受験者と合格者の女性割合をグラフにしてみました。
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グラフを見ると、合格者に占める女子比率は2018年(平成30年)まで33%前後が続いていましたが、スキャンダルの翌年である2019年(平成31年)にはいきなり37%台に上昇、そして、令和3年にはさらに41%台に上昇しています。それと同時に、医学部受験者の中の女子割合も徐々に上がっています。そして、2022年(令和3年)には合格者の中の女子割合が、受験者の中の女子割合に追いついています。
これまでは高校や予備校などで「医学部は女子は入りにくいかからやめたおいた方が良い」「浪人しなくちゃならなくなるぞ」と言われて医学部を諦めていた女子高生たちが、「今後は公平に評価してもらえる」「女子だから入りにくいということはなくなる」と思って、積極的に医学部を受験するようになったのかもしれません。
今後の予想
合格者の中の女性比率は、2018年に34.3%だったものが2022年には41.1%になっています。3年で7%近くも増えているので、今後も年1〜2%ずつぐらいは増えていくかもしれません。このペースで増え続けていけば、あと10年も経てば新卒医師の約50%が女性という日が来るのではないかと予想できます。
さて、下のグラフは、平成24年の年代別の医師数と女性医師割合です。
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平成24年に全年代を合わせた女性医師割合は19.7%でした。
今後若い世代の女性医師が増えると全年代の女性医師比率はどうなるのか、この人数分布を参照して簡単に計算してみます。
医師国家試験合格者は毎年9000人程度です。上記のグラフも参照して、各年代の医師数を20代は約30,000人、30代から50代はそれぞれ70,000人、60代は40,000人、70代は30,000人として、この先も同じ人数分布が継続すると仮定します。
10年後に20代の女性医師割合が50%に到達したとすると、全年代の女性医師割合は24.5%になります。そのまま、医師国家試験合格者の50%が女性になった状態が維持されるとすると、20年後には全年代の女性医師割合は34.8%に、30年後には41.3%になるという計算になります(下表参照)。
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仮に、医師国家試験合格者の女性割合が10年後に50%に達し、その後も年1%ずつ増えると仮定すると、20年後には新卒医師の女性割合は60%、全年代の女性医師割合は35.8%に、30年後はそれぞれ70%と45.5%に到達する計算になります(下表参照)。
ただ、それでもまだOECD諸国の現在の平均値(現在49%)には到達しません。
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繰り返しますが、大雑把な計算であり、正しいという保証はありません
でも、逆に考えると、どうしたら他国でこんなに女性医師割合が高くなっているのか、そこも知りたい気がしてきます。
20年後には景色が変わるだろうけど
全体の人数の3割を超えるとマイノリティではなくなってくるという話を聞くことがあります。とすると、現在の全体で2割強という女性医師割合では、全体の運営に女性医師の意見が反映されにくく、働きにくいのは当たり前なのかもしれません。
ただ、近年の入学試験の変化により、これから急激に女性医師の比率が上がっていけば、20年後にはかなり違った景色になってくることが予想できます。でも、20年後というのは、今の小学生たちが医師になる頃です。ちょっと時間がかかりすぎです。もう少し早い変化が欲しいなあ、というのが本音です。